弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

宇都宮地裁平成29年3月24日判決,インスリン投与中止を指示した自称龍神の殺意を認定

b0206085_4122052.jpg下野新聞「糖尿病男児衰弱死、被告に懲役14年6月 宇都宮地裁判決」(2017年3月25日)は,次のとおり報じました.
 
「2015年4月、1型糖尿病だった宇都宮市東原町、小学2年今井駿(いまいしゅん)君=当時(7)=の両親に命じてインスリン投与をさせずに駿君を衰弱死させたとして、殺人罪に問われた下野市小金井1丁目、自称「龍神(りゅうじん)」の建設業A被告(62)の裁判員裁判判決公判が24日、宇都宮地裁で開かれた。佐藤基(さとうもとい)裁判長は「(駿君が)死亡する危険性を知りながら、投与しないよう指示した」として殺人の関与と殺意を認定し、懲役14年6月(求刑懲役15年)を言い渡した。

 A被告による投与中止の指示が殺人の実行行為に当たるかどうか、殺意の有無などが争われていた。

 佐藤裁判長は、被告が駿君の母親に対して「インスリンは毒だ」などとメールを送っていたと指摘。「被告の指示により、死亡の危険性がある投与中止が実行された」と、殺人の実行行為を認定した。

 殺意について、2014年末に両親と契約した当初から、投与がなければ駿君が死亡する危険性を認識していたことを判示。駿君の容体悪化を知りながら放置し死亡を認容したとして、「未必の故意」を認めた。

 被告は、証言台のいすに浅く腰掛けて判決を聞いた。納得いかないような態度で首をかしげたり、ため息をつくなどして不満をあらわにした。判決後、控訴の具体的方法について、自ら裁判長に尋ねた。」


時事通信「自称祈祷師に懲役14年6月=薬不投与で糖尿病男児死亡-宇都宮地裁」(2017年3月24日)は,次のとおり報じました.

「2015年4月、宇都宮市の糖尿病の男児=当時(7)=の治療に不可欠なインスリンの投与中断を両親に指示し、死亡させたとして、殺人罪に問われた自称祈祷(きとう)師の建設業A被告(62)の裁判員裁判の判決が24日、宇都宮地裁であった。佐藤基裁判長は「被告は主導的立場にあり、犯行態様は残酷」などとして、懲役14年6月(求刑懲役15年)を言い渡した。
 佐藤裁判長は「被告には男児を殺害する積極的意図は認められない」としつつも、男児の母親らへ送ったメールの内容などから「治療契約当時から、インスリンを投与しなければ死亡する危険性を認識していた」と未必の故意を認定。「殺意はなかった」とする被告側の無罪主張を退けた。
 その上で「犯行動機は自身の権威を守り金銭を得るためで、理解しがたい身勝手さ。非難の程度は高い」と指摘した。」


NHK「糖尿病男児死亡 男に懲役14年6か月の判決」(2017年3月24日)は,次のとおり報じました.

「検察は懲役15年を求刑し、弁護側は「インスリンを打たない選択をしたのは両親だ」として無罪を主張していました。

24日の判決で、宇都宮地方裁判所の佐藤基裁判長は「被告は男の子が死ぬ危険性があると認識しながら『インスリンは毒だ』として両親に投与をやめさせた」と指摘しました。

そのうえで、「両親の前で男の子を衰弱させ、死亡させた犯行は残酷で、難病を治療できるとする自分の権威を守ろうとした身勝手なものだ」と述べ、懲役14年6か月の判決を言い渡しました。」

これは私が担当した事件ではありません.
被告は,自分は祈祷師でも龍神でもないと主張し,弁護側は「インスリンを打たない選択をしたのは両親だ」として無罪を主張していましたが,そのような主張は認められませんでした.
祈祷師,権威を装った偽医師などが医療行為について発言した場合,医師ではないから責任を負わないとは言えません.これらの者の発言は,単なる助言以上の影響力を及ぼす場合があり,未必の故意が認められる場合があります.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-27 04:12 | 医療事故・医療裁判