弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

神奈川県立がんセンター,重粒子線治療をめぐり医師退職,放射線治療に影響

朝日新聞「「先進医療」拠点で医師対立か…専門医4人相次ぎ退職へ」(2017年12月15日)は,次のとおり報じました.
「大川病院長によると、今年の夏に放射線治療に携わる幹部医師が退職し、放射線治療科に所属する医師4人も、11月初旬までに相次いで退職の意向を伝えてきたという。いずれも「一身上の都合」というが、厚労省の定める「先進医療」の継続を巡っての見解の相違や、医師間の対立などが背景にあるとみられる。」
「県は2005年、同センターに施設設置方針を定め、総事業費約120億円をかけて15年12月に完成。同時に治療を開始したが、治療費が一部を除き全額自己負担で350万円と高額なことなどから患者数は伸び悩み、16年度は1年間で200件の治療件数目標に対して実績は149件にとどまっている。(岩堀滋)」


「先進医療」という言葉は,標準医療より優れた医療というイメージを与えますがそうではありません.先進医療は,有効性と安全性が確認されていない医療です.自由診療で行われます.保険を使用できませんので,患者は高額の自己負担を強いられます.

切除できない骨がんに対する重粒子線治療は,優位性を示すデータがあり,保険診療で行われます.それ以外は優位性を示すデータがなく,先進治療に残っていますが,実施に消極的な考えの医師も少なくありません.
120億円をかけて作ったから重粒子線治療を行う患者を増やそう,というのは本末転倒でしょう.

【追記】
日本経済新聞「神奈川県、がんセンターの専門医退職で調査委」(2017年12月19日)は,次のとおり報じました.

「神奈川県は19日、県立がんセンター(横浜市)で重粒子線治療に携わる専門医6人のうち4人が退職の意向を示している問題で、原因究明を目的とした調査委員会を設置した。県職員らによるワーキンググループが同センター職員ら関係者に聞き取りをしたうえで、12月中に事実関係をまとめる。
 委員会は県の保健福祉局長以下、関連部局の職員と弁護士で構成。19日初の会合を開いた。ワーキンググループの調査をもとに、病院経営で問題があったと認めた場合は是正に向けた必要な措置を取る。
 同センターでは重粒子線治療に関わる放射線治療科の6人の専門医のうち、2人が12月末、さらに2人が2018年1月末までに退職する意向を同センター側に伝えており、医師の確保が間に合わなければ医療体制の継続に支障が出る懸念がある。
 県は退職する医師の補充策については同センターと同センターを管轄する県立病院機構(同市)に委ねる。」


谷直樹

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by medical-law | 2017-12-16 04:44 | 医療