弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 08月 13日 ( 3 )

日本小児科学会医療安全委員会,麻酔を安全に行うための指針づくりへ

b0206085_1332363.jpg朝日「子どもに麻酔、病院35%「合併症経験」 MRI検査で」(平成23年8月13日))は,つぎのとおり報じています.

子どもに磁気共鳴断層撮影(MRI)検査をする際にかける麻酔で合併症が起きた経験のある病院が3割以上にのぼることが、日本小児科学会医療安全委員会の調査でわかった。合併症には呼吸停止など深刻なものもあり、同学会は検査を安全に行うための指針づくりに乗り出す。

 12日の同学会であった報告によると、昨年8~10月の調査に回答を寄せた416病院のうち、35%に当たる147病院で合併症の経験があった。呼吸停止は73病院、血中の酸素不足で呼吸が浅くなったりする症状は75病院、脈が異常に遅くなる徐脈は21病院が経験。心停止も3病院であった。

 MRIは痛みはないが、ベッドに寝ている間に体が動くと正確な検査ができないため、子どもの場合、飲み薬や座薬で弱い麻酔をかけることが多いという。麻酔は主に小児科医が行うが、危険性はこれまでも指摘されてきた。


以前から危険性を指摘されてきたのですから,遅ればせながら,という感もありますが,ともあれ,日本小児科学会医療安全委員会の指針つくりに期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-13 13:23 | 医療

厚労省,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での死亡5例公表

b0206085_1185223.jpg◆ 死亡5例公表

厚労省は,8月12日,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤)と関連性を否定できない出血性副作用による死亡例5例があったことを公表しました.
5例の死亡例の年齢は,70歳代1名,80歳以上4名,性別は,男性1名,女性4名とのことです.

1例目がわかった6月の時点で,すみやかに公表・対応してほしかったですね.

申請から10か月で製造販売承認された薬剤です.ワーファリンの代わりに使えて,モニタリングが要らないというのがウリだったのですが...

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厚労省の対応は次のとおりです.

◆ 医師に対し

1 本剤の投与前及び投与中に腎機能検査を行うこと。
2 出血や貧血等の徴候を十分観察し,出血が見られた場合には適切な処置を行うこと。
3 患者に対し,出血等の徴候が現れた場合に直ちに医師に連絡するよう指導すること。

◆ 日本ベーリンガーインゲルハイムに対し

添付文書の「使用上の注意」の改訂を行うとともに,医薬関係者に対して速やかに情報提供するよう,製造販売業者日本ベーリンガーインゲルハイムに対して指示した,とのことです.

[警告]の項を新たに設け, 「本剤の投与により消化管出血等の出血による死亡例が認められている。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。 本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。 」と記載するように,との指示です.

◆ 服用患者に対し

服用患者は,鼻出血,歯肉出血,皮下出血,血尿,血便等に注意し,出血があった場合には直ちに医師に連絡すること,

厚労省「血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での重篤な出血に関する注意喚起について」ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-13 10:32 | 医療

名古屋高裁平成23年8月12日判決(狭心症の運動負荷試験,除細動器なし),患者側逆転勝訴

b0206085_9271799.jpg◆ 事案

平成16年1月,胸の痛みを訴えて岡崎市の医療法人鉄友会宇野病院を受診した男性患者時(当時44歳)に対し,医師は,狭心症を疑って自転車型のペダル踏み運動器具「エルゴメーター」で運動負荷試験を指示しました.

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医師は立ち会わず,除細動器(Defibrillator)を準備しない状態で,負荷試験が行われました.

患者は,この負荷試験中に,脈拍が異常に速くなる「心室頻拍」の状態となり,不整脈で意識を失いました.

その後少なくとも2分29秒間は,蘇生措置は行われまんせでした.

患者は,蘇生後,低酸素脳症により記憶力や言語表現能力に障害が残りました.

患者は,別の病院でリハビリをしていましたが,一時帰宅中の同年5月,不整脈により死亡しました.負荷試験と死因には関係がないとされています.

◆ 名古屋地裁判決

一審の名古屋地裁判決は,経験のある臨床検査技師がいたことなどを理由に態勢が不十分とまではいえない,として請求を棄却しました.

◆ 名古屋高裁判決

名古屋高裁判決は,「検査技師が適切な訓練を受けたと認める証拠はない」とし,「担当医の立ち会いで除細動器を準備し試験をしていれば,1分以内に蘇生措置を開始できた」と注意義務違反を認め,医療法人鉄友会に6600万円の損害賠償支払いを命じました.

中日「病院側に賠償命令、名古屋高裁 除細動器置かず負荷試験」ご参照

◆ 感想

運動負荷試験は,心電図の電極をつけた状態で運動し,運動時の心電図をみるものです.
運動負荷試験の中でも固定自転車のペダルこぎ(エルゴメーター負荷試験)は,異常を誘発しやすい反面,危険性もあります.
医師が立ち会い,除細動器等の緊急備品を検査室に用意しておくことが必要です.

除細動器(Defibrillator)を準備しない状態で,医師が立ち会わず,負荷試験を行うと,本件のような結果になることは予見できた筈です。
除細動器(Defibrillator)を準備し,医師が立ち会っていれば,2分29秒間蘇生措置が行われないという事態は回避され,本件結果は回避できた筈です.

なお,本件事故より後の調査ですが,日本心臓リハビリテーション学会診療報酬対策委員会が,平成19年2月15日~平成19年2月25日に,日本循環器学会専門医教育指定病院ならびに関連施設に対し実施したアンケート調査の結果は,次のとおりです.

(エルゴメータ運動負荷試験について)「回答154施設中130施設(84.4%)は医師が1名は立会いし、医師が立ち会っていないとしたのはわずかに3施設(1.9%)であった。」

「エルゴメータ運動負荷試験は臨床検査技師と検査担当医が同時に行うことが多く、回答156施設中、エルゴメータ運動負荷試験には必ず医師の立会いのもと行っているとした施設は146施設(93.6%)、臨床検査技師のみで行っているとした施設はわずかに3施設(1.9%)であった。」

「緊急備品は、除細動器、救急カート、酸素吸入は、ほとんどの施設で、検査室に常備しているまたは、院内に配置されているとの回答であった。


名古屋高裁判決が本件について賠償責任を認めたのは適切と思います.

地裁の不当な判決には,控訴すべきですね.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-13 09:21 | 医療事故・医療裁判