弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 08月 19日 ( 3 )

調剤過誤で死亡,小嶋薬局薬剤師小嶋富雄氏らが送検される

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◆ 報道

読売「調剤ミスで75歳死亡、薬剤師2人を書類送検」(平成23年8月19日)は,次のとおり報じています.

「薬の誤った調剤をして、女性患者を死なせるなどしたとして、埼玉県警は19日、「小嶋薬局本店 サンセーヌ薬局」(埼玉県越谷市)の吉田玲子・管理薬剤師(65)(千葉県野田市)を業務上過失致死容疑で、経営者の小嶋富雄・埼玉県薬剤師会長(76)(埼玉県越谷市)を業務上過失傷害容疑でさいたま地検に書類送検した。

発表によると、小嶋会長は昨年3月25日、春日部市の米沢朝子さん(当時75歳)が胃の負担を和らげる「胃酸中和剤」を医師から処方されていたのに、重症筋無力症の治療に使う「コリンエステラーゼ阻害薬」を誤って調剤して渡し、全治不詳の中毒を起こさせた疑い。

医薬品管理の責任者だった吉田薬剤師は、在庫管理の際に調剤ミスに気づいた部下の薬剤師から同4月1日にミスの報告を受けながら、米沢さんに連絡せずに放置し、薬による中毒で死なせた疑い。

米沢さんは同3月31日頃から誤って渡された薬の服用を始め、4月7日に入院先の病院で死亡した。

県警は、調剤ミスに気づいた時点で連絡をしていれば、死ななかったとみている。」


◆ 感想

毒薬に指定されている,重症筋無力症の治療に使う「コリンエステラーゼ阻害薬」は,ジスチグミン(商品名,ウブレチド,ウブテック)でしょう.

ジスチグミンの添付文書の警告欄には,「本剤の投与により意識障害を伴う重篤なコリン作動性クリーゼ を発現し、致命的な転帰をたどる例が報告されているので、投与に際しては下記の点に注意し、医師の厳重な監督下、患者の状態を十分観察すること」と記載されています.
薬剤師である以上,ジスチグミンの危険性については,十分認識していたはずです.

スポニチが「同薬局では昨年2月下旬~4月、約20人に計約2700錠が誤って出されたが、死亡した女性以外に不調を訴えた人はいない。」と報じたところからすると,分包器のカセット内に間違って詰めたためにおきた事故ではないか,と思います.

調剤過誤は,ときどきありますが,これはひどすぎます.

しかも,埼玉県薬剤師会会長で,つい先日まで日本薬剤師会理事だった小嶋富雄氏なのですから...

【追記】

毎日に「小嶋会長の送検容疑は、昨年3月25日、経営する埼玉県越谷市内の薬局で春日部市の無職、米沢朝子さん(当時75歳)に、胃酸中和剤を調剤するはずが、調剤用機器の設定ミスで、高齢者に重篤な副作用があり毒薬指定されているコリンエステラーゼ阻害薬を調剤し、臭化ジスチグミン中毒の傷害を負わせたとしている。」と書いてありました.

【再追記】

毎日新聞「薬局誤調剤:女性死亡 元薬剤師に禁錮1年求刑 被告、起訴内容認める /埼玉」(2012年5月30日)は,次のとおり報じています.

「間違えた薬剤を提供して女性を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた越谷市内の薬20+件局の元薬剤師、吉田玲子被告(65)=千葉県野田市=の初公判が29日、さいたま地裁(小坂茂之裁判官)であった。吉田被告は起訴内容を認めた。検察側は「過失は重大で悪質」として禁錮1年を求刑、即日結審した。判決は6月15日。

 検察側は、吉田被告が監督責任がある管理薬剤師の立場だったにもかかわらず、薬の種類や分量の確認などを事務員任せにするなど職務を怠っていたと指摘。吉田被告は「(管理者としての自覚が)非常に甘かった」などと述べた。

 起訴状によると、吉田被告は10年3月25日、越谷市内の小嶋薬20+件局本店「サンセーヌ薬局」で、春日部市の無職、米沢朝子さん(当時75歳)に胃酸中和剤を調剤しようとした際、自動錠剤包装機の設定ミスなどで毒性の錠剤を調剤。さらに同4月1日に誤投薬に気付いたのに、責任追及を恐れて服用中止の指示や医師への情報提供などをせず、同7日に米沢さんを中毒死させたとしている。【狩野智彦】」


谷直樹
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by medical-law | 2011-08-19 18:13 | 医療事故・医療裁判

備前焼

b0206085_12143942.jpg事務局Iです.
結婚祝いに備前焼をいただきました.

家にある器は,頂いた物なども多いのですが,一人暮らしが長かったので,どれも,一点ずつしかありません.
二つ組のティーカップや,お皿など,次々並ぶと,新鮮に感じます.

備前焼は土を焼き締めた渋い器ですが,お料理を載せるととても映えるので,メインプレートから,ちょっとしたおつまみのようなものを載せたり,とても重宝しています.

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by medical-law | 2011-08-19 12:15 | 趣味

北九州市立医療センター,医療ミスを謝罪(乳がん誤診)

b0206085_8383288.jpg◆ 報道(共同通信)

共同通信「乳がんと誤診、乳房切除 北九州市立医療センター」(8月18日)は,以下のとおり報じました.

