弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 08月 20日 ( 2 )

市立根室病院,異型輸血事故を発表

b0206085_173534100.jpg◆ 事案

市立根室病院の看護師は,平成23年8月19日,院内規則で定める患者名の確認を怠たり,血液型AB型の患者(女性,70代以上)に対し,O型血液を点滴し,7分後に自分で間違いに気付いて止めたとのことです.輸血された血液は約5ミリリットルでした.患者の容体は安定しているとのことです.

北海道新聞「市立根室病院で患者に輸血ミス 容体は安定」ご参照

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

◆ 感想

異型輸血事故は,いわゆる確認のエラーにより生じます.

輸血療法の実施に関する指針」(平成21年2月一部改訂版)13頁には,つぎのとおり記載されています.

「5)チェック項目
事務的な過誤による血液型不適合輸血を防ぐため,輸血用血液の受け渡し時,輸血準備時及び輸血実施時に,それぞれ,患者氏名(同姓同名に注意),血液型,血液製造番号,有効期限,交差適合試験の検査結果,放射線照射の有無などについて,交差試験適合票の記載事項と輸血用血液バッグの本体及び添付伝票とを照合し,該当患者に適合しているものであることを確認する。麻酔時など患者本人による確認ができない場合,当該患者に相違ないことを必ず複数の者により確認することが重要である。
6)照合の重要性
確認する場合は,上記チェック項目の各項目を2 人で交互に声を出し合って読み合わせをし,その旨を記録する。」


このとおり確認していれば事故は防止できます.
異型輸血事故は重大な結果をひきおこすこともあり,実際,罰金に処せられた例もあります.

看護業務をめぐる法律相談」(新日本法規)の拙稿「輸血(血液製剤)取扱いによる事故の責任は」553頁参照

各病院で,マニュアルが定められていますが,異型輸血事故はあとを絶ちません.
医師,看護師がマニュアルをを守らないからです.

確認ルールが守られているかつねに点検し,ルーズになってきたら直ちに注意を徹底し,守らせるようにすることが大事です.

谷直樹
下記バナーのクリックを御願いいたします.クリックは一日一回有効です.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-08-20 17:32 | 医療事故・医療裁判

先行行為に基づく作為義務,調剤過誤を犯した薬剤師の場合

b0206085_1013986.jpg毎日は「女性薬剤師は「社長(小嶋会長)に叱責されるのが嫌で報告も回収もしなかった」と供述しているという。」と報じています.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

小嶋薬局事件で,今までの調剤過誤事件以上に怒りを感じるのは,調剤過誤を認識しながら放置していた点です.

自らの先行行為(調剤過誤)によって結果発生の危険(死亡の危険)を招いた場合,その人は保障人的地位に基づいて,結果発生を防止する義務(作為義務)があります.
例えば,過失によって燃えているろうそくを倒した場合,その人は消火活動を行う義務があり,保険金をかけているから燃えてもいいと思って,消火活動を行うことなく立ち去った場合,放火罪(故意犯)にあたります.
ひき逃げが,保護責任者遺棄致死罪や殺人罪にあたることがあるのも,同じ理屈です.

調剤過誤によって死亡の危険を発生させた薬剤師は,結果発生を防止する義務(作為義務)があります.ジスチグミン(商品名,ウブレチド,ウブテック)を高齢者が服用すれば死亡する危険があることは,薬剤師である以上当然認識していたと思います.したがって,ただちに誤った薬を渡した人に連絡する義務があります.そして,調剤過誤に気づいた時点で連絡をしていれば死亡が避けられたのであれば,因果関係もあります.

その薬剤師が,回収しないことで死んでもやむをえないと思った(殺人の故意あり)のか,回収しなくても体調を崩すだけで死ぬことはないだろうと思った(傷害の故意あり,殺人の故意なし)のか,は微妙ですが,本件は,単なる業務上過失致死ではなく,傷害致死罪あるいは殺人罪の成立が検討されるべき事案ではないでしょうか.

谷直樹
下記バナーのクリックを御願いいたします.クリックは一日一回有効です.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-08-20 08:49 | 医療事故・医療裁判