弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2010年 11月 13日 ( 2 )

わたし,きれい?

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もう乾燥する季節なのに,何も対策をしていなかったせいで,口の端が切れてしまいました.
かさぶたになっても,笑ったり,食事をする度にまた切れてしまい,なかなか治りません.
そのうえ,風邪をひいてしまい,事務所内で風邪を流行らせてはいけないと思ってマスクをしているのですが,口の端が切れている+マスクという状況は「口裂け女」と同じだと気が付きました.

口裂け女の噂は,1979年の春に広まって夏に終息したそうですが,1990年代に入ると世間で医療ミスが取り上げられるようになり,美容整形に失敗した女性の話として広がっていました.
90年代に小学生だった私は,下校中に遭遇するかもしれないという恐怖心から,一人では下校できませんでした.
先生方は,当時マスクをしているだけで生徒に「口裂け女だ!」と指を差されてしまい,先生方もマスクをしづらい状況だったのかも・・・と今振り返ると申し訳なく思います。
今の子ども達も口裂け女の話を知っているのでしょうか.

なんにせよ早く風邪を治し,保湿もしっかりして「口裂けてない女」に戻りたいと思います.
季節柄,風邪が流行っておりますので,皆さまも体調管理にはお気を付けください.

事務局H
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by medical-law | 2010-11-13 14:10 | 日常

裁判例から医師の説明義務を考える(11)

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今回は,投薬についての自己決定,選択のための説明について述べます.

患者の自己決定,選択のために,医師は,①投与の目的・効果・必要性,②その薬を投与しない方法がある場合にはその方法,③発現する可能性のある副作用やショック症状の内容や頻度等を説明する義務があるとされています.

先端的治療については,とくに先端的治療であることを含め,具体的かつ詳細な説明が必要とされています.

■ 胃内視鏡検査前のセルシン投与-説明義務違反肯定例

胃内視鏡検査の前に,キシロカイン(塩酸リドカイン)やブスコパン(ブチルスコポラミン臭化物)などを投与することがあります.
胃内視鏡検査の前に鎮静剤のセルシン(ジアゼパム)を投与し,患者がアナフィラキシーショックを起こして死亡した事案があります.

判決は,投与の目的・効果・必要性や,発現する可能性のある副作用やショック症状の内容や頻度等を説明し同意を得ることを要し,セルシンについては,胃内視鏡検査において投与が必要不可欠とはいえないのであるから,投与の目的・効果・必要性だけではなく,これを投与しない検査方法があること,発現する可能性のある副作用やショック症状の内容や頻度等を説明して同意を得る必要があったとして,B医師の説明義務違反を認めました(福岡地裁小倉支判平成15年1月9日判決(判タ1166・198)).
 
■ 排卵誘発剤による卵巣過剰刺激症候群,脳梗塞-説明義務違反肯定例

排卵誘発剤の投与で患者が卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症し.脳梗塞となった事案があります.

「平成4年当時,OHSSから血液濃縮が起こることは広く一般に認識されており,血液濃縮だ亢進した場合には血栓症又は塞栓症を発症するという事実も一般化していた上OHSSの重症化により血液の濃縮が起こり,凝固亢進や血栓,塞栓形成のおそれがあることを指摘する論文も存在し,これらのうちには死亡例について触れるものや,脳血栓症,脳梗塞症の発症について報告するものもあった。
当時,我が国において,少なくとも,旭川医大(平成4年論文),秋田大(昭和56年翻訳,平成4年研究究報告),東北大(平成2年症例報告),杏林大学(平成3年症例報告),国立西埼玉中央病院(平成4年症例報告),東京女子医大(平成4年症例報告),自治医大(平成2,3年症例報告),岐阜大(平成2年論文)がそのような知見を有していたことになる。
(中略)
平成4年当時,B医師は,OHSSに血栓症又は塞栓症を合併した海外の報告2,3例を英語の文献を読んで知っていたほか,国内の事例1例を知っており,自治医大がOHSSについて凝固系の研究を行っていることも知っていた。」
「とりわけ,患者に重大かつ深刻な結果が生じる危険性が予想される場合、そのような危険性が実現される確率が低い場合であっても不妊治療を受けようとする患者にそのような危険性について説明する義務があるというべきである。そしてこのような説明義務は,患者の自己決定権の尊重のためのものであり,そのような危険性が具体的した場合に適切に対処することまで医師に求めるわけではないから,その危険性が実現される機序や具体的対処法。治療法が不明であってもよく,説明における医療水準に照らし,ある危険性が具体化した場合に生じる結果についてに知見を当該医療機関が有することを期待することが相当と認められれば,説明義務は否定されないというべきである。」として.裁判所は,その医師が,患者に不妊治療を説明する際に,血栓症又や塞栓症発症の可能性や,これを発症した場合の症状について一通りの説明をする必要があったとして,医師の説明義務違反を認めました(仙台高裁秋田支部平成15年8月27日判決(判タ1138・191)).

