弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 10月 02日 ( 3 )

第2回「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」

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「2011年8月26日 第1回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」の議事録が厚労省のサイトにアップされています.

9月30日の第2回は,諸外国の無過失補償制度などについて説明と,飯田修平氏・加藤良夫氏・高杉敬久氏からのヒアリングがありました.

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◆ 飯田修平氏(練馬総合病院長)

「事故の再発防止・原因究明」と「責任追及」は分けて考えるべきだと強調しました.

◆ 加藤良夫氏(栄法律事務所弁護士)

「無過失補償制度」と「医療事故調査制度」を車の両輪として共に構築していく必要性を指摘しました.
基礎的なデータとなる医療事故の件数や事故による死亡者数がきちんと把握されていないとして,報告制度の確立を求めました.

◆ 高杉敬久氏(日本医師会常任理事)

日医内の委員会が取りまとめた医療事故調査制度の創設に関する提言を紹介しました.
すべての医療機関に院内の事故調査委員会を設置することや,医療界・医学会が一体的に組織・運営する「第三者的機関」で調査を実施することなどを提案しました.

◆ 医療事故件数・死亡者数の実数の把握

宮澤潤氏(宮澤潤法律事務所弁護士)は,医療事故件数・死亡者数の実数の把握や,保険会社による支払い
の年間総額などの確認が,無過失補償制度を設計する上で非常に重要になる,と述べました.
椎名正樹氏(健康保険組合連合会参与)も,集められるだけの情報を集めて提示してほしい,と要望しました.
厚労省の宮本哲也医療安全推進室長は,次回以降の会合で関連する統計資料を示す,と述べました.

◆ 医療事故と刑事責任

宮澤潤氏は,刑罰によって抑制できるケースは、「悪いことをしているという意識があるのが前提」とした上で,医療事故で刑事責任を問うのが適切かどうかは今後の問題になるとの考えを述べました.

里見座長は,刑罰に医療はそぐわないとの意見が大きくなりつつあるように思う,と述べました.

加藤氏は,非常に悪質なケースもある,何が何でも一切刑事免責というのは国民は賛同しないと思う,と述べました.

キャリアブレイン「医療事故の件数など正確に把握を- 厚労省・無過失補償制度のあり方検討会」ご参照

◆ 感想

死亡例,重度の障がい例が対象となるでしょうが,件数がわからないとどれくらいの金額になるのかわからないと,制度設計ができません.医療事故のデータが必要です.

医療事故と刑事責任は,医療従事者の意識と一般国民の意識が大きく乖離している論点です.一般的に,医療事故について医療に素人の司法が介入することが不適切である,という趣旨の考えを述べる医師がいる反面,相談者の中には,何が何でも医師を刑事告訴してほしい,という方もいます.

私は,何が何でも刑事処罰とは思いませんし,刑事処罰の謙抑性を十分勘案してほしいと思いますが,例えば,不要な治療や検査を繰り返し診療報酬の不正請求を繰り返した医師,自院に看護師に手術を承諾させ不要・不適切な手術と処置により患者(看護師)を死亡させた医師,単に面倒くさいといった理由から手術前の手洗いを怠ったり,経費を惜しんで取り換え式の刃を使い回したりした医師について,刑事免責が相当である,という意見は国民の支持を得られないと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-02 16:24 | 医療事故・医療裁判

毎日新聞社説,「たばこ税 健康のために禁煙策を」

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10月2日の毎日新聞社説は,小宮山厚労相の持論は「税収のためではなく健康を守るために」だったが、安住淳財務相が「(税の)所管は私だ」とかみつき,日本たばこ産業(JT)も「販売数量が減少し税収増に結びつかない」と反論し,「1箱700円」という数字に関心が集まり、健康問題に焦点が当たらなくなったことを指摘しています.
健康問題の観点から,タバコ対策の推進を提唱しています.正論です.

