弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

最高裁(三小)平成28年7月19日判決,期待権侵害構成と相当程度の可能性論

大橋正春元最高裁判所裁判官が,10月20日,「最高裁判事から見た弁護活動のあり方」と題する講演を行いました.
その内容は,古賀克重先生がブログに詳細に書いています.


上告申立て(民訴法312条)と上告受理申立て(民訴法318条)の並行申立てはやめてほしいが,例外的に医療過誤訴訟では意味があることがあり,破棄した裁判例があった,とのことです.
それが,最高裁(三小)平成28年7月19日判決(判例秘書搭載)です.

高裁判決は,医師の注意義務違反と因果関係を認めなかったものの,「注意義務を尽くさなかったことにより適切な医療を受けるべき利益を侵害され、これにより精神的苦痛を受けていることが認められるから、上告人に同苦痛を慰謝すべき責任を負担させることが相当である」として1100万円の支払を命じました.
これは,適切な医療を受けるべき利益(いわゆる期待権)を侵害したという構成ですが,最高裁は,期待権侵害を認めたことは未だかつてありません.そこで,最高裁が採る,重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性を侵害されたという構成(相当程度の可能性論)での判断に正すために破棄した,とのことです.なお,相当程度の可能性も証明されていないと判示しています.

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-04 17:16 | 医療事故・医療裁判