弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 09月 17日 ( 1 )

東京医科大学病院の中心静脈ラインのカテーテル誤挿入事件,東京高裁で和解成立

b0206085_4362380.jpg東京医科大学病院では,平成15年に,患者(女性,51歳)が中心静脈(CV)ラインのカテーテルを誤挿入され意識不明となる事故がおき,患者は平成17年に死亡しました。その事故の損害賠償を求めた裁判が,東京高裁で平成23年7月22日に和解で終了していたことが報じられています.

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◆ 報道

msn産経「東京医科大側が和解金支払い 東京高裁で和解成立 医療事故訴訟」(平成23年9月17日)は,次のとおり報じています.

「東京医科大病院(新宿区)で平成15年、当時51歳の女性患者が点滴用カテーテルを誤挿入され死亡した事故をめぐり、女性の遺族らが学校法人東京医科大に約1億円の損害賠償を求めた訴訟は、東京高裁で和解が成立していたことが16日、関係者の話で分かった。成立は7月22日付。

 関係者によると、大学側が遺族に和解金を支払うことなどが条件という。金額は明らかにしていない。

 女性は、15年7月、直腸がんの手術を受けるために入院。手術自体は成功したが、栄養剤などを点滴するために首から挿入したカテーテルが誤って血管外に入り、胸腔内に点滴液が貯留。脳に十分な酸素が供給されず意識不明となり、17年4月に死亡した。

 21年10月の1審東京地裁は、「レントゲン写真でも、カテーテルが適切な位置に挿入されているように読み取れ、確認を怠ったとはいえない」として、病院側の過失を否定し、請求を棄却。遺族側が控訴していた。

 事故をめぐっては、同病院の麻酔医ら2人が業務上過失致死容疑で書類送検され、東京地検が不起訴としたが、東京第1検察審査会が不起訴不当と議決。その後、東京地検が再び嫌疑不十分で不起訴とした。

 事故から約8年を経ての訴訟終結に、女性の夫(66)は「病院という組織に個人が挑むというのは、非常に厳しい戦いだった」と話した。東京医科大は「引き続き安全管理に関し、全学を挙げて全力で取り組んでいきます」とコメントしている。」


◆ 感想

東京地裁の判決は,患者側にとって納得できる内容ではありません.医療事件は和解による解決に適する類型の事件です.判決となれば法的に検討すべき点はありますが,裁判上の和解は,本件の解決としてきわめて適切と思います.

この平成15年の事故後,東京医科大学病院では,中心静脈ラインセンターが設置され,CVライン認定医を含めた2名以上の医師の立ち会いで挿入を行うことになりました.「安全なCVライン挿入のガイドライン」が定められ,挿入は透視下,エコー下で行うことなどが決められました.それにより中心静脈ラインの事故は飛躍的に減少しました.
合併症の中には,「避けられる合併症」と「避けられない合併症」がありますが,中心静脈ラインの事故の多くは「避けられる合併症」だったのです.

ご遺族の闘いが,事故の再発防止につながり,患者の安全と医療の向上に有用・有意義だったことは,明らかです.

また,この事故から東京医科大学病院の問題が浮かび上がり,さらに心臓外科手術問題も明るみにでました.その教訓から,東京医科大学病院では,平成17年から全手術症例のビデオ保存・全死亡症例のレビュー・医療安全の院内巡視が行われるようになりました.
大学病院を変えるには,患者側からの厳しい声が必要だったと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-09-17 04:08 | 医療事故・医療裁判