弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 02月 20日 ( 1 )

平成23年2月10日~18日の医療事件の判決

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最近の医療過誤等医療事件の判決を,報道に基づき要約しご紹介します.
なお,患者側の請求が認められた判決が報道される傾向があります.患者側の請求が認められなかった判決は多数あります.

◆ 名古屋地裁平成23年2月18日判決(脳動脈瘤クリップ)

名古屋第二赤十字病院で脳動脈瘤の手術を受けた78歳の女性が,術後に脳梗塞を起こし、左手足にまひが残り,常時介護を要する状態になった事案です.

名古屋地裁判決は,動脈瘤にクリップをかける際にクリップが動脈を圧迫して血流が低下したのが脳梗塞の原因と判断し,「血流計で状態を確認すべきだったのにしておらず、注意義務に違反している」とし,約5335万円の損害賠償を認めました.
日赤に5300万円賠償命令 名古屋地裁が手術ミス認定」(MSN産経ニュース)ご参照

◆ 高松高裁平成23年2月17日判決(腹部大動脈瘤手術の術後管理)

香川県立中央病院で腹部大動脈瘤の手術を受けた62歳の男性患者が,血管壁の傷みが激しく血管の接合部分の変更など早急な対処が必要なのに,医師の対処が遅れ血流が長時間止まったままとなって多臓器不全となり6日後に死亡した事案です.

高松高裁判決は,2月17日,一審と同様に医師の過失を認定した上で、県の賠償額を約4400万円から約8150万円に増額しました.
高松高裁判決は,「一審判決は男性の何らかの体質的要因が多臓器不全を招いたとしたが、体質は関係ない。医師の誤った手術計画と手術中の対処の遅れが引き起こしたもの」と認定しました.
2審も県に賠償命令/県立中央病院医療過誤訴訟」(四国新聞)ご参照

◆ 札幌地裁平成23年2月16日判決(分娩監視装置を取り外し陣痛促進剤を投与)

医療法人社団グロリア会月寒グロリアクリニックの医師が,分娩監視装置を取り外し,陣痛促進剤を投与し,児は仮死状態で生まれ,脳性まひの後遺症が残り,その後死亡した事案です.
グロリア会側は「脳性まひは分娩時に起因しない」などと反論していました.

札幌地裁判決は「陣痛促進剤を使用しており、胎児の健康確認のためにもっと早く再装着すべき義務があった」として過失を認定し,「分娩監視装置に胎児が仮死状態の所見が現れるはずで、直ちに陣痛促進剤の投与を中止すれば脳性まひが生じなかったはずだ」として因果関係も認めました.
医療過誤訴訟:産科医・法人に5800万円賠償命令--札幌地裁判決」(毎日新聞)ご参照

◆ 名古屋高裁平成23年2月14日判決(母体死亡)

地方独立行政法人岐阜県総合医療センターに妊娠高血圧症候群(PIH)で入院した31歳の患者が,予定日より約2カ月早く帝王切開で男児を出産し,その2日後にけいれん発作を起こし,その後死亡した事案です.

名古屋高裁判決は,約8400万円の賠償を命じた名古屋地裁判決を維持し,控訴を棄却しました.
二審も医療機関のミス認定 帝王切開後の死亡で」(MSN産経ニュース)ご参照

◆ 東京地裁平成23年2月10日判決(5倍量を投薬)

国家公務員共済組合連合会虎の門病院に肺がんで入院中の66歳男性患者が,併発した肺炎の治療薬「ベナンバックス」(一般名ペンタミジン)を通常の5倍の量で3日間投与され,腎不全などで死亡した事案です.
臨床経験3年目の担当医が薬品マニュアルの隣のページの別の薬品と見間違えて投薬を指示しました.薬剤師は,疑義照会を行っていませんでした.

東京地裁判決は,投薬を指示した担当医,調剤した薬剤師,確認する立場にあった薬剤師2名の過失を認め,病院の開設者である国家公務員共済組合連合会などに2365万円の損害賠償義務を認めました.
東京・虎の門病院の過剰投薬:薬剤師に賠償命令 医師らの責任も」(毎日新聞)ご参照

◆ 岐阜地裁平成23年2月10日判決(消防署の弁護士会照会拒否)

消防署の救急活動内容を弁護士会を通じて照会したところ,消防署に回答を拒否された事案です.

岐阜地裁判決は「回答拒否により、(医療過誤訴訟を提起しようとしている)原告の利益が妨げられた」,「回答を拒否する正当な理由はない」として消防署を管轄する岐阜市に6万5250円の賠償義務を認めました.
救急活動情報照会損賠訴訟:岐阜市に6万円支払い命令 違法性の確認は却下」(毎日新聞)ご参照

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-20 09:42