弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 05月 04日 ( 3 )

日本政府の放射線量基準は安全ではない,米国「社会的責任のための医師の会」

b0206085_23371441.jpg明日5月5日は,子どもの日です。

4月20日のブログ「文部科学省の基準で子どもを守れると思いますか?」の続きを書きます.

◆ 米国の「社会的責任のための医師の会」

日本政府が子どもの屋外活動制限の放射線量基準を年間20ミリシーベルトを目安として設定したことを,小佐古敏荘氏ですら批判し,参与を辞任しましたが.その後も,日本政府は,考えを変えていません,

米国の「社会的責任のための医師の会(PSR:Physicians for Social Responsibility)」は,4月29日(日本時間5月1日),「There is no way that this level of exposure can be considered "safe" for children.」(年間20ミリシーベルトを安全と考えることは到底できない),とする声明を発表しました.

this dose for children exposes them to a 1 in 200 risk of getting cancer. And if they are exposed to this dose for two years, the risk is 1 in 100.」(この被曝量(年間20ミリシーベルト)は、子どもの発がんリスクを200人に1人増加させ,この被曝量が2年続くと,子どもの発がんリスクは100人に1人となる)

と指摘しています.

PSRは1985年にノーベル平和賞を受賞しています.

PSR Statement on the Increase of Allowable Dose of Ionizing Radiationto Children in Fukushima Prefecture」ご参照
西日本新聞「学校放射線基準は「安全でない」 ノーベル賞受賞の米医師団」ご参照

◆ 日本の医師団体

日本では,「核戦争に反対する医師の会(PANW)」が,3月16 日,「看過できないことは、テレビをはじめとする報道機関が、原発の放射能汚染の危険をレントゲン撮影の放射線量と比較するキャンペーンをしていることです。ウラン、プルトニウム、セシウム、ヨードなどの放射性同位元素による原発汚染の危険性を無視することは容認できません。」とし,政府と東京電力に以下の「福島原発事故についての声明」を出しています.

1、福島原発事故に関わる正確な情報を迅速に収集し速やかに公表すること。
2、事故処理に全力を傾け事態の拡大を防止すること
3、国内備蓄のヨウ素剤の活用など、住民の被曝拡大防止と被曝者にたいする適切な治療を迅速におこなうこと。


日本医師会,医学会等の団体は,東京電力と政府の対応について,「安全」とは言えないと.積極的に発言すべきだと思います.

◆ 阿武隈(原発30km圏内生活)裏日記

福島県川内村在住の作家鐸木能光さんは,4月30日,「今になっての年間20ミリシーベルト論争が非常に空しく聞こえる」と阿武隈(原発30km圏内生活)裏日記に書いています.

「原発作業員でさえ年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトを超えないと決められているのですから、子供の被曝量が年間20ミリシーベルトでもよいという今回の見解が批判を受けるのは当然です。

しかし、実際に今、福島原発周辺ではどうなっているのかといえば、子供も大人もとっくにその規模の線量を被曝しているのです。」

「こうした現実を前にして、今になっての年間20ミリシーベルト論争が非常に空しく聞こえるのは私だけではないでしょう。」


「SPEEDI」のデータで,甲状腺に溜まったヨウ素による内部被曝のみをシミュレートしただけで,ひと月ちょっとで,すでに20ミリシーベルトなどという数値はとっくに超えているので,いまさら何を言うか,ということなのです.

鐸木能光さんは,次の通り書いています.
「最初の段階で飯舘村、浪江町、葛尾村、南相馬市、川俣町に避難命令を出していれば、どれだけの人が被曝から逃れられただろうと思うと、返す返す残念でなりません。北西方面の人たちが被曝することを分かっていながら、国や県はなんの警告も発しなかったのです。これは未必の故意による殺人に等しい犯罪行為です。」

「政府にできることは、とにかく正直になること。
すべて正直に告白し、報告した上で、「数値上ではこんなに大変なことになっていますが、私たちはこの現実を受け入れた上で、具体的にどうしていくのがいちばんいいことなのかを考えていかなければなりません」と声明すべきです。」


阿武隈(原発30km圏内生活)裏日記 ■ 20ミリシーベルト論争の虚しさ 」ご参照

政府は,安全であると嘘をつき問題を回避するのではなく,安全でないことを認めて,ではどうするか,と問題を解決しなければならないのです.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-04 23:43 | 脱原発

GWの秋吉台,3億年の神秘

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事務局Hです.

今回の旅で,一番楽しみにしていたのは,3億年の歴史をもつ神秘の地,秋吉台でした.

