弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

無痛分娩事故の被害者が語る奪われた夢(報道)

毎日新聞「無痛分娩 奪われた夢 麻酔直後に医師不在…妻急変 長男も重体、夫『安全管理見極めて』」(2017年7月31日)は,次のとおり報じました.

「神戸市の産婦人科医院(診療所)で痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)で出産した際に障害を負い、意識不明のまま今年5月に35歳で亡くなった女性の夫の男性(32)=東京都=が毎日新聞の取材に応じた。「あの日を境に全てが変わってしまった。完全な人災だ」と語り、再発防止のため医院側の意識改革と質の向上を訴えた。【藤田愛夏】

 男性によると、女性は2015年9月、神戸市西区の産婦人科医院で院長から硬膜外麻酔を受けた直後、容体が急変。搬送先の別の病院で帝王切開で生まれた長男(1)とともに脳に大きなダメージを受け、約1年8カ月後に亡くなった。長男は生まれてから意識不明のままで「いつどうなるかわからない状態」という。男性側の代理人弁護士によると、医院側はミスを認め、示談に応じた。

 同医院を選んだのは女性の実家から徒歩で通える場所にあったからだった。小柄な体形で難産が予想されたため、院長から無痛分娩を勧められたという。当初女性は不安を口にしていたが、夫婦で話し合い、「病院でやることだから大丈夫だよね」と決断した。

 分娩当日、院長は麻酔をしてから外来診察でその場を離れた。その間に女性の体調は悪化し、意識を失った。男性が最後に聞いたのは消えそうな「息ができない」という言葉だった。異変は麻酔をした直後からあった。女性は分娩室に移動する際、床に足を着けても、自力で立ち上がれなかった。搬送先の病院の麻酔医から「麻酔後、急変に備えて経過観察をするのは当然だ」と聞き、あぜんとした。

 男性は会社を半年間休み、その後も東京で仕事をしながら毎週末、神戸市内の入院先に通って看病を続けたが、女性は今年5月、息を引き取った。女性は出産前、胎児の様子を映した動画を楽しそうに見せ、「家族みんなで旅行に行きたいね」と誕生を心待ちにしていた。別々の病院に入院した母と子が対面できたのは数回だった。長男は今も兵庫県内で入院している。

 街で幼い子供連れの家族を見ると、胸が苦しくなる。「医療機関は命を預ける場所。見た目のきれいさなどではなく、医師の技術や緊急時の対応など安全管理が万全なのか見極めるのが何よりも重要だ」と語った。

大阪など重大事案6件

 無痛分娩をめぐっては今年4月以降、大阪、京都、兵庫の4医療機関で生命に関わる重大事案が計6件発覚した。日本産婦人科医会は6月、全国の約2400の医療機関に無痛分娩に関する初の調査を実施。約40万件の出産のうち無痛分娩は5.2%で、07年度から2.6ポイント増えた。病院(ベッド数20床以上)よりも規模の小さい診療所での実施が約6割を占めた。

 陣痛促進剤の医療事故で長女を失った「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人の勝村久司さんは、機能が集約化され、麻酔科医や新生児科医のそろった病院での無痛分娩が普及する欧米との違いを指摘。「日本では技術や経験が乏しい産科医でも1人で無痛分娩を実施している。国が安全のための基準を定めるべきだ」と話している。」


遺族が語った神戸市西区のクリニックの件は,私が担当した事件です.
損害賠償については示談で解決していますが,事故の背景には現在の日本の産科医療体制そのものの問題があり,実効的な再発防止策が必要です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-01 16:33 | 医療事故・医療裁判