弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 04月 06日 ( 3 )

東京電力株を買う赤いハゲタカ

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◆ 映画『ハゲタカ』

先日,BSで,映画『ハゲタカ』をやっていました.
大森南朋さんは,ビールのCMでの,はにかんだ表情が印象的なのですが,ここでは対照的にクールな役をこなしていました.
中国系のファンドマネージャーの赤いハゲタカを演じる玉山鉄二さんもよかったです.
みなさん,Starck eyes(スタルクアイズ)のメガネが決まっていました.
ハゲタカモデルと言われ,一時期人気になっただけのことはあります.

◆ 東京電力株を買う中国政府系ファンド

実際の世界では,赤いハゲタカは自動車株は買っていないようです.(「徹底調査! 中国に買われた「日本の一流企業」86社」参照)
レナウン,ラオックス,本間ゴルフ,オギハラなども中国系に買収されていますが,中国政府系ファンドの目的は,純粋に投資とみられています.

原発問題で上場来安値を更新している東京電力株ですが,これを一手に買っているのが,東京電力株の約1.3%を保有している,中国政府系ファンド「SSBT OD05 OMNIBUS ACCOUNT TREATY CLIENTS」だそうです.(「大もうけのチャンス? 東電株を買い占めた投資家の正体とは」sankei biz)
その狙いは何なのか,どのような展開を読んでいるのか,気になります.
「腐った日本を買い叩く」つもりなのでしょうか.
それとも.東京電力に頼まれて買っているのでしょうか.

※ 東京電力の勝俣恒久会長と皷紀男副社長が震災当日「愛華訪中団」の 一員として北京にいたことが報じられています.愛華訪中団には,大物マスコミ人,大物政治家が参加し,参加費5万円以外の費用は東京電力持ちとのことです.
「中国は「清明節」の連休中のため、政府の公式な反応は出ていない。国営の中国中央テレビ(CCTV)は5日、前日に続き汚染水放出について報道。「申し訳ない」と陳謝する枝野幸男官房長官の映像を繰り返し流すとともに、国際原子力機関(IAEA)の反応、米西海岸の飲料水から微量の放射性物質が検出されたことなどを報じた。」(「低濃度汚染水放出、周辺国が懸念 韓・ロ「情報不十分」」 日本経済新聞)とのことです.韓国,ロシアと異なり,中国からの抗議,非難は連休後もありません.中国は,台湾と,原子力の安全について協力することを合意したと報じられています.

◆ 円高から円安へ

震災直後16年ぶりに最高値を更新し76円台の円高だったのが,今日4月6日の東京市場では一時85円53銭近辺と昨年9月21日以来の円安となりました.
米国の金融政策の影響もあるのでしょうが,原発の対処がうまくいっていないこと,放射能汚染水を海に排水したことが影響しているように思います.
市場は正直です.

【4月8日追記】 中国外務省の洪磊副報道局長は,日本が米国に内諾を得ていたことがわかった8日に,「日本が国際法に従って行動し,海洋環境を保護する適切な措置を取ることを希望する」との談話を出し,環境への影響に懸念を表明しました.「米国のみ事前内諾報道と中国政府の懸念表明など」 東京電力株は,4月6日に292円の上場来安値をつけましたが,8日にはストップ高の420円まで戻しました.


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谷直樹
by medical-law | 2011-04-06 22:23 | 脱原発

non-harm principle;放射能汚染水の海への排水をやめるべきです

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今日6日午前5時38分頃高濃度放射能汚染水の流出が止まったとのことですから,5日から続いている放射能汚染水の海への排水は直ちにやめるべきでしょう.

◆ 国際法違反

政府は,今回の放射能汚染水の排水が国際法違反にあたらない,と述べています.
これは,廃棄物その他の投棄に係わる海洋汚染防止に関する条約(ロンドン条約)が陸からの排水について規制するものではないことを根拠としています.

しかし,廃棄物その他の投棄に係わる海洋汚染防止に関する条約は,領域責任の原則を広げ,船舶等からの公海上の投棄についても責任を負うとしたものです.領土からの汚染水の排水を規定していないのは,それが国境を越えて影響を与えるものであれば許されないことは領域責任の原則から当然だからなのです.

