弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日本医療安全調査機構,医療事故の再発防止に向けた提言第2号「急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析」

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急性肺血栓塞栓症の医療過誤事件は一定数ありますが,減らすことができるはずです.
一般社団法人日本医療安全調査機構は,2017年8月, 医療事故の再発防止に向けた提言第2号「急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析」を発表しました.
「ガイドラインの策定と「肺血栓塞栓症予防管理料」の保険収載という施策により、病院での肺血栓塞栓症に対する疾患の認識と予防への取り組みは、全国的に広がり、一定の予防効果は得られていると考えられる。しかしながら、いまだ医療事故調査・支援センターへの死亡事例の報告は続いており、さらなる対策の徹底が求められると考える。」とのことです.

提言は以下のとおりです.

【リスクの把握と疾患の認識】
提言1 入院患者の急性肺血栓塞栓症の発症リスクを把握し、急性肺血栓塞栓症は “ 急激に発症し、生命を左右する疾患で、特異的な早期症状に乏しく早期診断が難しい疾患 ” であることを常に認識する。

【予防】
≪患者参加による予防≫
提言2 医療従事者と患者はリスクを共有する。患者が主体的に予防法を実施できるように、また急性肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症を疑う症状が出現したときには医療従事者へ伝えるように、指導する。

≪深部静脈血栓症の把握≫
提言3 急性肺血栓塞栓症の塞栓源の多くは下肢、骨盤内静脈の血栓である。
深部静脈血栓症の臨床症状が疑われた場合、下肢静脈エコーなどを実施し、血栓を確認する。

【早期発見・早期診断】
提言4 明らかな原因が不明の呼吸困難、胸痛、頻脈、頻呼吸、血圧低下などを認めた場合、急性肺血栓塞栓症の可能性を疑い、造影 CT などの実施を検討し早期診断につなげる。

【初期治療】
提言5 急性肺血栓塞栓症が強く疑われる状況、あるいは診断が確定した場合、直ちに抗凝固療法(ヘパリン単回静脈内投与)を検討する。

【院内体制の整備】
提言6 急性肺血栓塞栓症のリスク評価、予防、診断、治療に関して、医療安全の一環として院内で相談できる組織(担当チーム・担当者)を整備する。必要があれば院外への相談や転院などができるような連携体制を構築する。

学会・企業等へ期待(提案)したい事項は次のとおりです.

①症例登録による現状把握
急性肺血栓塞栓症の予防、診断、治療法を改善し医療事故の再発を減らすには、日本における急性肺血栓塞栓症の現在の発生状況、臨床的特徴、治療方法などを把握する必要がある。
CTや病理解剖で急性肺血栓塞栓症の診断が得られた症例の登録(レジストリ)が全国規模で実施されることを期待する。

②静脈血栓塞栓症予防のための、医療機器の改良
着脱しやすく不快感や皮膚障害が少ない弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法用の簡便・軽量な器具の開発を期待する。

③医師・看護師に対する急性肺血栓塞栓症についての教育
急性肺血栓塞栓症の予防、診断、治療においては、あらゆる診療科の医師、看護師などの医療関係者が重要な役割を果たしており、これらの医療従事者が基本的知識を得られるような研修の機会をつくることが望まれる。各学会に対し、急性肺血栓塞栓症の予防、診断、治療法に関する教育の機会を提供することを期待する。
さらに、肺血栓塞栓症の専門学会に対しては、各医療施設の専門担当者が他科などからの相談に対応できるよう、急性肺血栓塞栓症の予防から緊急時の診断、治療に関して、基本的知識を確認したり最新の知識を習得したりできる機会を提供することを期待する


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-05 13:42 | 医療事故・医療裁判