弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 08月 22日 ( 4 )

妊産婦死亡症例検討評価委員会『母体安全への提言2010』, 妊産婦死亡,半数以上が回避可能性あり

b0206085_196578.jpg読売「出産時出血死の妊産婦10人救えた?治療に不備」(平成23年8月21日)は,次のとおり,報じています.

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「昨年1年間に全国で出産時の大量出血で死亡した妊産婦は16人おり、うち10人は、輸血などの処置が適切だったならば救命できた可能性が高いことが、厚生労働省研究班の調査でわかった。

 研究班は、体内での出血の進行の見落としや、輸血製剤の不備などで、治療が手遅れになったと分析している。

 研究班は、日本産婦人科医会の協力で、全国約1万5000人の産婦人科医からカルテなどの提供を受け、死因や診療内容の妥当性を分析した。

 16人の年齢は26~42歳で、17~1・4リットルの出血があった。このうち、兵庫や東京、埼玉など9都県の10人が、救命できた可能性が高いと判断された。

 年間数千件の出産を扱う大規模な産婦人科病院のケースでは、39歳の母親が子宮破裂で出血。血圧が異常低下して、1時間後に輸血が開始されたが、輸血製剤が不足し、止血のためのガーゼが子宮に過剰に詰め込まれた。各委員からは「輸血体制が不備だった」「ガーゼで傷が悪化したのでは」などと問題点が指摘された。」


妊産婦死亡事故は,半数以上が回避可能であった可能性が高いということになります.

昨年1年間に全国で出産時の大量出血で死亡した妊産婦は16人おり、うち10人は、輸血などの処置が適切だったならば救命できた可能性が高いということです.

つまり,出血の進行に留意し,出血進行を見落とすことなく早期に治療を開始すれば,また輸血製剤供給体制を整備すれば,妊産婦死亡は半数以下になる,ということを意味します.
この報告を,患者の安全につなげていただきたい,と思います.

詳細は,「母体安全への提言2010 平成23 年4 月 妊産婦死亡症例検討評価委員会 日本産婦人科医会」ご参照.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-22 18:48 | 医療事故・医療裁判

日本医療機能評価機構,産科補償制度の再発防止の報告書まとめる

b0206085_192268.jpgキャリアブレイン「産科補償制度の再発防止で初の報告書- 医療機能評価機構」(平成23年8月22日)は,つぎのとおり報じています.

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「分娩に関連して一定の条件下で発症した重度脳性まひ児に対し補償金を支払う「産科医療補償制度」を運営する日本医療機能評価機構は8月22日、記者会見を開き「再発防止に関する報告書」を初めて公表した。同制度が始まった2009年以降に補償対象になり、昨年末までに原因分析報告書を公表した15例について検証し、再発防止策などを提言する内容。同制度に加入する施設や関係団体に配布して周知を図るという。

 報告書では15例について、「テーマに沿った分析」と「数量的・疫学的分析」を行っている。

 テーマに沿った分析では、(1)分娩中の胎児の心拍数聴取(2)新生児蘇生(3)子宮収縮薬(4)臍帯脱出―の4点に着目。(1)(2)(3)については、日本産科婦人科学会や日本産婦人科医会などの診療ガイドラインが徹底されていない例があったため、現場にガイドライン徹底を呼び掛ける。
 また、(4)が起こった3例には、▽経産婦▽分娩誘発▽人工破膜―などの共通点があったことを踏まえ、学会などに対し、事例を集めて因果関係を分析するよう提言している。

 数量的・疫学的分析では、新生児が生まれた時間や妊産婦の年齢、体重などに分けて集計した。ただし、「15例と対象が少ないため、何らかの結論を導くことは難しい」としている。

 報告書をまとめた同機構の「産科医療補償制度再発防止委員会」の池ノ上克委員長(宮崎大医学部附属病院院長)は会見で、「現場では当然行われていると思われる内容も含まれているが、日々の診療行為の確認に活用し、産科医療の質の向上に取り組んでいただきたい」と述べた。」


産科補償制度で事例を集積する中で,ガイドラインすら遵守していない,低レベルの医療が行われていて,それが産科事故につながっている,という実態が判明してきたようです.
産科医療の実態がようやく明らかになってきたことで,今後の改善がすすむものと思われます.
再発防止に関する報告書」の検証,提言内容の周知徹底とその実行に期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-22 18:29 | 医療事故・医療裁判

津波被害,美空ひばりさんの「塩谷の岬」が・・・

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事務局Hです.
お休みをいただき,両親の実家のある福島県いわき市に帰省してまいりました.

