弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 07月 15日 ( 3 )

国産の埋め込み型補助人工心臓,その光と影(3)~国循のエバハート治験事故

b0206085_8535285.jpg◆ 国循での臨床試験中の事故

国立循環器病センターで平成19年春,補助人工心臓「エバハート」(EVAHEART)を臨床試験で装着した男性(当時18歳)が心肺停止し脳に重大なダメージを受け,意識不明のまま平成20年春に死亡しました.

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◆ 植込み型補助人工心臓治験症例に関する事例調査委員会報告書

調査委員会(委員長・上田裕一名古屋大教授)が設置され,調査報告書が発表されました.(現在はサイトから削除されています.)

遺族側代理人弁護士の堀康司氏は,「報告書には、心肺停止に至った原因、治験の手続き、院内の事故調査体制という3点の柱がある。いずれについても国立循環器病センターに対して非常に厳しい指摘をする内容になっていると受け止めている。詳しい事実が明らかになり、大部の報告書を短期間にまとめた委員会の努力に遺族は敬意を表している。この報告書を国立循環器病センターがどう受け止めるのかを引き続き注視していく」とコメントしました.(「「7万字の報告書」に見る事故調査の可能性と限界」)

◆ 人工心臓装着後の体制

「報告書によると、心臓移植や人工心臓の装着を受けた患者への治療は臓器移植部が中心になるが、ふだんは心臓血管内科が担当。指揮系統が不明確で、医師間の情報交換も乏しかった。男性の容体急変は日曜で臓器移植部の医師はおらず、エバハートの知識もない医師が受け持ったという。」(2009年6月27日 読売新聞)

人工心臓装着から約2週間たった平成19年春に容体が急変した際、連絡を受けた受け持ち医は重篤な状態と判断しませんでした.
受け持ち医は,一般の後期研修医に当たる心臓内科医で,人工心臓の患者を診た経験はありませんでした.
また,急変したのは日曜日で,装着手術をした臓器移植部の医師がバックアップする体制も不十分でした.

◆ 心肺停止の原因

「心肺停止の原因は、エバハートの影響や循環血液量の減少などによって右心不全が悪化したと推定。心肺停止後、人工心臓装着中には禁止されている心臓マッサージを臓器移植部長の指示で行ったため、出血して心臓内に血腫が生じたが、緊急時なのでやむを得なかったと判断した。」(2009年6月27日 読売新聞)

◆ 治験継続の同意について

事故後,母親は,口頭で治験継続を望まいんことを述べました。母親が書いた治験継続の同意書には「納得できません。生命維持には治験に参加するしかないでしょ?」と書き添えられていました.治験を中止しても装置を外す必要はなく,説明が不十分でした.報告書では,この点が厳しく指摘されました.

(次回は,東京女子医大の例について書きます.)

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-15 08:45 | 医療事故・医療裁判

「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」と日医の「基本的提言」

b0206085_725629.jpg日医の基本的提言が発表されましたので,医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案(以下,単に「大綱案」といいます)と比較してみたいと思います.

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◆ 院内事故調査委員会と院外事故調査委員会の2層構成

日医の基本的提言は,院内調査委員会と院外調査委員会(第三者的機関)は2層建てで,院内調査委員会を重視しているところに特徴があります.
(「第三者機関」ではなく,「第三者的機関」という表現からすると,日医の基本的提言は,完全に公正な第三者を想定していないのはないかという懸念があります.)

大綱案は,院内調査は行われていても,実効性と公正性の観点から,院外調査委員会による調査が必要だ,という考えに基づいています.

◆ 院内事故調査委員会

日医の基本的提言は,「小規模病院や診療所においては、医師会・大学等からの支援を依頼できる体制を築く。」としています.これは,重要なことです.

日医の基本的提言は,「院内事故調査の重要性は、医療事故の原因分析もさることながら、調査分析後の再発防止の唯一の担い手が当該医療機関である点にある。」と述べています.
しかし,再発防止の唯一の担い手が当該医療機関であるというのでは,いつまでたってもダメな医療機関はダメなままです.当該医療機関のみならず,患者,患者団体と第三者機関が,再発防止に手を貸すという体制があって,実効的な改善がなされると思います.