小学生時代,社会科資料集や地図帳が大好きで,
等高線の様子から山の形を想像したり,知らない土地の人々の生活を想像したり,地理の教科書で各地の伝統芸能や特産品を覚えたりと,少し変わった小学生だったと思います.
授業そっちのけで写真付きの頁を見ては,まだ見ぬ風景に思いを馳せていました.

実際に秋吉台を見て,写真と変わらない風景が眼前に広がっていることに感動しました.
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秋吉台は,草原から無数の石灰岩が無骨に生えているようなカルスト台地が遥か彼方まで広がっていて,
地下には,2億年以上も前から少しずつ形成された鍾乳洞があり,自然の神秘と果てしない時の流れを身体で感じることができます.

広大な自然を前に味わった,見えないなにかに圧倒される感覚は,地図帳の写真からは感じられなかったものでした.

私が旅に出るのが好きなのは,子どもの頃,穴が空くほど眺めた写真と同じ風景が実際に眼前に広がったときの喜びや,それを越える感動を味わいたいからなのだと思います.
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by medical-law | 2011-05-04 10:11 | 休暇・休日

ビンラディン容疑者殺害は合法か?

b0206085_115235.jpgビンラディン容疑者は応戦しなかったそうです.

米国SEAL Team 6によるビンラディン容疑者殺害は国際法上合法なのでしょうか?


◆ ロイターの調査,79%が正しい

ロイターが英語サイト(www.reuters.com)を通じて行った「調査では、回答者の79%が米政府がビンラディン容疑者殺害を決定したのは正しい判断だったと回答。一方、正しくないと答えた人は14%、分からないと答えた人は7%だった。」そうです.
(ロイター「ビンラディン容疑者殺害、8割近くが正しい判断と認識=ロイター調査」ご参照)

一般の人の意見ですが,英語圏では「正しい」という意見が多いことに驚きます.

◆ 法律家の意見

朝日新聞は,法律家の意見を紹介しています.

「「ベルギー・ルーバンカトリック大学のピエール・ダルジョン教授は、この点について「本来は生きて拘束されるべきだった。国際法上、認められる殺害だったかどうかは微妙だ」と語る。
オランダ・アムステルダム大学のジャン・ダスプレモン准教授も「米側の行動がすべて国際人道法上の手続きにのっとったものだったのかどうか、今後、検証が必要だ」と指摘する。
国連の旧ユーゴスラビア戦犯法廷で判事を務めた法政大学の多谷千香子教授は、明らかに問題があるとする。「米国にとって危険人物なら、誰でも殺して良いことになってしまう」」
(朝日新聞「ビンラディン容疑者殺害 国際法上の問題、指摘する声も」ご参照)

国際法上明らかに合法とは言い難いようです.

◆ 冷泉彰彦氏,米国には成熟した刑事司法文化がない

冷泉彰彦氏は「ビンラディンのような大物を「裁く」ような成熟した刑事司法文化をアメリカは持っていない以上、殺すしかなかったのです。」と述べています.
「セキュリティの点だけでなく、「悪人に合衆国憲法による弁護人選任の権利を与えるのはイヤだ」などという保守派の「信念」は、国論分裂を招く一方で、とても国際社会に見せられたものではありません。」とのことです.
(Newsweek 「ビンラディン殺害「2つの疑問」とは?」ご参照)

米国の刑事司法文化の未熟さが,殺害を選択させた,ということです.
米国が人権保障の先進国であると誤解している人もいるようですが,米国は全体としては保守過激派の強い国であり,米国の刑事司法文化は未成熟である,と確認した出来事だったと思います.

【追記】
元西ドイツ首相のヘルムート・シュミット氏は「国際法に違反していることは明らかだ」と述べました.
弁護士のジェフリー・ロバートソン氏は,殺害は「冷血な暗殺行為であったことも考えられる」,「正義とは、(容疑者を)裁判にかけ,証拠に基づき判決を下すことだ」と述べました.
ロイター「ビンラディン容疑者殺害の必要性、欧州では疑問視する声も」ご参照

ピレイ国連人権高等弁務官は,国際法と照らし合わせる観点から「ビンラディン容疑者殺害に関する正確な事実を知りたい」との見解を示したとのことです.
毎日新聞「<ビンラディン容疑者殺害>国連人権弁務官「事実知りたい」」ご参照

作戦開始数分後,ビンラディン容疑者は米軍特殊部隊員に捕まり,家族の前で射殺されたと,12歳の娘が述べている,とのことです.
時事通信「米軍、生け捕り後に「処刑」?=ビンラディン容疑者の娘が証言-パキスタン紙」ご参照


ホルダー米司法長官は,ビンラディン容疑者殺害を山本五十六殺害と同じと述べました.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-04 01:03 | 司法