弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 01月 27日 ( 3 )

イレッサ,27日の菅直人首相

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今日27日夜,菅直人首相は記者団の質問に以下の通り答えたとasahi.comgが報じています.

「――肺がん治療薬「イレッサ」をめぐる訴訟で、きょう関係閣僚が会合を開いて、裁判所の和解勧告を受け入れない方向で調整しているということですが、一方で裁判とは別の救済策を考えているということですが、総理は具体的にどういう形で進めていくお考えですか。

 『本会議で、まだどういう話をされているのか、私のところにはまだきておりません』」

関係閣僚の考えが報じられていますが,菅直人には伝わっていないようです.

菅直人首相は施政方針演説で,故山本孝史議員の名前をだしました.
私も,山本孝史議員にお会いしたことが何度かありますが.本当に立派か政治家でした.
山本孝史議員だったら,裁判所の所見を受け,和解に応じた筈です.

和解に応じたからといって新薬承認が遅れるわけがないのに,問題をすり替え,厚労省のやってきたことは間違っていなかった,と言いたいだけのために,判決を求め,控訴して争う,などいう不条理は回避していただきたい,と思います.まずは,原告と会うべきです.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-27 20:36 | 医療事故・医療裁判

カルテ,書くべきか,書かざるべきか

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◆ 医師のカルテ記載義務

医師法24条1項は,「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と定めています.
保険医療機関及び保険医療養担当規則で,カルテに記載がない診療は保険請求できないことになっています.
厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」では,「医療従事者等は、適正な医療を提供するという利用目的の達成に必要な範囲内において、診療記録を正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。」とされています.
したがって,医師は,カルテを遅滞なく正確に書くべき義務があります.

◆ カルテに書くと不利?

ところが,医療裁判ではカルテの記載により医療側に不利な認定がされることがあるので,記載に留意するよう言われることもあります.
事実の記載に限り,医師の考え,判断は記載しないよう,指導する医療側の弁護士もいるようです.それは,疑ったのに検査を行っていない,診断したのに治療を行っていない,となると責任を問われかねないからでしょう.

私は,この指導は適切ではない,と思います.
圧倒的多数の医師は,疑ったら検査を行いますし,診断したら治療を行います.また,そのことを説明するのが常です.適切な医療行為が行われている限り,カルテ記載は,適切な医療行為が行われた証拠になりますから,医療者に有利です.

医療行為は,①症状・検査結果から或る疾患を疑う(判断)⇒②説明する⇒③検査を行う⇒④暫定診断(判断)する⇒⑤説明する⇒⑥治療する⇒⑦治療後の症状・検査結果に基づき治療の効果を判定する⇒⑧診断(判断)する⇒⑨説明する⇒⑩診断に基づき治療する⇒⑪治療後の症状・検査結果に基づき治療の効果を判定する,⑫説明する,という流れで行われます.

医師の判断をカルテに記載し,説明することで,患者家族との紛争が予防されます.医師の判断をカルテに記載してあると,患者家族が後日カルテ開示により入手したカルテを見たとき,きちんとした適切な診療が行われていたことを知ることができます.

万一,医師の判断が結果的に不適切だったとしても,その時点で判明した症状,検査結果に基づくものですから,その時点の判断として合理性があれば,注意義務違反にはなりません.

医師の判断がその時点の判断としても不適切だったとすれば,注意義務違反が認定されますが,実際に注意義務違反がある以上,これは当然のことです.そのような例外的な医療過誤を想定し,その立証を防ぐために,通常の診療経過における判断を記載しないのは.むしろマイナスです.

◆ カルテ記載の意義,効用

医師がカルテは記載することの意義,効用は,4点あります.
1) 言語化することで医師自身が,診療の問題点を意識し注意することができます.
2) 医師は,記載することで,医療情報を他の医療者,明日の自分へ伝えることができ,伝達ミスを防止します.
3) 患者家族への説明の際,カルテに基づき懇切丁寧な説明を行うことができます.そのことで,紛争が予防されます.
4) 付随的な効用ですが,医療裁判では,医師が業務上作成したカルテは信用性が高く,重要な証拠とされていますから,医療過誤のない場合の訴訟対策にもなります.(なお,医療ミスがある場合の訴訟対策は,ミスを認め謝罪することです.)

というような内容で,25日,病院に行き講演してきました.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-27 19:50 | 医療

イレッサ,2学会の見解についての疑問

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製薬会社アストラゼネカ,厚労省,国立がん研究センター,2学会(日本肺癌学会,日本臨床腫瘍学会)は,イレッサの裁判所所見を批判しています.これらは,ほぼ同じ論理です.とくに,2学会の論理を検討してみましょう.

◆ 承認前は重篤な間質性肺炎発生の可能性がわからなかったのか

「効果が期待できる遺伝子異常や重篤な間質性肺炎発生の可能性を承認前や承認後ごく早期に予見することはきわめて困難であったと思われます。」(日本肺癌学会)

遺伝子標的薬として売り出されたイレッサですが,承認前や承認後ごく早期にはどのような人に効果が期待できるかがわからなかった,という反論なのです.
重篤な間質性肺炎発生の可能性もわからなかった,という反論です.

なお,間質性肺炎がイレッサの使用による副作用であるとの科学的判断がなされたのは,2学会も認めています.
「審査の過程で十分議論し、その時点での情報に基づく批判的な評価を行い、間質性肺炎がイレッサの使用よる副作用であるとの科学的判断がなされたと考えられます。」(日本臨床腫瘍学会)

間質性肺炎発生の可能性はわかっていたが,重篤な間質性肺炎発生の可能性がわからなかった,という反論なのです.

裁判所は,個人輸入で使用した症例などから,わからなかったとはいえない,という所見を示しています.その症例を厚労省が把握していたのは事実ですから,正当に評価すれば,重篤な間質性肺炎発生の可能性はわかったはずです.その事実を無視した,或いは軽く評価したということが問題なのです,
この点については,2学会等から反論・批判はありません.2学会等は,抽象的に,医学の不確実性からわからなかった,というだけなのです.

◆ 承認時の添付文書の記載は適切か

「今回の勧告では、副作用の記載順序に言及されているようですが、記載順序にかかわらず医師や薬剤師は効果のみならず副作用について説明を患者さんに行い、了解を得て治療は開始されるのが医療の現場の状況であります。したがって本勧告は、本薬剤を使用した医師の専門家としての役割を軽んじるとも受け取れます。」(日本臨床腫瘍学会)

しかし,添付文書の記載を改訂した後は,イレッサの使用後の間質性肺炎による死亡が激減しています.添付文書の記載の仕方によって,危険性の受け止め方に違いがあり,死亡者を大幅に減らすことができるのです.

2学会は,一方で,重篤な間質性肺炎発生の可能性がわからなかったと反論し,他方で,添付文書には適切に副作用が記載されていた,と反論しているのですが,これは矛盾しています.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-27 09:47