弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 05月 25日 ( 2 )

堺市立堺病院、出産事故7000万円で調停成立報道

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平成23年5月25日のスポニチ「帝王切開遅れで7千万賠償「早く切開するべき」」は,以下のとおり報道しています.

 「堺市立堺病院で2007年、帝王切開が遅れ、生まれた女児が脳に重度の障害を負ったとして女児の母親らが損害賠償を求めていた訴訟で、市は25日、母親側に7千万円を支払うことで調停が成立したと明らかにした。支払いは4月28日付。

 病院によると、07年3月30日午前、母親(36)は診察のため来院。胎児心拍監視装置を装着し、経過観察していたが、来院から約5時間後、胎児の心拍が低下したため、午後3時半ごろ帝王切開した。女児は低酸素脳症と診断された。

 病院によると、他の医療機関にデータを見てもらったところ、「もっと早く帝王切開するべきだ」と指摘されたため、賠償を決定。帝王切開の時間と後遺症の因果関係は分からないという。」


提訴後,調停に付され,そこで調停が成立したということなのでしょう.
朝日新聞によると,病院の調査で意見を聞いた外部の産婦人科医10人全員が「監視装置をつけた時点で帝王切開すべきだった」と指摘した,とのことです.

10人も聞かなければ責任を認めないことに疑問も感じますが,本件の帝王切開の遅れが容易に認定できる事案であることは明らかです.
帝王切開の遅れは,医師の注意義務違反(過失)となります,
科学的に厳密な因果関係が完全に立証されなくても,「帝王切開の遅れ」・「低酸素脳症」・「重度の障害」が立証されれば,法的には因果関係があるものとして賠償責任を認めるのが通常で,適切です.本件は,因果関係の程度を考慮し,7000万になったものと考えられます.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-25 23:57 | 医療事故・医療裁判

小田原市民病院、5720万円で和解(肺血栓塞栓死亡事故)報道

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平成22年8月に,小田原市民病院で子宮全部摘出手術を受けた40代の女性患者が,術後肺血栓塞栓症を発症し,当直医が適切な措置を講じることが遅れたため死亡しました.
この医療事故について,小田原市は,責任を認め,遺族に対して5720万円を支払うことで和解し,6月補正予算案に計上しました.

手術後の肺血栓塞栓症は当然警戒しなければならないもので,適切な措置が遅れたことは医師の注意義務違反になります.
事故から比較的早期に適切な解決に至ったことは,評価できます.早期に適切な解決をすることは,病院側,患者側双方にとって,良いことです.

なお,「和解」と報道されていますが,「裁判上の和解」ではなく,裁判外の「示談」かもしれません.

神奈川新聞「術後の合併症で女性患者死亡、市立病院の医療事故で和解/小田原市」ご参照

【追記】
毎日新聞「医療事故:遺族に慰謝料払い和解 小田原市が5720万円 /神奈川」によれば,

 「手術後に酸素飽和度の低下などの症状が見られ、酸素投与などをしながら経過観察していたが、翌朝に心肺停止となり、死亡した。死因は下肢の静脈などで生じた血栓が心臓を経由、肺の血管をふさぐ「肺血栓塞栓(そくせん)症」と分かった。
 病院側は「血栓予防の措置はしていた。手術が長かったことも一要因とみられるが、死因を予見することは不可能だった」と医療ミスではないとしながら、「結果的に十分な対応ができず、亡くなった責任の一端はあり、和解することにした」と話している。」

とのことです.

読売新聞「手術後死亡5720万円で和解…小田原市立病院  40代女性の遺族と 肺血栓と気づかず」によれば,

 「女性は子宮腺筋症で、手術は昨年8月中旬に行われた。午後2時15分に手術が終わり、女性は病室に戻ったが、深夜に「息苦しい」と訴え、血液中の酸素の濃度が低下する症状がみられた。酸素を投与しながら経過観察したが、翌午前8時30分頃、容体が急変し、2時間後に死亡した。
 病理解剖の結果、死因は肺血栓塞栓症とわかった。
 記者会見した安野憲一副院長は「痛みなどは術後にみられる症状と判断し、肺血栓塞栓症に思い至らなかったようだ」と説明。「深夜の段階では、血栓が出ていたとしても小さいもので、急変した時に大きい血栓が肺に飛んだと考えられる」と述べた。
 中島麓院長は「十分な対応が取れず、重大な結果となり、心からおわびする」としたうえで、「医療ミスではない」と強調した。肺血栓塞栓症は、突然発症して短時間で重大な結果になることがあるためという。」

とのことです.

つまり,医師・患者の感覚は,法的な責任要件を充たした場合にだけ損害賠償すればよい,というものではありません.昨今の裁判所の厳格な判断は,当事者の感覚(社会常識)から乖離しているように思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-25 23:31 | 医療事故・医療裁判