弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 10月 07日 ( 2 )

日弁連,第54回人権擁護大会シンポジウムの感想

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◆ 第54回人権擁護大会シンポジウム第3分科会

第54回人権擁護大会シンポジウム第3分科会 「患者の権利法の制定を求めて いのちと人減の尊厳を守る医療のために」に参加するため,高松に行ってきました.
弁護士の人数が増えているのに,人権擁護大会の参加数が増えていないのは,残念です.
第3分科会は500人近い参加がありましたが,弁護士人口が3万人を超えていることを考えると,少ないと思います.

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ハンセン病の元患者たちは,淡々とした口調で,人権蹂躙のハンセン病政策が続けられてきた事実を述べまていました.
大分の 德田靖之先生の報告は,善意からハンセン病療養所の待遇改善をはかり結果として隔離政策を助長固定することになった例をあげ,「救う」という発想の危険性を説く内容で,心に響きました.

医師の方々のお話は,それぞれ理解を深めるために有用な内容でした.
田中恭子先生(順天堂大学医学部小児科准教授/子ども療養支援協会事務局長)は,3歳に子どもにも説明すべきと述べました.
沢田貴志先生(港町診療所所長)は,神奈川県の例を引いて,外国人の医療を保障するシステムが必要なことと可能なことを述べました.
大原昌樹先生(綾川町国民健康保険陶病院院長)は,地域医療を守ることにつき具体的に述べました.

伊藤たてお氏(日本難病・疾病団体協議会代表理事)の敢えて脱線して述べられたお話は,強く印象に残りました.倫理委員会が多様なメンバーで構成されているので機能している,若者を引き込む,地域が医師を支える,など.
福山美音子氏(患者の権利オンブズマン)は,患者の苦情を医療者が解決するために間に入って活動していることを話しました.

◆ 疑問

しかし,それらは,「患者の権利法の制定を求めて」というテーマに集約されるべきものだったのでしょうか.

私には何度も何度も聞いたテーマで,2011年にまだ「患者の権利法の制定を求めて」なんですか?,という感想をもちました.
私が小学生の頃,クラスで3週続けて「廊下を走らない」という目標を決めたところ,先生が怒ったことがあります.そのことを思い出しました.

◆ 「患者の権利法」から「医療基本法」へ

「患者の権利」だけを言うと,患者が権利を振りかざして医療者と対立する,という誤解を招きます.
そもそも,「患者の権利」を保障するだけではなく,「医療者の権利」を保障することも必要です.
さらに国,地方自治体,企業の役割等も含めて,広く医療政策の基本を定める「医療基本法」こそ,今の課題です.

シリーズものの映画の最新作が公開されるとき,記憶喚起の意味でしょうか,テレビで旧作を放映することがよくあります.医療事件,医療政策に継続的にかかわってきた弁護士は少数ですから,多くの弁護士にとって今回のシンポジウムは旧作放映程度の意味はあったでしょう.

最新作にあたるものは,10月22日の患者の権利法をつくる会設立20周年記念シンポジウム「みんなの医療基本法」です.
是非,ご参加を!

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-07 23:42 | 弁護士会

全国医師ユニオン,過重労働是正を求める

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◆ 報道

毎日新聞「全国医師ユニオン:厚労省に勤務医の過重労働是正求める」(2011年10月6日)は,次のとおり報じています.

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「昨年1年間に全国の医療保健事業者(病院や福祉施設など)を労働基準監督署が調査した1893件のうち、労働基準法違反で是正を勧告したケースが1440件(違反率76.1%)に上り、全事業者の違反率66.7%を10ポイント近く上回っていることが、厚生労働省のまとめで分かった。勤務医が過重労働を強いられるケースも多いとみられ、勤務医の労働条件改善に取り組む全国医師ユニオン(植山直人代表)らは6日、病院を指導するよう同省に要請した。

 同省によると、医療保健事業者の違反率は09年も82.4%。同ユニオンは「月80時間を超す時間外労働は過労死の危険があることを医療機関に周知徹底すること」など15項目を要請。植山代表は「当直の時間外労働を労働時間に含めないなど医療機関で公然と行われている違法行為を改めないと、過労死や医療ミスを防げない」と訴えた。【井上英介】」


◆ 感想

日本では,医療費抑制のために医師数抑制政策がとられ,医師聖職論に基づく医師の頑張り(過剰労働)が医師不足を補完していました.小泉改革により,それが限界に達し医療崩壊が始まりました。
なお,患者の安全を確保するための医師の注意義務は,医療現場の実情を理由に引き下げることのできるものではありません.注意義務の引き下げは,問題解決を先送りするだけにすぎません.

医師ユニオンは,働く人間としての医師の権利を守るための組合です.
EUの医師並の労働時間を最終的な目標としています.
当面の目標を,過労死を引き起こす過剰労働(過労死との関連性が強いとされる月80時間以上の時間外労働)と不払い賃金の是正へ向けた改善においています.

「医療に人権を!」というとき,当然,働く人間(労働者)としての医師の人権も含まれます.
医師不足の根本を解決せずに,医師微増ですまそうとする動きは,勤務医に過酷な過剰労働を強いるものです.
医療費抑制政策・医師数抑制政策を転換すべき時期にきています.
医療機関における労働基準法違反,勤務医への賃金不払いの常態化は,人権侵害であり,本来許されることではない筈です.
医師の人権が守られることが,患者の安全と医療の向上につながります.
全国医師ユニオンのみなさん,頑張ってください.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-07 22:26 | 医療