弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「死刑執行された冤罪・飯塚事件: 久間三千年さんの無罪を求める」(現代人文社)


目次は以下のとおりです.

はじめに

プロローグ 飯塚事件のあらまし

第1章 飯塚事件・再審請求審の特徴と求められる審理のあり方
 飯塚事件では、死刑が執行された後に再審を求めている。死刑判決の証拠構造の中核が、犯人のDNA、血液型に関する科警研鑑定と目撃証言だった。再審請求審では、この2つの情況証拠に証拠としての価値が全くないことを論証した。

第2章 DNA鑑定 4つの鑑定データを精査する
 確定審では、捜査段階で実施された科警研と石山教授による4つDNA鑑定の証明力が問題となった。再審請求審(原審)は、確定審が苦しまぎれに有罪の根拠としたDNA鑑定を証拠から排除した。しかし、この鑑定データからは明らかに真犯人のDNA型を読み取ることができる。

第3章 血液型鑑定 真犯人の血液型は何か
 警察は、被害者らの膣内などから採取された血痕の血液型がB型であるとする鑑定結果によって、それが久間さんの血液型と一致したことを根拠の1つに、犯人だと断定した。裁判所もそれを有罪認定の柱とした。しかし、その鑑定手法と判断は本当に正しいのか。

第4章 目撃証言その1 警察官に誘導された供述
 久間さんを犯人とする有罪認定の柱は、被害者の遺留品発見現場付近で目撃した車両の特徴が、久間さんのワゴン車と一致しているとの供述(T員面調書)である。しかし、この目撃証言が取られた経緯を見ていくと、信用性が全くないことが浮き彫りになる。

第5章 目撃証言その2 科学的に不可解なカーブの目撃
 車両の特徴についての目撃証言(T供述)には、他にも不可解な点が多い。山道の下り左カーブを運転中に目撃したとするが、果たして、そんなことができるのだろうか。厳島行雄教授(心理学)らが新たに行った視線実験の結果から、その不可能性を立証する。

第6章 繊維・染料鑑定 情状証拠としての価値はない
 犯行車両の特定にあたって、被害者の着衣に付着していた繊維片の鑑定で、その原糸、染料、配合比などから、マツダステーションワゴン・ウエストコーストの座席シートに使用されている繊維片である可能性が高いとされた。しかし、繊維・染料鑑定は、そのような判断の根拠となりえない。

飯塚事件の経過一覧
コラム/足利事件とは

●久間三千年さんの妻からのメッセージ
必ず無実の人間に手を差し伸べてくれる裁判官に出会えると、心から信じています


日弁連は,飯塚事件について以下のとおり述べています.

「えん罪の疑いが強いこと

→ 飯塚事件で用いられたDNA鑑定は、足利事件(DNA再鑑定により、2009年4月にえん罪が明らかとなった。)と同じMCT118鑑定であり、時期もほぼ同時期で、技法や技術も共通で、科警研のほぼ同様のメンバーで行われました。

しかし、飯塚事件のMCT118鑑定は、足利事件以上に不出来であり、(1)目盛りとなる123ラダーマーカーに重大な欠陥がある、(2)電気泳動像のバンドの幅が広すぎ、形が悪すぎて、型判定ができない、(3)現場で採取した試料と被告人から採取した試料を同時に電気泳動していない等、数々の問題点があります。

また、科警研は、たくさんあった鑑定試料を全て鑑定で消費してしまったと主張しており、再鑑定が不可能であるという重大な問題があります。

→ 遺留品発見現場の目撃証言は、目撃後に相当時間が経過しているのに、内容があまりにも詳細にすぎ、実際には見えないはずのことまで証言している等の問題点があります。

被害者の失踪現場付近での目撃証言も、事件発生から何か月も経過してから証言を始めた、科警研のDNA鑑定が出た後に証言を始めた、その内容もあまりにも詳細にすぎる等の問題点があります。」

飯塚事件弁護団の「死刑執行された冤罪・飯塚事件: 久間三千年さんの無罪を求める」
(現代人文社,1200円+税)が昨年出版されました.
徳田靖之弁護士のインタビューが弁護士ドットコムに掲載されています.

谷直樹

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by medical-law | 2018-01-13 13:47