震災後,私は初めていわきに行ったのですが,崩れたまま直されていない墓石や,不規則に凹凸が生じてしまった道路を見て,地震被害の大きさを目の当たりにしました.
ですが,地震被害,津波被害,原発による風評被害を受ける中,地元の方々は明るく元気に生活していたことが救いでした.

叔父に,帰省の度に訪れては貝殻を拾ったりして遊んでいた海岸に連れて行ってもらいました.
美空ひばりさんの「みだれ髪」で歌われる灯台がある海岸なのですが,
そこも大きな津波被害に遭い,住宅が密集していた海沿いの住宅街がなくなりました。
数か月前まではがれきの山だったそうですが,がれきがある程度撤去され,住居の土台を残して更地になっていた光景もまた,とても現実のものとは思えない,寒々しい印象を受けました.
幼い頃から見慣れた風景がまるごとなくなってしまったことがただただショックで,しばらく言葉が出ませんでした.
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その中でも,家の庭があったところには,きれいな花が咲いていて,荒れてしまった土地に,生命を感じた気がしました.

谷直樹法律事務所
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by medical-law | 2011-08-22 11:48 | 休暇・休日

週刊ダイヤモンドのダビガトラン(商品名プラザキサ)の記事について

b0206085_9553828.jpgダビガトラン(商品名プラザキサ)で5名が死亡し,「出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はない」(改訂後の添付文書)とされています.

◆ 週刊ダイヤモンドの記事(カラダご医見番第58回)

週刊ダイヤモンドオンラインに「血液をほどよくサラリと脳卒中予防に新薬が登場抗凝固薬─ダビガトラン」[2011年08月22日] という記事が載っています.

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「今年1月に承認された抗凝固薬のダビガトラン(商品名プラザキサ)。「血液サラサラ」状態を保ち、血液の塊が引き起こす脳卒中を予防する。一般にはなじみが薄いのでピンとこないかもしれないが、この領域では半世紀ぶりの新薬。いろいろな意味で「待望の」という枕詞がつく薬なのだ。
(中略)
ダビガトランは治療効果がワルファリンを上回り、なにより出血性の副作用が少ない。「出血を懸念して処方を控えてきた患者にも使いやすい」(内科医)のだ。今回の承認は、血栓がらみの疾患の発症リスクが高い心房細動性不整脈の患者が対象だが、今後は脳卒中の再発予防にも使われていくだろう。」


このような調子で,記事は,ダビガトラン(商品名プラザキサ)の治療効果がワルファリンを上回り、なにより出血性の副作用が少ない,と手放しで褒めています.

◆ 感想

厚労省は,8月12日,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤)と関連性を否定できない出血性副作用による死亡例5例があったことを公表し,添付文書改訂等を指示しました.

ブログ「厚労省,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での死亡5例公表」(8月13日)ご参照

5名の死亡例があったことと,それを受けて,添付文書が次のとおり改訂されたことは報道されていますので,週刊ダイヤモンド編集部と医学ライター井手ゆきえ氏は十分知っているはずです.

[警告]の項を新たに設け,
本剤の投与により消化管出血等の出血による死亡例が認められている。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。 本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。
と記載されました.
このことは,読者に伝えるべきでしょう.

また,服用患者に対し,鼻出血,歯肉出血,皮下出血,血尿,血便等に注意し,出血があった場合には直ちに医師に連絡するよう,呼びかけるべきでしょう.

今回の記事は,厚労省の対応によりプラザキサの販売が減少しないようにする意図があるのかもしれませんが,危険性について報じることがなく,「出血性の副作用が少ない」などと事実に反する内容になっていますので,さらなる出血死につながる可能性があります.
すみやかに訂正した方がよいと思います

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-22 01:41 | 医療