日医の基本的提言は,「院内事故調査は、身内による内部的な調査であることから、調査の質を担保するために一定の基準を設ける必要がある。」と述べています.
ただ,一定の基準が守られていたとしても,院内事故調査には,身内の調査であることから,極力バイアスを排除するシステムが必要です.
日医の基本的提言は,「医療事故調査委員会は、医療事故が起こった時に迅速に発動させる委員会で、院内の委員と外部委員(専門委員、法律家、有識者)で構成される。」としています.もし,この外部委員が身内同然の人では,バイアスがかかった調査となってしまいます.

◆ 院外事故調査委員会への調査請求

患者側が,バイアスがかかっているため公正な事故調査が行われていないと述べる場合には,院外事故調査委員会による調査が必ず行われるシステムであることが必要です.
日医の基本的提言は,院内医療事故調査委員会からの調査依頼のみならず,「患者・家族から本「第三者的機関」へ調査請求することも可能とする。」としていますので,患者側が院内事故調査が公正に行われていないとして院外事故調査委員会に調査請求できるものと考えられます.また,患者側から調査請求があれば,当然調査が行われるべきものだと思います.

◆ 院外事故調査委員会は死亡事案に限るのか

日医の基本的提言は,「第三者的機関による医療事故調査は、医療行為に関連した死亡事例を対象とする。」とします.マンパワーと財源に考慮してのことです.
しかし,重度の障がいを負った事案なども,死亡事案と同様に,調査の必要性は高く,調査の対象にすべきと思います.必要なことにはマンパワーと財源を投入するという考えで,制度設計すべきと思います.

◆ 院外事故調査委員会の構成

従前,第三次試案に対し,委員会は医療の専門家のみで構成すべきという意見もありましたが,医療の専門家だけでなく,法律関係者およびその他の有識者を加えて,多面的な委員構成とすべきとの意見が支持され,大綱案は,委員会の透明性,中立性,公正性の担保のためには医療の専門家のみでなく,法律家や医療を受ける立場にある者等の参加も必要との考えのもと,医療の専門家以外の者も委員として任命する,としています.

日医の基本的提言は,「具体的には、現在の「一般社団法人日本医療安全調査機構」を基本に、日本医師会、日本医学会をはじめ医療界の関係団体が参加する組織を再構築し、かつ各都道府県には1箇所以上の地方事務局を、都道府県医師会の積極的な関与のもとに設置するなど、既存の組織と実績をベースに、一層の拡充・機能強化を図ることが有効と考えられる。」としています.

透明性,中立性,公正性の観点から,大綱案の方が適切です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-15 06:22 | 医療事故・医療裁判

「たばこと塩の博物館」

b0206085_7204841.jpg◆ タバコは博物館へ

タバコは,害が大きく益はないですから,博物館行きがふさわしい物です.

JTは,渋谷に「たばこと塩の博物館」をもっていますが,タバコの行く末を読んでのことと思います.

その博物館のサイトをみると,7月21日から,第33回夏休み塩の学習室「さぐれ!キミのからだの中の塩」という小中学生向けの企画がはじまるとのことです.
当然,高血圧や心臓病の危険があるので塩分を控えよう,という話もあるのでしょうが,子どもたちがタバコを展示している場所に行けないようにする必要がある,と思います.

◆ 塩にも依存性

高血圧などの危険にもかかわらず,減塩が難しい理由が「依存」である,という報告がthe journal Proceedings of the National Academy of Sciences誌に掲載されました.

Melbourne大学のDerek Denton教授と, of North CarolinaのDuke 大学のDr Wolfgang Liedtkeらによれば,「When the rodents were in need of salt, brain cells made proteins more usually linked to addiction to substances such as heroin, cocaine and nicotine.」とのことです.

ネズミが塩を渇望するとき,脳細胞で,ヘロイン,コカイン,ニコチンのような依存症物質に関連するタンパク質が生成されたということです.

Why salt is addictive: It stimulates the brain cells just like cigarettes and hard drugs」ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-07-15 04:17 | タバコ