■ 分娩誘発剤オキシトシンの投与-説明義務違反肯定例

分娩誘発剤オキシトシンの投与により胎児が重症新生児仮死に陥り後遺症が残った事案があります.

裁判所は,医師は患者に対し,分娩誘発を決定するにあたり,分娩誘発の適応,要約,オキシトシンの副作用,誘発方法を具体的に説明すべき義務があったとしました.
そして,本件医師は間接的に分娩誘発を行うこと及びその実施方法を伝えたのみで,その適応,要約,副作用等については説明していないとして,説明義務違反を認めました(福岡高裁平成16年12月1日判決(判時1893・28)).

■ 先端的治療-説明義務違反肯定例

痙性斜頸に,先端的な治療法であるアドリアシン(塩酸ドキソルビシン)注入術が実施された事案があります.

アドリアシン注入術の作用機序,合理性,有効性,危険性,アドリアシン注入術の治療法としての成熟度など,アドリアシン注入術についての具体的かつ詳細な説明が行われなかったことから,裁判所は説明義務違反を認めました(大阪地裁平成20年2月13日判決(判タ1270・344)).

■ 抗がん剤マイトマイシンの投与-説明義務違反否定例

がん手術後に使用した抗がん剤マイトマイシン投与後,患者が肝機能障害を来たし死亡した事案があります.

裁判所は,①一般に医師は患者に対し医学的侵襲行為を行うに当たり,患者の承諾を得る前提として,症状やこれに対する治療法及びその必要性,危険性等について説明をする義務を負っていることを認めました.
ただ,②その説明の程度は,侵襲の危険性の程度により変化するものというべきである,としました.
そして,③本件医師は,患者に対し抗がん剤の投与により骨髄障害,消化器症状が生ずることがあると説明していたことを認定し,医師の説明義務違反を否定しました(静岡地裁平成10年12月24日判決(判タ1027・221)).

■ 新薬カバサール投与-説明義務違反否定例

裁判所は,新薬カバサールの投与を行うにあたり,医師は,投与の意義,下垂体腫瘍には保険適用がないこと及び副作用,投与後に手術を行うこと等について説明しているとして,説明義務違反を否定しました(東京地裁平成14年4月8日判決(判タ1148・250)).

■ 副作用が疑われる場合の継続投与-説明義務違反否定例

中毒性表皮壊死症の副作用がある皮疹治療薬について,副作用が疑われるのに,さらに継続投与した事案があります.

裁判所は,患者が不安を感じ服用を嫌がったことから,不安を解消するために説明をするのが相当であるとしつつも,具合が悪くなったら服用を中止するよう述べて注意していること,インダシン坐薬の投与によって悪化した可能性は極めて低く,ペクアクチンとトランサミンが症状悪化に関与していないこと等から,説明義務違反を否定しました(東京高裁平成14年9月11日判決(判時1811・97)).

「薬剤による中毒性表皮壊死症の発症頻度は人口100万人当り0.4人から1.2人と極めてまれ」ということから説明義務も否定したものと考えられますが,極めてまれでも重大な結果が発生するものについては説明して自己決定権を尊重すべきであり,この高裁判決には疑問が呈されています.


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by medical-law | 2010-11-13 12:04 | 説明義務