弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 10月 16日 ( 2 )

日弁連業務改革委員会の「専門分野登録弁護士制度」への疑問

b0206085_10191995.jpg横浜中華街のローズホテルでの「第33回医療問題弁護団・研究会全国交流集会」に参加し,昨日『専門分野登録弁護士制度と医療事故事件』についての議論を聞かせていただきました。

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◆ 業務改革委員会の提案

日弁連の業務改革委員会は,専門分野登録弁護士制度を提案しています.
韓国の30分野も視野において,最初の段階では①離婚・親権,②相続・遺言,③交通事故,④医療事故,⑤労働事件の5分野について,3年以上の実務経験と一定の処理件数と一定時間の専門研修の受講を要件にして,専門弁護士制度をはじめよう,としています。

業務改革委員会によれば,どの弁護士に依頼すれば良いのか判らない人々が適任の弁護士を容易に探せるようにとの趣旨で,専門弁護士制度をつくるとのことですが,他方で,「一般国民に対して当該弁護士の具体的な能力を担保したり,保証したりするものではありません」と述べています.

◆ その問題点

どの弁護士に依頼すれば良いのか判らない人々が,「専門弁護士」という表示を見たとき,
“取り扱い事件を限定し,その分野の事件だけを取り扱う弁護士”,
“その分野について専門的な能力を備えた弁護士”
と期待して,相談,依頼するのは当然です.

ところが,業務改革委員会がつくろうとしている制度は,“取り扱い事件を限定し,その分野の事件だけを取り扱う弁護士”でも,“その分野について専門的な能力を備えた弁護士”でもありません.
羊頭狗肉の「専門弁護士」です.
これなら,“3年以上の実務経験と一定の処理件数と一定時間の専門研修の受講した弁護士です”と表示すればよいではないですか.
消費者保護の観点から,「専門弁護士」という言葉を使うべきではない,と思います.

◆ 専門弁護士登録制度の問題点

業務改革委員会は,「医療事件専門弁護士登録制度」を上記の要件でつくり,いずれ質の担保も考えて「医療事件専門弁護士認定制度」をつくろうとのことです.

「医療事件専門弁護士登録制度」は,ユーザーに誤解を与えることになると思います.
「医療事件専門弁護士登録制度」は,名称が長くなりますが「具体的な能力を担保・保証しない,3年以上の実務経験と一定の処理件数と一定時間の専門研修の受講した医療事件を扱う弁護士を登録した制度」(略称;「能力を保証しない医療弁護士登録制度」)としたほうがよいでしょう.

◆ ユーザーにとって必要な専門弁護士制度とは

本当にユーザーにとって必要なのは,その弁護士の具体的な能力を判断できる専門弁護士制度です.
認定制度にすると,認定者に認定責任が生じます.免責条項を表示しても,クレームが生じるでしょう.それが認定制度の実現を妨げているように思います.

本気でユーザーのことを考えるなら,評価,試験のある制度は必須と思います.

専門を名乗るためには,毎年,依頼者の評価,裁判官の評価,弁護士会の試験を受けることを要件とし,依頼者がつけた評価(得点),裁判官がつけた評価(得点),試験の得点をそれぞれ公開するのがよいと思います.
得点順位が上位の弁護士に事件が集中することが考えられますが,1人の弁護士が受任できる件数には限りがありますから,中位の弁護士にも依頼が集中するでしょう.下位の弁護士は,努力し上を目指すことになるでしょう.
ユーザーは,依頼者の評価が高い弁護士を選ぶか,裁判官の評価の高い弁護士を選ぶか,試験の成績のよい弁護士を選ぶかは,それぞれの自己判断,自己責任となります.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-16 10:04 | 弁護士会

千葉地裁平成23年10月14日判決(千葉市立青葉病院の熱湯死亡事件)

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◆ 事案

千葉市立青葉病院に手術のために入院していた歩行困難な患者(79歳,女性)は,平成20年11月6日に看護師の指示を受け1人で初めて入浴しました.
看護師が「何かあったらナースコールを押すこと」と言っただけで,熱い湯が出ることや蛇口の使用方法を説明しませんでした.
看護師は,約40分後、,約55度の湯が出続けている浴槽内で患者が倒れているのを発見しました.
患者は全身やけどで翌日死亡しました.

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◆ 判決

千葉地裁は、平成23年10月14日,患者は足が悪く,事故の危険性が大きかったことから,注意義務違反を認定し,約1925万円の支払いを命じました.

毎日新聞「損賠訴訟:千葉市に賠償命令 市立病院入院中、熱湯で死亡--地裁判決 /千葉」(2011年10月15日)ご参照

◆ 感想

入浴中の事故は死亡につながることが多く,入院患者は,疾患や障がいがありますので,入浴に際し安全に配慮しなければなりません.
そこまで説明しないといけないのか,と思う方がいるかもしれませんが,79歳の歩行困難な患者には,熱い湯が出ることや蛇口の使用方法を説明しないと注意義務違反となる,ということなのです.
私の自宅の浴室ですと指定した適温のお湯がでるので,また指定温度が表示されるので,よいのですが,ホテルなどでは温度が表示されないため加減が難しかったりします.
バルブ(ハンドル)が2つで蛇口が1つの場合,高齢者には,2つのバルブ(ハンドル)を加減して適温にするのが難しいことがあると思います.とくに歩行困難な患者では,バスから出ることができないので危険です.「何かあったらナースコールを押すこと」というだけでは,十分ではありません.

なお,死亡慰謝料は年齢にかかわらず2000万円以上が適切と考えます(昨日の研究会の報告者も同じ考えでした.)が,本件はどのような根拠で約1925万円としたのか,判決文が最高裁のサイトなどに掲載されたら読んでみたいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-16 02:06 | 医療事故・医療裁判