弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 07月 05日 ( 2 )

日本糖尿病学会の遠回りな話,HbA1c値の算出法変更

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◆ 「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」

キャリアブレイン「HbA1c値の算出法変更、1年先送りも- 厚労省検討会」は,次のとおり報じています.

「厚生労働省は7月4日、「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」(座長=多田羅浩三・日本公衆衛生協会理事長)を開き、特定健診の検査項目で、糖尿病の診断基準の一つでもある「HbA1c値」の算出法を国際標準であるNGSP値へと見直す時期について、引き続き議論したが、この日も意見がまとまらず、結論は先送りとなった。」

「白川修二委員(健康保険組合連合会専務理事)は、「来年4月までにシステムを変える必然性が分からない。2013年度からでもいいのではないか」と指摘。」

「参考人として出席した門脇孝・日本糖尿病学会理事長は、「診療報酬改定が予定されている来年度に合わせてシステム変更すれば、(健診機関の)コストを最小限に抑えることができる」と述べる」

「貝谷伸委員(全国健康保険協会理事)は同省に対し、「(来年度までに)技術的に何ができて、何ができないのかをはっきりさせるべきだ」と主張した。」


NGSP値は,国際共通基準ではありません.
厚労省検討会は,欧米のHbA1c(NGSP値)へ移行する時期を議論していますが,そもそもNGSP値への移行の適否自体を検討すべきと思います.

◆ 3つのHbA1c算出法

HbA1cの算出法は,国によってまちまちです.日本のHbA1cの算出法では,欧米のHbA1c(NGSP値)よりも0.3~0.4%低くなります.
日本糖尿病学会は,欧米の研究論文を読むときに不便なので,欧米のHbA1c(NGSP値)との併記の段階を経て,欧米のHbA1c(NGSP値)に移行しようというのです。
さらに,欧米のHbA1c(NGSP値)と国際共通基準のHbA1c(IFCC値)を併記し,最終的には,国際共通基準のHbA1c(IFCC値)のみにしようというのです.

これは,患者に戸惑いと混乱を生じさせます.
欧米のHbA1c(NGSP値)を表記する意味がわかりません.
国際共通基準のHbA1c(IFCC値)に直接移行すればすむことです.

研究者が欧米の論文を読むときの便宜より,患者の便宜を優先すべきと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-05 09:34 | 医療

筑波メディカルセンター病院,東京高裁で平成23年7月4日和解成立報道(縫合不全,腹膜炎)

b0206085_1323932.jpg◆ 事案

水戸地裁土浦支部平成22年9月13日判決による事実認定は,次のとおりです.

平成14年12月26日に筑波メディカルセンター病院で胃がん手術を受けた男性患者(当時47歳)は,医師が誤って麻酔針で脊髄を損傷し下半身麻痺となり,また胃と十二指腸の約3.5センチの縫合不全により腹膜炎を発症しました.
患者は,下半身麻痺の治療のため転院したセントラル病院で,術後11日目に死亡しました.
司法解剖では,胃と十二指腸の縫合不全による腹膜炎が死因とされました

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◆ 水戸地裁土浦支部平成22年9月13日判決

病院側は,誤嚥性肺炎が死因である,と主張しました.
水戸地裁土浦支部は,縫合不全による腹膜炎を死因と認定し,筑波メディカルセンター病院の執刀医の技量が低く,縫合不全を生じ,術後,経過観察を要する所見があったのに、その後の推移を確認せずに縫合不全と腹膜炎を除外診断したのは早計だった,腹膜炎に注意するよう転院先に依頼する義務があるのに怠ったとし,医師の過失と死亡との因果関係を認め,筑波メディカルセンター病院に,約9600万円の支払いを命じました.

◆ 東京高裁(民事11部)平成23年7月4日和解

東京高裁(民事11部)で,平成23年7月4日,病院側が謝罪し,和解金1億円を遺族に支払う内容で和解が成立しました.

日刊スポーツ「病院が謝罪し1億円支払いで和解」ご参照

◆ 感想

本件では,解剖が死因を解明するのに有用でした.

縫合不全は外科医として恥ずべきことですが,縫合不全がすべて注意義務違反になるわけではありません.本件の場合は,腸と十二指腸に約3.5センチの縫合不全があり,腹膜炎を疑わせる症状もあったのに縫合不全と腹膜炎を除外診断し,術後経過に問題なし,と転院先の病院に伝えていたのですから,注意義務違反は免れません,

高裁の和解金額が,地裁の判決より高額になっていますが,遅延利息も考慮すれば,当然です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-05 01:33 | 医療事故・医療裁判