弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

市民病院の医師が業務上過失致死容疑で刑事告訴される(報道)

山陽新聞「岡山市民病院の医師を刑事告訴 業務上過失致死容疑で患者遺族」(2020年12月29日)は,次のとおり報じました.


「岡山市立市民病院(同市北区北長瀬表町)で食道がんの手術を受けた倉敷市の60代男性が術後に死亡したのは、執刀した医師が術式を誤ったためとして、遺族がこの医師を業務上過失致死容疑で岡山西署に刑事告訴し、同署が28日に受理した。

 告訴状などによると、2017年3月、男性のがんを切除した上で胃管を用いて食道を再建する胸腔鏡(きょうくうきょう)手術を行った。2日後、合併症のため出血性ショックに陥っていた男性に緊急手術を実施した際、救命を最優先して可能な限り短時間での止血処置などを施す義務があったのに、別の臓器を用いた食道再建手術を9時間以上にわたって実施。容体の悪化を招き、多臓器不全で死亡させた疑いがあるとしている。

 遺族側は術後、岡山地裁に証拠保全を申し立て、カルテなどの関係資料を入手。それらを複数の専門医に照会して見解を求め、「緊急手術の際、食道再建手術を選択しなければ手術時間が短縮され、命を落とさなかった可能性は高い」などとする意見書を告訴状とともに提出した。

 この医師は現在も同病院の同じ診療科に在籍。遺族は昨年10月、同病院を運営する地方独立行政法人岡山市立総合医療センターと医師に総額約6180万円の損害賠償を求めて岡山地裁へ提訴し、病院側は請求の棄却を求めている。

 同病院は取材に対し「告訴の内容を確認できていないため、コメントしかねる」としている。

 ◇

告訴された医師 緊急再手術1週間に3件

 業務上過失致死容疑で刑事告訴された岡山市立市民病院の医師を巡っては、男性の手術の約3カ月前の2016年12月、がんの摘出手術後の患者に合併症が起こり、緊急の再手術を行ったケースが1週間に3件相次いでいた。本紙が今年2月、病院関係者らへの取材を基に報じた。

 3件の手術について、岡山県内の複数の専門医が第三者の立場で取材に応じ、「いずれも医療事故と言える。ここまで短期間に連続するのは異常だ」と指摘。今回の告訴状も3件の手術に触れ、「原因究明と再発防止に努めていれば、男性が死亡することは避けることができた」としている。

 一方、病院側はこれまでの取材に対し「3件とも医療的な過失はなく、原因究明や再発防止策の検討は必要ない」との認識を示している。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
刑事事件の起訴はハードルが高いのですが,短期間に連続する事案ですので(病院が過失なしとしていますが),検察の判断に注目したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2020-12-30 05:11 | 医療事故・医療裁判