「英医学誌「ランセット」は9月、健康長寿社会を達成した日本の保健医療に関する論文を集めた特集号を発行した。戦後の感染症対策や健康診断の普及、減塩指導の徹底などを高く評価する一方で、今後の危険要因として「喫煙」を筆頭に挙げた。若年男性の喫煙率は約50%と高く、女性の間にも広まっていること、健康増進法(03年)で公共の場での喫煙や受動喫煙の予防が進められているが自治体間に差があることなどを指摘する。「全成人が禁煙すれば平均寿命は男性が1.8年、女性が0.6年延びる」との推定を示した。

 たばこによる健康被害の研究報告はこれまでにも多数ある。喫煙習慣のある男性は非喫煙者に比べて肺がんによる死亡率が4.5倍、その他のがんや心筋梗塞(こうそく)、狭心症による死亡率も高い。自分は吸わなくても、他人のたばこの煙を吸ってしまう「受動喫煙」による被害、胎児の発育に悪影響を及ぼし低体重児が生まれるなどの研究結果もある。やはり、国民の健康を守るためにこそ禁煙や受動喫煙の予防が必要なのだ。

 職場などで分煙を進めるための規制強化、医療や保健の専門機関による禁煙指導、未成年者への販売禁止などを徹底する必要がある。そうした対策の一つとして、たばこ増税の有効性についても評価されるべきなのである。「ランセット」は日本のたばこの小売価格(08年当時)が「高所得国の平均よりかなり低い」として、値上げによる消費抑制策を促す必要があると強調している。

 高齢化による医療や介護費用の自然増は避けられないが、高齢になった人が健康で暮らすことができれば国民負担は相対的に軽減される。」


谷直樹
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by medical-law | 2011-10-02 15:06 | タバコ

神戸市立医療センター中央市民病院,事故調査委員会報告(酸素と二酸化炭素の取り違え事故)

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神戸市立医療センター中央市民病院のサイトに「CO2誤換気に関する事故調査委員会からの報告について」がアップされました.

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◆ 事案

神戸市立医療センター中央市民病院で,80代の男性が,腹部大動脈瘤切迫破裂のため,平成23年7月13日夜から14日未明にかけて緊急手術を受けました.
術後,集中治療室に運ぶ際,麻酔科医と看護師が二酸化炭素ボンベを酸素ボンベと取り違え,手動の人工呼吸器に数分間接続しました.その3分後に心停止となり,蘇生措置で自力呼吸が戻りましたが,20日に再び心停止となり心肺補助装置を外せない重篤な状態となりました.
現在は,重篤な状態を脱し会話ができる状態で,快方に向かっているとのことです.

◆ 事故調査報告書

病院外部の識者を含む事故調査委員会は,報告書をまとめ,9月30日に会見を開きました.

「病院の事故調査委員会は30日夜、会見を開き、そもそも手術室に酸素ボンベが準備されておらず、代わりに事故10日前に病院が移転したばかりで保管場所が決まっていなかった二酸化炭素ボンベがあったということです。
 そして、看護師が二酸化炭素ボンベを酸素ボンベと間違って医師らに示すなど、初歩的なミスが重なったことが事故の原因と報告しました。」

(MBS毎日放送「神戸市民病院医療事故「初歩的ミス重なった」」(2011日10月1日))

「委員会は、事故の背景について「新病棟への移転直後で職員に変更点を徹底していなかった」と指摘。再発防止策として、ボンベを使わずに壁面に設置した配管から直接、二酸化炭素を供給する「中央配管」の活用などを提案した。」
(msn産経「安全管理不備が原因 市民病院医療ミス調査 神戸」(2011日10月1日)

◆ 感想

医療事故には,病院に責任のあるものとないものがありますが,どちらにしても医療事故の原因究明,再発防止は,患者の安全と医療の向上のために必要です.

ミスを単にその医療従事者個人のせいにして一件落着としていては,医療事故はなくなりません.
単純ミスでも,必ず原因,背景があり,再発防止策はあるのです.

病院外部の委員を含む事故調査委員会による事故調査によって,このように医療事故の原因究明,背景事情解明がなされ,さらに再発防止策の提案までなされるのですから,多少の費用がかかっても,費用以上に得るものは大きいと思います.

医療版事故調の法制化が必要ですし,今の段階でも各病院で事故調査委員会設置に積極的に取り組んでほしいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-02 02:05 | 医療事故・医療裁判