弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 09月 07日 ( 4 )

市立旭川病院,医療過誤を認め示談(酸素を送るチューブを食道に入れた事案)補足

b0206085_14515466.jpg◆ 或る疑問について

「市立旭川病院,医療過誤を認め示談(酸素を送るチューブを食道に入れた事案)」で,私は「酸素を体内に送るチューブを誤って食道に入れたことは,注意義務違反にあたります.」と書きました.

これに対し,「挿入後の確認を普通行うべきところを怠ったというならそれは別ですが、誤挿入だけで注意義務違反だという人は、準委任契約の基本を理解していないのではないか、弁護士能力として如何なものかと疑います」というツイッターがあったようです.

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医師の義務について,●●する義務,●●しない義務,という表現をすることがありますが,それは医療契約が病気の治癒を約束するものではなく,通常の診療を行うことを約束するものであることと矛盾するものではありません.

このツイッターの方は,おそらく,医師が通常の注意を払っていても誤挿入は避けられない,と考えるのでしょう.
しかし,(あまり考えられないですが奇形で通常気管のある位置に食道があったなどという場合でない限り)医師が通常の注意を払うことで誤挿入は避けられるはずで,避けねばならない,というのが法の立場である,と考えます.いくら気管と食道の位置が近いといっても,医師はその位置関係を十分承知しているはずです.

医師には,挿管に際し,(食道ではなく)気管に正しくチューブを挿入するという注意義務があります。挿管が難しいからと言って,この注意義務がないということにはなりません.
医師がその注意義務に反し誤挿入した場合は,その医師に注意義務違反があると言えます.

◆ 確認について

いったん誤挿入をしたが,ただちに誤りに気づいて,気管に正しく挿入し,何らの問題が生じなかった,という場合は,医療過誤として責任を問われることはありません.この場合,結果(損害)が発生していないからです.

次に,医師Aが誤挿入をし,医師Bが誤挿入にただちに気づかず気管に正しく挿入し直したが,結果(損害)が生じたという場合を考えてみましょう.

挿管しても,呼吸状態が改善しないという場合,複数の原因が考えられます.誤挿入の可能性も考えねばならないでしょうが,まさか誤挿入しているとはすぐに思えない場合もありますし,挿管やり直しにもある程度の時間がかかります.
誤挿入に気づくまでの時間,挿管やり直しにかかった時間がそれぞれ合理的なものであれば,医師Bに注意義務違反はありません.
この場合,医師Aの誤挿入が結果と因果関係のある注意義務違反となります.

これに対し,医師Bにも注意義務違反が認められる場合は,「医師Aの注意義務違反と結果との因果関係」,「医師Bの注意義務違反と結果との因果関係」がそれぞれ具体的事案に即して問題になります.

◆ 私見

ただ,何れにしても,「挿管後に呼吸状態が改善しないときは誤挿入の可能性も含めて確認行為が行われ,誤挿入しても,確認行為後に正しく挿入され直されるから誤挿入自体は注意義務違反ではない」という主張があるとすれば,その主張は謬論でしょう.

また,診療契約は準委任契約で,結果を約するものではないから,誤挿入しない,という注意義務がない,という主張があるとすれば,これも謬論でしょう.
チューブを挿入するとき注意して正しい場所に入れるという義務があるはずです.気管内挿管で,注意してチューブを気管に入れる注意義務がないとは,私には到底考えられません.

【追記】

福岡地裁平成11年7月20日判決は,新生児の誤挿管(食道挿管)の事案で,麻酔科医師には気管内挿管を的確に行う注意義務があること,産科医師には挿管後に肺の酸素化ができていることを確認する義務があること,をそれぞれ認めています.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-07 14:37 | 医療事故・医療裁判

アナウンサーの秋元優里さん,深頸部膿瘍のニュース

b0206085_127996.jpgアナウンサーの秋元優里さんが「深頸部膿瘍」(深頚部膿瘍)のため手術を行った,と報道されています.
サンスポ「フジ秋元アナ、のど切開していた…復帰未定」,日刊スポーツ「フジ秋元優里アナ、入院していた」)

「深頸部膿瘍」という病気を初めて聞かれる方も多いかもしれません.

「深頸部膿瘍」は, 虫歯,扁桃炎などから感染が広がり,頸の深い部分にある結合組織のすきまに,膿瘍が形成されたものです.
感染症ですので,抗菌薬を投与し,切開して排膿します.
感染が広がると,排膿すべき範囲も広がり大変になりますので,早期治療が必要です.

患者は,初期症状(喉や口腔内の痛み,痛みを伴う頸部の腫脹や発熱)で,受診することが重要です.
声が出にくいというのも症状の1つです.

急性喉頭外炎,骨髄炎,鼻中隔膿瘍などと同じく,このような感染症は早急な治療が必要な疾患なので,診察に際し念頭におくことが重要です.見逃した場合,医療過誤となる可能性もあります.

秋元優里さんの場合は,幸い適切な治療を受け,回復が見込まれているようです.

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by medical-law | 2011-09-07 11:18 | 医療

マタニティー・ヨガ

b0206085_9303194.jpg事務局Iです.
妊娠4ヶ月頃から,ウォーキングをしていたのですが,梅雨の長雨に引き続く猛暑で途切れがちになってしまい,さらには結婚式が終わったという気の緩みで,また体重管理が難しくなってきたので,ウォーキングと同時期にはじめた,マタニティ-・ヨガの方に力を入れることにしました。

呼吸を整えて,ゆっくり姿勢を正し,無理のないところまでポーズをとっていくので,まったく苦痛はないのですが,たった10分ほどのヨガでも運動になっているようで,体が軟らかくなり,筋力がつくのか姿勢がよくなります。

肝心の体重は…目覚ましいほどの変化は,残念ながら今のところないのですが,急激な増量は避けられるようになったようです。

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by medical-law | 2011-09-07 09:28 | 日常

「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会第2回」

b0206085_9124873.jpg9月6日の「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会第2回」では,次のような意見が述べられました.

中村祐輔委員(東京大医科学研究所教授)は,「がんの病期の違いなどで議論を切り分けるべき」との考えを示しました.

森嶌昭夫座長(名古屋大名誉教授)も,「進行がんの場合とそうでない場合で,考え方を変えなければいけない」などと同意しました.

檀和夫委員(日本医科大病態制御腫瘍内科学分野大学院教授)は,抗がん剤の副作用被害救済制度について「方向性としてはあった方がいい」としながらも,適正か否かを判断できるようなものではないとして,委縮医療を招く可能性への懸念を示しました.

齊藤誠委員(一橋大大学院経済学研究科教授)は,抗がん剤を副作用被害救済の対象とすることに慎重な意見を述べました.

キャリアブレイン「抗がん剤健康被害救済でヒアリング実施へ- 厚労省検討会」(平成23年9月6日)ご参照

前途は多難です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-07 02:10 | 医療