医療事件における最高裁判決の重さ
類似する事案であれば,下級審判決も参考になりますが,最高裁判決と下級審判決では,その重みが全く違います.
日本では,上級審の判決はその事件について差し戻した下級審裁判所を法的に拘束しますが,それ以外に法としての拘束力はありません.裁判官は,別の事件の最高裁判決に法的に拘束されません.最高裁判決の拘束力は,あくまでも事実上のものとされています.
最高裁判決がすべてが公式判例集に収載されるわけではありません.
公式判例集である「最高裁判所判例集 民事編」(「民集」と略されています)に収載された判決こそ,参考にすべき最高裁判決です.
これに対し,「最高裁判所裁判集 民事」(「集民」と略されています)収載の判決は,重要度が落ちるとみられています.
判決には,レイシオデシデンダイ(結論を導く直接的な理由)と傍論とがあります.
判決は,いろいろな理由からどうしても傍論が多くなりますが,真の判例はレイシオデシデンダイであるとされています.
最高裁判決は,それが根拠とした医学知見が現在では古くなっているものもありますし,例えばかつて華々しく議論された医療水準論が判決に書かれることは少なくなりましたが,それでも最高裁判決の基本的な考え方は,レイシオデシデンダイはもちろん,傍論であっても,医事裁判実務の大枠を画するものとして重要な意義があります.
上告理由が絞られてからは,最高裁判決が出されることは減りましたが,昨今の医療と医療裁判の実情に鑑みると,最高裁の役割は終わっていないと思います.
谷直樹
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