トレイル溶鉱炉事件の仲裁裁判で,領域責任の原則が確認されています.
カナダの溶鉱炉から亜硫酸ガスが排出され,アメリカの農作物に被害を与えた事案です.
仲裁裁判に付され,国家が他国に被害を与えるような方法で国土を使用したり,その使用を許容したりすることはできない,という判決が1941年に下されています.

国際環境法の基本ルールの1つに,non-harm principleがあります.
「国家は,自国領域またはその管理の下で,深刻な越境汚染や地球規模の環境損害の源を規制するために,適切な措置をとらなければならない.」というものです.

今回のは,日本領土内から日本領海内への放射能汚染水の排水ですから,領域責任の原則から,国境を越えて影響を与えるものであれば当然,環境損害防止に関する日本国家の責任が問われます.

松本外相の説明は,放射能汚染水の排水が国境を越えて影響を与えるものではない,という前提にたつものですが,単に高濃度のものに比べて低濃度というだけであって,排水量も少なくないですから,その前提自体に科学的合理的な根拠があるか疑問です.

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谷直樹
by medical-law | 2011-04-06 08:17 | 脱原発

自招危難;放射能汚染水を海に流す行為は,緊急避難にあたるか?

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◆ 放射能汚染水の海への排出


東京電力が,緊急避難的な措置として,原子炉等規制法第64条第1項に基づく措置として,放射能汚染水1万1500トンを海に放出すると発表し,大韓民国から国際法違反を指摘されています.

「汚染水の処理について、原子力安全委員会は3月29日、東電に対し、『井戸を掘る』『使わなくなったタンカーを活用する』『米軍の協力を得る』などの助言をした。
東電は同委員会の案を取り入れず、4号機タービン建屋をタンク代わりにして水を移す計画を立てた。しかし、4号機のタービン建屋は3号機とつながり、汚染水の貯蔵場所としては使えないことがわかり、断念した。」(産経ニュース「東電の低濃度汚染水放出 保管対策の「無計画」さで」)ということなのです.

つまり,東京電力は,4号機タービン建屋をタンク代わりにして水を移す計画が実行可能かを十分検討せずに,タンカーを活用するなどの案をとりいれなかったために,放射能汚染水の処理に困り,海に放出するという事態を招いたのです.

◆ 自招危難の議論

刑法では,自らの故意行為,過失行為によって生じた危難(自招危難)について,緊急避難が成立するか,という議論があります.

大正13年12月12日の大審院の判決がリーディングケースです.
貨物を満載した荷車の背後に十分注意せずに進行した自動車運転者が,荷車の背後から急に飛び出してきた少年を避けようとして,ハンドルを切り,老女をはね死亡させた事案です.
「刑法37条に於いて緊急避難として刑罰の責任を科せさる行為を規定したるは公正正義の観念に立脚して他人の正当なる利益を侵害して尚自己の利益を保つことを得せしめんとするに在れは同条は其の避難行為を是認する能わさる場合には之を適用することを得さるものと解すへき」(表記をカタカナからひらかなに変えて引用)として,大審院は緊急避難の成立を否定しています。

東京高裁昭和45年11月26日判決,東京高裁昭和47年11月30日判決も,同様に,緊急避難の成立を否定しています.

学説は,全面肯定でも全面否定でもなく,自招危難について緊急避難が成立する場合と成立しない場合とがあると考えるのが一般的です。どのような考え方に立ち,どのような基準で線を引くのかは,様々です。社会的相当説,利益衡量説,原因において違法な行為説などいくつもの説があります.

このように様々な考え方がありますが,本件は,原子力安全委員会のタンカーを活用するなどの提案を東京電力が取り入れず,4号機タービン建屋をタンク代わりに使えばいいという安易な考えが,この事態を招いたのですから,単純に緊急避難的な考えで免責されるということにはならないのではないでしょうか.

なお,医療訴訟でも,一連の医療行為を細分化しすぎると,不合理な結論になることがあります.そのため,最後の局面だけみれば結果回避不可能とみられるときでも,その前の処置を含む一連の行為を評価し責任があるとされるべき場合もあります.

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谷直樹
by medical-law | 2011-04-06 01:16 | 脱原発