弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2010年 11月 10日 ( 1 )

医療過誤法専門講座「カンファレンス鑑定の問題点と対策について」

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昨日,医療過誤法専門講座「カンファレンス鑑定の問題点と対策について-産科事故事件の控訴審逆転勝訴判決を素材にして-」を聴いてきました.

講師は,医師の大西忠博先生と弁護士の山嵜進先生です.

原告は,出血している患者に不十分な補液しか行わず,出血性ショックにより死亡した,と主張し,被告は,羊水塞栓症の可能性を主張し,カンファレンス鑑定が実施され事案です.1審では,羊水塞栓症の可能性が否定できない,ということで原告敗訴となり.控訴審で逆転した有名なケースです.

羊水塞栓症の可能性がないと断定することは,医学的にはおよそ不可能です.
出血量の測定は,産科医療では,或る程度おおまかです.
臨床医療の判断,臨床医療に求められるものとかけ離れた議論に入りこみ,羊水塞栓症の可能性を否定できないから原因立証ができていないとする1審判決は,明らかにおかしく,その誤った判決を支えているのがカンファレンス鑑定です.

カンファレンス鑑定は,東京地方裁判所だけが実施している,特殊な鑑定です.都内13大学から順番に3大学を選らび,各大学から推薦された3人の鑑定人が事前に簡単な書面をだし,当日は裁判官の質問に答えていく,その質疑を記録した調書が証拠となる,というものです.
意見の根拠,エビデンスが示されることはほとんどなく,場の雰囲気でなんとなく鑑定人3人が同じ方向の意見に収斂されていく傾向があるように思います.

大西忠博先生からは,カンファレンスはチェアマンが重要で,何のための議論か文脈を明確にしないで質問されると意味がずれてしまう,という趣旨の発言がありました.鑑定人が,医学的に厳密な可能性を問題にして答えていることへの危惧を述べたものと思います.

山嵜先生からは,カンファレンス鑑定対策としては,①カンファレンス鑑定前後に,主張書面をだしておくこと,②鑑定医の選定がきわめて重要であること.等が述べられました.

会場からは,反対尋問が事実上時間的に無理なので,考え方を変えて,有利なところをふくらませるような質問をした方がよい,という発言もありました.
カンファレンス鑑定自体に疑問を呈する意見もあり,なぜカンファレンス鑑定を止めようと言わないのか,という厳しい発言もありました.

旧弊な医師の世界で,医療過誤訴訟に対する過敏な拒否反応,相互の庇い合い,遠慮があるのは残念ながら厳然たる事実です.裁判所鑑定には,制度的に公正さを担保する仕組みが組み込まれていることが不可欠です.現行のカンファレンス鑑定は,鑑定の公正さを担保する仕組みを欠いているように思います.また,裁判所がそのような鑑定に依存して明らかに不合理な判決を書いてしまうのは,実に困ったことです.


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by medical-law | 2010-11-10 17:20 | 医療事故・医療裁判