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「北九州市立医療センターは18日、福岡県行橋市の50代女性患者を乳がんと誤診し、乳房を切除する医療ミスがあったと発表した。

 医療センターによると、女性は「乳房にしこりがある」と訴えて来院。50代の男性医師が2月に針を使った細胞検査をした際「細胞の増殖性が強い」として、乳がんとの診断結果をカルテに記載した。

 女性は3月15日に片方の乳房を切除したが、退院後、切除部分の組織検査で良性の腫瘍であったことが判明。医療センターは女性に経緯を説明し、謝罪したという。

 北九州市は今月16日付で男性医師を厳重注意処分とした。」


◆ 報道(NHK)

NHK「乳がんと誤診 乳房を摘出」(8月18日)は,以下のとおり報じました.

「ことし3月、北九州市の市立医療センターで検査を受けた50代の女性が誤って乳がんと診断され、片方の乳房を摘出されていたことが分かり、病院はミスを認めて女性に謝罪しました。

北九州市の市立医療センターによりますと、福岡県内に住む50代の女性がことし3月、胸にしこりがあるのに気づき、医療センターで検査を受けたところ、胸に腫瘍が見つかり、「乳がん」と診断されました。女性は片方の乳房をすべて摘出する手術を受けましたが、手術から2週間後に行った検査で、女性の腫瘍はがんではなく、乳房を摘出する必要がなかったことが分かりました。病院は、診断にミスがあったとして、手術からひとつき後に担当した50代の男性医師が女性に対していきさつを説明するとともに謝罪したということです。病院によりますと、腫瘍は悪性か良性かどうかの区別がつきにくいもので、担当した医師は、これまでの経験から悪性と判断しましたが、病院では結果的に診断ミスだったとして、医師を口頭で厳重注意としました。市立医療センターの有馬透副院長は「ミスが起きてしまい遺憾です。今後は診断を確実に行い、市民に安心して医療を受けていただけるよう努めます」と話していました。」


◆ 感想

本件のように,乳がんであると診断して切除後に乳がんでないことがわかり,医療過誤かどうか問題になることが,時々あります.他方,乳がんでないと診断し,乳がんを見逃したとして,医療過誤が問題とされることもあります.
どちらの場合も,結果的に間違っていたから医療過誤として賠償責任を負う,というものではありません.

本件は,難しい症例なのに,組織診を行わないで,細胞診だけで診断したことが問題でしょう.
また,その細胞検査をもとに,そのように診断したことが医学的に不合理でないか,も問題とされます.

本件は,腫瘍は悪性か良性かどうかの区別がつきにくいもので,担当した医師はこれまでの経験から悪性と判断したとのことですが,細胞診だけでは区別がつきにくいことがあり,また一人の医師の経験には限界があります.

たとえば,非浸潤がんと良性の乳頭腫・乳腺症との鑑別診断は難しいときがありますが,医学的に判断が難しいから過誤ではない,とは言えません.

医学的に難しいものは複数の医師で慎重に検討すべきですから,一人の医師だけで決めてしまわないことが大切だと思います.
多くの場合,病理学的検査(細胞診,針生検)とマンモグラフィ,超音波検査の所見を総合的に判断して確定診断をつけていると思いますが,判断に迷う難しい症例では,組織診を行い,外科医,病理医を含め,複数の医師で検討し,それでもわからないときは,より専門的な別の病院の医師にコンサルトすることも必要でしょう.

もし,どうしても確定診断ができない場合は,その旨患者に告げるべきでしょう.
このように慎重に検討すれば,厳密な意味での確定診断ができなくても,進行転移との兼ね合いで,切除という判断が合理的とされる場合もあります.(たとえば,子宮肉腫の可能性を7割と判断した場合,切除することが合理的な判断であり,むしろ切除せずに経過を見ていたことが注意義務違反になると思います.)

もちろん,本件で,医師がいきさつを説明し,医療ミスを認め,謝罪したのは,正しい対応だと思います.

【追記】

読売「悪性と誤診 乳房全摘、北九州市立医療センター」(8月19日)は,次のとおり報じました.

市病院局によると、3月15日、市立医療センター外科で、乳がんの疑いがある行橋市の女性(50歳代)を手術し、腫瘍がある片方の乳房を全摘した。しかし、その後の組織検査で、乳がんではなく、全摘する必要がなかったことが判明し、7月、女性側に謝罪した。
 病理診断科の男性医師が2月、採取された腫瘍の組織を検査した際、「増殖性が強いので悪性」と誤診し、外科医に伝えたという。今月16日に男性医師を口頭で厳重注意した。
 再発防止策として、病理診断で良性か悪性かの判断が難しい場合は、いずれの可能性もあることを伝えるよう徹底する。


毎日「誤診:乳房切除、50代女性と示談交渉へ--北九州市立医療センター /福岡」(8月19日)は,次のとおり報じています.

「市病院局などによると、女性患者は乳房にしこりを感じて行橋市内の医院を受診、同センターで精密検査を受けることになり2月、男性医師が針生検という検査で「悪性」と診断した。これに基づき3月、別の外科医が手術で乳房を切除し、確認したところ悪性ではなかったという。同センター事故調査委の調査を経て、医療安全管理委が医療ミスと認定した。

 誤診した男性医師は今月16日、市病院局長から口頭で厳重注意を受けた。市は再発防止策として、がん検査で良性か悪性かの判断が難しい場合は、報告書にその旨を記載し、本人や家族と相談するという。同センターの有馬透副院長は「このような事態を招き遺憾に思う。今後は一例一例確実な診断と治療を行いたい」と述べた。」


読売からは,病理医の判断であったこと,毎日からは,事故調査が行われたことが,それぞれわかります.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-19 01:44 | 医療事故・医療裁判