弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 08月 27日 ( 3 )

『第1回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会』(続き)

委員は,下記のとおりです.

有賀 徹    昭和大学病院 病院長
飯田 修平  練馬総合病院 病院長
岩井 宜子  専修大学法科大学院 教授
印南 一路  慶應義塾大学総合政策学部 教授
遠藤 直幸  山形県山辺町長
岡崎 誠也  高知市長
加藤 良夫  栄法律事務所 弁護士
貝谷 伸    全国健康保険協会 理事
◎里見 進  東北大学病院 病院長
椎名 正樹  健康保険組合連合会 参与
高杉 敬久  日本医師会 常任理事
豊田 郁子  新葛飾病院 セーフティーマネージャー
松月 みどり 日本看護協会 常任理事
宮澤 潤    宮澤潤法律事務所 弁護士
山本 和彦  一橋大学大学院法学研究科 教授
吉川 和夫  東京都 副知事
(五十音順,敬称略,◎座長)

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審議の中で,有賀徹氏,飯田修平氏は,「原因究明・再発防止」はもう十分ではないか,医療はもともと危険なものだ,という趣旨の発言をしていました.(ざっくりしたまとめで,申し訳ないですが.いずれ公開される議事録で確認してください.)

しかし,日本で,現在,医療事故が何件起きているのか,どのような事故が多いのか,など医療事故の実態は調べられていません.また,科学的な原因究明分析もできていません.
事故の原因を究明分析して医療の質を向上させる取り組みは,たしかに部分的には行われてはいますが,決して十分ではありません.
日本の医療事故は,全貌が把握されていない段階であり,いわば氷山の一角が見えている状態です.

医療は危険だからこそ,安全,安心な医療が求められます.
先端的な医療技術の危険に伴う事故もありますが,医療知識不足,医療技術未熟による事故も結構多いように思います.
医療知識,医療技術は,医師によってバラツキが大きく,市民マラソンのようにはるか後方を走っている医師もいて,研鑽研修の必要を強く感じます.大病院の院長は,そのような実感を持ちにくいかもれませんが,これは,医療事故の相談を日常的に受けている弁護士の実感です.
各人の感覚では科学的ではないので,事故事例の収集と原因分析,再発防止が必要と思います.

医療版事故調の法制化が未だ実現していないので,この無過失補償の検討でも,そこが問題になるわけです.

無過失補償制度は,単に紛争化を防止し,医師,病院を守るというものであれば,その経済的負担を担うことになる人たちの合意は得られないでしょう.原因究明分析,再発防止から医療の質の向上がはかられ,患者の安全が確保されるということがあって,はじめて国民的合意がえられると思います.
今後の審議に期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-27 23:55 | 医療事故・医療裁判

夏の終わり

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事務局Hです.
先日,自宅にデパートの通販カタログが届きました.
洋服や服飾小物を見るのが大好きなので,今後の参考に・・・とパラパラと見てみたのですが,
内容は,トレンチコートやブーツ等,すっかり秋冬ものの商品だらけでした.

まだまだ世間は暑く,季節的には夏ですが,いよいよ8月も終わりに近付き,秋がやってくるのだなあと思いましたが,
思い返せば,夏らしいことは何一つしておらず,
夏祭りも浴衣も花火大会も縁日も海も水着も楽しまずに,ただ通勤時間に多少日焼けをしただけで私の夏が終わってしまいそうです.
先日立ち寄ったCDショップ前のワゴンセールで,森山直太朗さんの「夏の終わり」が流れているのを聴いて,今年の夏が終わってしまうことに少し焦りを感じてしまいました.

今日は隅田川の花火大会
仕事後に,夏の最後の思い出作りに見に行こうかとも思いましたが,
結局,帰りの総武線の混雑を思い,花火大会終了の時間を避けて仕事から帰宅しようという結論に落ち着きました.

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by medical-law | 2011-08-27 15:28 | 日常

『第1回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会』

b0206085_1441377.jpg◆ 報道

キャリアブレイン「医師に過失ない医療事故、救済制度創設を検討 厚労省初会合」(平成23年8月26日)は,次のとおり報じています.

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「厚生労働省は26日、医師の過失がない医療事故の患者や遺族に補償金を支払う「無過失補償制度」の創設に向けた検討会の初会合を開いた。医療事故の訴訟は原因究明に時間がかかり、患者だけでなく医師側の負担も大きい。検討会は早期に被害救済し、再発防止に役立つ原因究明できる体制を目指す。

 検討会の冒頭、厚労省の岡本充功政務官は「医療でトラブルが起きた場合、行政として対応する機能が十分備えられているのかという意見がある」と指摘。「患者の救済や医療者の負担をどう軽減できるか考えてほしい」と年度内の取りまとめを求めた。

 委員からは「無過失補償制度は医療者の訴訟対策ではないかという声があるが、事故の原因を究明して再発防止に役立て、安全で質の高い医療を実現することが本来の目的だ」という意見が出た。別の委員は「訴訟では原因が分からず、損害賠償の対象にならない患者や家族が多い」として制度の創設を求めた。

 国内では出産時に新生児に重い脳性まひが起きた場合に計3000万円補償する「産科医療補償制度」がある。検討会はこうした国内外の制度を参考にしながら、補償額の水準や範囲、費用負担のあり方についても議論する。」


◆ 感想

医療裁判では,患者側が過失(注意義務違反)と因果関係と損害を立証してはじめて損害賠償を得ることができます.常識的に考えて賠償を受けるべき事案であっても,立証の壁に阻まれてしまうこともあります.
その意味で,医師に過失がなくても補償する制度は,あった方がよいと思います.

また,原因究明分析は,本来,裁判より,院内院外の事故調査の方が適していると思いますが,事故調査が法制化されると事故調査により医療事故が表面化し,短期的には賠償すべき事案が増えることになりそうなので(長期的には再発防止策により医療事故自体が減少し,賠償すべき事案も減少するでしょう.),紛争化を避けるため無過失賠償制度が必要,という側面もあるようです.

ところで,産科補償制度の目的は次の3点とされています.
1 分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児およびその家族の経済的負担を速やかに補償します.
2 脳性麻痺発症の原因分析を行い、将来の脳性麻痺の発症の防止に資する情報を提供します.
3 これらにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ります.

つまり,目的は単なる補償にとどまりません.事例を集積し,事故原因を究明分析し,再発防止に役立て,紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上につなげることを目的としています.
この産科補償制度ができたことで,未だ決して十分ではありませんが,それなりの機能を果たしつつあります.この制度により,医療の質が向上し,患者の安全が図られ,医療事故が減少することが期待されています.

検討中の無過失補償制度も,産科補償制度にならい,事故原因の究明分析と再発防止を目的とし,紛争の防止・早期解決および医療の質の向上を図るべきと思います.

単に補償額の水準や範囲,費用負担のあり方を検討するだけではなく,制度の根幹をしっかり見据えた設計をしていただきたい,と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-27 01:35 | 医療事故・医療裁判