弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 03月 06日 ( 3 )

規制仕分け;一般用医薬品のインターネット等販売規制

b0206085_9121399.jpg行政刷新会議のホームページに「規制仕分け詳細と結果速報」が載っています.

それをみると,最初から規制仕分けの対象にとりあげた時点で,「改革の方向性:安全性を確保する具体的な要件の設定を前提に、第三類医薬品以外についても薬局・薬店による郵便等販売の可能性を検討する。留意点: 上記検討の結論が得られるまでの間、経過措置を延長する。また、第一類から第三類のリスク区分についても、不断の見直しを行う。」という結論があらかじめ決まっていたように思います.

薬害被害者団体,消費者団体,医療団体の一致した規制緩和反対を押し切って,この結論に基づき,今後インターネット販売でも安全性は確保できる,という前提で,規制緩和の方向をすすめられようとしているわけですが,適切とは思えません.

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谷直樹
by medical-law | 2011-03-06 19:41 | 医療

予防接種B型肝炎訴訟と除斥期間

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予防接種B型肝炎訴訟は,国が20年の期間制限にこだわり続けているため,和解が進んでいません.

◆ 民法724条後段の20年の期間制限

国賠法は期間制限の規定をおいていませんので,民法が補充的に適用されます.
民法724条は,「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と定めています.
この民法724条後段の20年の期間制限は,「除斥期間」(Ausschulussfrist)であると解釈されています.

◆ 除斥期間(Ausschulussfrist)

「除斥期間」は,時効に似て非なる制度とされています.
古典的な学説(鳩山秀夫)では,除斥期間には,中断がない(反対川島武宣),停止がない(反対我妻栄),権利発生時から期間が進行する(反対判例)などが時効と異なるとされていました.

判例は,除斥期間について,時効と接近した解釈を行い.当該事案ごとに当事者の公平を図ってきました.

最高裁は,「当該損害の全部又は一部が発生した時」(最高裁平成16年4月27日判決(三井鉱山じん肺訴訟)),「水俣湾周辺地域から転居して4年を経過した時 」(最高裁平成16年10月15日判決(関西水俣病訴訟)),「B型肝炎を発症した時」(最高裁平成18年6月16日判決(北海道B型肝炎訴訟))などと解し,機械的に権利発生時から進行するとはしていません.

また,大阪高裁平成6年3月16日判決は.正義・公平の理念や条理に基づいて民法158条の法意に照らして民法724条後段の適用を制限しています.

◆ 和解と除斥期間

予防接種B型肝炎訴訟は,和解に基づき救済の仕組みを作ろうとしているわけですから,正義・公平の理念や条理に基づいて,20年の期間制限について柔軟に考えてよいはずです.

たとえば,ドミニカ移民事件の東京地裁平成18年6月7日判決は,入植した時点を除斥期間の起算点として除斥期間による権利消滅を肯定しましたが,謝罪し政治決着により1人あたり200万円から50万円を支払い解決しています.形式的な除斥期間を盾にとって被害者を切り捨てるのではなく,被害者全員の救済を図るべきでしょう.

予防接種B型肝炎訴訟原告団は「慢性肝炎の発症から20年以上が経過した被害者こそ、長期間にわたって肝炎被害を被ってきたのであり、その救済の必要性が大きい」と述べています.

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谷直樹
by medical-law | 2011-03-06 16:54 | 医療事故・医療裁判

平成23年3月1日~3日の医療事件の判決

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最近の医療事件の判決を,報道に基づき要約しご紹介します.

◆ 静岡地裁平成23年3月3日判決(子宮摘出手術で出血死)

清水市の産婦人科クリニック(廃院)で,患者(当時45歳)が,平成17年,子宮摘出などの手術中に大量出血し,翌日死亡した事案です.

被告らは「死因は失血死ではなく,手術中の急激な状態変化による死亡」と主張しました.静岡地裁は「手術中だけでなく手術前の出血量も考慮すれば,失血死と認めるのが相当」と認定しました.
静岡地裁は.元院長と執刀医が,手術前に相当量の出血があり手術中に危険な状態になることは予測できたとし,輸血の準備をせず手術を行い、容体急変後も総合病院に転院させるなどの措置を取らなかったため失血死したと認定し,約1億1千万円の支払いを命じました.
判決は,被告らが当時加入し,医療事故の保険金の支払いを拒否している日本医師会に対しても,被告と連帯して賠償するように求めた,とのことです.

なお,静岡地検は昨年7月診療行為全般や当時の医療水準を考慮すると過失責任を問うのは困難として嫌疑不十分で不起訴処分としていました.

手術中の過失認める 2005年9月、清水の失血死訴訟」(中日新聞)
産科医に1億円賠償命令、ミスで女性が失血死」(ZAKZAK)ご参照
中絶手術死「医師に過失」民事は認定…静岡地裁」(読売新聞)ご参照
静岡・子宮摘出手術死亡:損賠訴訟 医院側のミス認める 約1億円支払い命令 /静岡」(毎日新聞)ご参照

◆ 青森地裁弘前支部平成23年3月1日判決(無免許の医療行為)

弘前市のエステ会社の社長とその夫(医師,内科医であるとともに美容皮膚科も開業)が,共謀し,2009年2月~10年10月まで医師免許のない従業員3人に医療行為にあたるレーザー脱毛などをさせた事案です.
レーザー,光脱毛機器で毛根組織を破壊するのは明らかに医療行為です.

青森地裁弘前支部は,違法な医療行為で1年間に2500万円余りを売り上げたことを認定し、「利潤目的の犯行で、非難に値する」「美を求める乙女心に巧みにつけこみ、相当に悪質」とし,とくに夫については「現役の医師として刑責は重い」と指摘し,社長に懲役1年6月執行猶予3年,罰金100万円夫に懲役2年執行猶予3年,罰金100万円を言い渡しました.

無免許エステ 社長夫婦有罪」(読売新聞)ご参照

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谷直樹
by medical-law | 2011-03-06 10:49 | 医療事故・医療裁判