弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 07月 14日 ( 2 )

日本医師会,「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言について」

b0206085_9104127.jpg日本医師会の7月13日の定例記者会見の資料として,「日本医師会 医療事故調査に関する検討委員会」の「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言について」が含まれていました.ご紹介いたします.

◆ 日医の基本的な考え方

「医療の安全と医療の質の向上に努め国民が安心して医療を受けられる社会をつくるのは医療界の責務である。また日本医師会は、プロフェッショナル・オートノミーによる自浄作用の観点から、医療安全の制度を再点検することが大切である。
わが国の医療事故調査制度の柱を、「院内医療事故調査」と、医療界、医学界が一体となって組織、運営する「第三者的機関」とし、これによって、医療界は自ら定める職業規範の責務を果たすという点で、自律的かつ意欲的に医療の質向上に努め、国民が安心と信頼をもって医療を受けられる体制を築く。」


◆ 日医の基本的提言

全ての医療機関に院内医療事故調査委員会を設置する
医療界,医学界が一体的に組織・運営する「第三者機関」による医療事故調査を行う
医師法21条の改正を行う
ADRの活用を推進する
患者救済制度を創設する

◆ 感想

患者の安全と医療の質の向上は,医療にかかわる者誰しもが目指すところです.
医療事故の原因究明,再発防止のため,公正な事故調査が必要です.
「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」がまとまり,立法化まで秒読みの段階までいきながら,政権交代により頓挫した状態ですが,日医の「基本的提言」を機に,再度,事故調査の法制化が進展することを期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-14 02:41 | 医療事故・医療裁判

山口地裁平成23年7月13日判決(厚南セントヒル病院,医療器具が動脈に突き刺ささり出血,治療せず)

b0206085_98612.jpg◆ 事案

山口県宇部市の医療法人聖比留会が開設する厚南セントヒル病院で,平成14年5月,患者(男性,当時69歳)が狭心症の治療中に医療器具(心臓)カテーテルが動脈に突き刺さったのが原因で出血し,医師は画像で血腫に気付き,大量の出血を示す検査数値が出ていましたが,手術などの外科的処置を行わず,男性は7月に別の病院に転院し死亡しました.

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◆ 山口地裁平成23年7月13日判決

山口地裁は,平成23年7月13日,手術しなかったことと死亡の因果関係について高度の蓋然性があることまでは認めませんでしたが,「大量の出血を示す数値が出ていたのに、開腹手術などを検討せず、男性は治療を受ける機会を奪われた」と救命について相当程度の可能性を認定し,損害賠償金計990万円の支払いを命じました.

◆ 感想

本件は,
(a)狭心症の治療中に医療器具が動脈に突き刺さったというのは,手技ミスと思われます.医師には,医療器具を愛護的に操作し動脈に突き刺さないという注意義務があり,それに違反していると思われます.判決は,医療器具操作の過失を認めていませんが,医療器具(心臓カテーテル)で動脈を損傷し手術でも救命できないほどの大量の出血を引き起こさせるのであれば,愛護的でない操作があったと推認すべきです.
しかも
(b)医師は画像で血腫に気付いたのですから,手術などの外科的処置を行う注意義務がある筈です.もし自分がその処置をできないときは,他の医師を呼んで処置を実施すべきです.ですから,その注意義務にも違反しています.

開腹手術などを行えば救命できたかは,仮定の話ですので,厳密に医学的な証明は困難です.

しかし,
1)もし,開腹手術などを行えば救命できたとすれば,(b)の注意義務違反と死亡との間に因果関係があります.

2)もし.開腹手術などを行っても救命できないとすれば,その状況を作り出したのは,上記(a)の注意義務違反によるものですので,(a)の注意義務違反と死亡との間に因果関係があります.

(a)と(b)というダブルの注意義務違反がある以上,いずれにしても,注意義務違反と死亡との因果関係は肯定できる,と思います.

死亡との因果関係について高度の蓋然性を認めず,相当程度の可能性を認めただけ,というこの判決には,疑問を感じます.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-14 01:50 | 医療事故・医療裁判