弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 07月 11日 ( 1 )

国産の埋め込み型補助人工心臓,その光と影(2)~エバハート治験と利益相反関係

b0206085_432438.jpg◆ 利益相反関係

1) エバハート(EVAHEART)の考案者である山崎健二教授と製造会社サンメディカルの代表者は実の兄弟です.

2) 臨床試験18例のうち8例(44%)が山崎教授(臨床試験当時は准教授)の所属する東京女子医科大学で実施されています.

3) 埼玉医大で臨床試験が始まった2006年ころ,心臓血管外科には許俊鋭教授と高本眞一客員教授が所属していました.両教授は東大医学部の先輩後輩で,高本教授は当時から東大心臓外科の教授も務めていました.許教授は,2008年5月に東大大学院医学系研究科「重症心不全治療開発」の寄付講座特任教授として迎えられました.サンメディカルは,2008年4月からこの講座に寄付を行いました.
なお,東大はエバハートの協同開発者です.

以上の事実から,利益相反関係が疑われます.
利益相反関係がある場合は,臨床試験における有害事象の評価にバイアスがかかる可能性があります.
利益相反関係について被験者への説明がなされていなければ,倫理原則違反になります.

◆ PMDAの前身が開発融資

PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の前身である医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構からエバハートの開発に対して融資(1999年から2003年)が行われました.
PMDAが客観的中立的に判断できるか疑問です.

◆ 薬害オンブズパースン会議の要望書

エバハートの臨床試験は,6カ月生存率は89%(つまり2人死亡),1年生存率83%(つまり3人死亡)と好成績と言われています.
臨床試験は,東京女子医大,国立循環器病センター,埼玉医科大学,大阪大学と東京大学で18例実施され,5例の死亡が報告されています.

薬害オンブズパースン会議は,2009年3月10日,エバハートの開発と治験の各担当者や担当機関相互の利益相反関係を調査した上で,治験が適正に実施されているか否か、及びその結果の客観性・正確性につき厚生労働省内に調査委員会を設置して調査すること等を要望したのですが,厚生労働省は要望に応じることはありませんでした.

◆ 医療イノベーション

PMDAは,平成23年7月1日から,医療機器・体外診断用医薬品についての対面助言(治験相談・簡易相談),事前面談等を始め,開発段階から企業の手助けをしようとしています.
このように,医療イノベーションは,産学官の協力体制で,日本の医療産業を育成しようというものです.

しかし,開発者側の人が臨床試験を行い審査も行うようになると,臨床試験の中立性,客観性・正確性が損なわれ,承認の適正も損なわれます.
被験者が被害を被り,さらに本来承認すべきでないものが承認され患者が被害を被ることになります.
臨床試験のルールをきちんと守ることが必要です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-11 04:26 | 医療事故・医療裁判