弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 10月 09日 ( 3 )

日本老年医学会,セルフメディケーション推進に反対

b0206085_1456577.jpgセルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」です.医療保険費の抑制になります.
医療用医薬品の成分を,一般用医薬品として販売できるようになると,医師の処方箋なしで簡単に購入でき,セルフメディケーション推進に役立つことになります.
しかも,医療用医薬品の成分は,効きがよいものがあるので,一般用医薬品として販売すると売れ行きがよいことが期待されます.

反面,医療用医薬品の成分は,副作用の危険もあり,使用上の注意がいっそう必要となります.

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日本薬学会は,一般用医薬品への転換が可能として10の候補をあげ,厚労省は,これについて関係各学会の意見を求めていました.

そのうちの1つ日本老年医学会は,高齢者が副作用の影響を受けやすいこと,また薬局で症状や併用薬を伝えること自体が難しいことなどから,セルフメディケーションの推進に反対を表明し,候補8成分の一般用医薬品化に反対しました.

キャリアブレイン「セルフメディケーション推進に反対- 日本老年医学会」(2011年10月7日)ご参照

セルフメディケーションは高齢者の受診抑制,医療保険費抑制にはなりますが,軽度な身体の不調が重大な疾患の初期症状であることも考えられますし,高齢者に,自分の判断で適切な薬を購入し自分で手当てすることを求めるのは,無理があるでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-09 14:44 | 医療

あおぞら銀行,「TPPに潜む危険性」で国民皆保険の崩壊,医療格差の拡大につながるおそれを指摘

b0206085_113106.jpg銀行までがTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の危険性を指摘するレポートをだしたことで,話題になっています.

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あおぞら銀行金融法人部門は,TPPは農業と自動車に代表される輸出産業の構図で語られることが多いが,「アメリカの立場からすると、むしろ残り22の項目、すなわち物品貿易以外の項目=サービス貿易のほうが主な「関心事」なのである。端的に言ってしまえば、アメリカはTPPで日本の「非関税障壁」を撤廃させ、日本のサービス市場の開放を迫ることで自国の雇用を改善したいのである。」と分析します.

そして,「開放を迫られるサービス市場の代表格は「医療」であろう。」と述べます.

「TPP ⇒ 混合診療(保険診療と保険外診療の併用),営利法人の医療分野への参入の解禁 ⇒ 市場原理が過度に医療業界にもたらされる ⇒ 国民皆保険の崩壊,医療格差の拡大」のおそれを指摘します.
メリット以上にデメリットが多く想定されるとし,TPPに乗るな,としています.

あおぞら銀行「TPPに潜む危険性」ご参照

公共的な仕事である医療に,アメリカ的な競争原理をもちこむと,国民皆保険が崩壊し,がん保険のような医療保険に頼らざるをえなくなり,富裕層しか適切な医療を受けられないことになるでしょう(医療格差拡大).
あおぞら銀行の「TPPに潜む危険性」は,正論です.

野田首相は,11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で,環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を表明する意向を固めたそうです.
医療界からも反対の声を大きくする必要があります.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-09 11:26 | 医療

大分赤十字病院,人工呼吸器のスタンバイモード解除したつもり事故か?

b0206085_542977.jpg

◆ 報道

大分放送「病院で人工呼吸器正常に作動せず患者が死亡」(2011年10月8日)は,次のとおり報じました.

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「8日午前大分市の病院で入院中の女性患者の人工呼吸器が正常に作動していないことに巡回中の看護師が気づき、女性はまもなく死亡しました。
8日午前8時半ごろ大分市の大分赤十字病院で42歳の入院患者の女性の人工呼吸器が正常に作動していないことに看護師が気づきました。
女性はその後容態が急変しおよそ1時間後に死亡しました。
病院によりますと看護師が女性患者のたんを吸引する際人工呼吸器を、酸素が送られない「スタンバイモード」に変えその後ナースコールが鳴ったため別の病室に行ったということです。
その8分後巡回中の別の看護師が女性患者の人工呼吸器が正常に作動してないことに気づき確認したところ「スタンバイモード」が解除されておらず、酸素は送られていなかったということです。
たんを吸引していた看護師は「スタンバイモードは解除してから別の病室に行った」と話していて、警察は業務上過失致死の疑いもあるとみて当時の詳しい状況を捜査しています。」


◆ 感想

本件で,たんの吸引を行った看護師は,スタンバイモードを解除してから別の病室に行った,と話していますが,スタンバイモードを解除し胸郭の動きに基づいて換気を確認してからアラームの鳴った別室に行くべきです.

看護師が胸郭の動きに基づいて確認していたら,本件事故の原因は,スタンバイモードの解除忘れではない,と言えるでしょうが,もし,胸郭の動きに基づく確認を行っていないのであれば「解除したつもり」の事故とみるべきでしょう.

財団法人日本医療機能評価機構は,2009年12月に,医療安全情報No.37:[[スタンバイ]にした人工呼吸器の開始忘れ]で,「「スタンバイ」のまま患者に人工呼吸器を装着したため、換気されなかった事例が4件報告されています(集計期間:2006年1月1日~2009年10月30日」と報告しました.
対策として,「人工呼吸器を装着する際、換気が行われていることを胸郭の動きに基づいて確認する」ことを提案しました.
今回のケースでは,この提案が活かされいなかった可能性があると思います.

たんの吸引は,医師,看護師以外でも行えるようになりますが,必ず胸郭の動きに基づいて換気を確認するよう御願します.

また,体位変換のときも,同様スタンバイモードの解除忘れの危険があり,換気が行われていることを胸郭の動きに基づいて確認することが必要です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-09 04:59 | 医療事故・医療裁判