弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 10月 26日 ( 4 )

第3回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会

b0206085_891194.jpg厚生労働省は,平成23年10月24日、「第3回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」を開きました.

配付資料は,厚労省のサイトで公開されています.
とくに,資料4,資料5は,読んでいただきたいと思います.
資料4 患者会のこれまでの活動について(豊田構成員提出資料)
資料5 無過失補償制度で医療裁判はなくなるのか~被害者・原告の思いを知ってほしい~(勝村参考人提出資料)

豊田郁子氏は,「患者・家族・遺族が一番に望むのは原因究明と再発防止。経済的補償だけでは救済されない」と強調した,とのことです.

勝村久司氏は,自身が医療裁判で原告だったことを踏まえ,「被害者が裁判に追い込まれるのは、事実のごまかしや隠ぺいがあるため」との考えを示した,とのことです.

キャリアブレイン「医療事故・裁判を経験した遺族から意見聴取- 厚労省・無過失補償制度のあり方検討会」(平成23年10月24日)ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-26 18:41 | 医療

群馬大学医学部付属病院,患者11人の個人情報記載書類を紛失

b0206085_1949528.jpg「今月12日午後、医師が別棟にある研究室に歩いて向かった際、左脇に挟んでいた書類入りのクリアファイルがなくなっていることに気付いた。すぐに立ち寄り先や経路などを調べたが、現在まで見つからないという。

 書類は、以前入院していた患者のデータを医師が抽出し作成したもので、氏名、年齢、入院期間、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像化装置)の撮影日が記載されていた。」


毎日新聞「個人情報:患者11人の個人情報記載書類を紛失--群大病院女性医師 /群馬」(平成23年10月26日)ご参照

研究棟は病院のすぐ裏ですので,気が緩んだのでしょうが,
個人情報の取扱いには,十分気をつけてほしいです.
病院内か病院敷地内で落としたであろうクリアーファイルが見つからないんですね.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-26 18:03 | 医療

松戸市立病院,多剤耐性緑膿菌に院内感染していた患者3人死亡

b0206085_19373292.jpg松戸市立病院は,9月5日にICUで治療中の68歳の男性から多剤耐性緑膿菌が見つかり,その後約1か月の間に79歳の男性,58歳の男性が相次いで感染し,死亡しました.
渋谷正徳副院長は「いずれも重篤な患者で,2人の直接の死因は肺炎,もう1人は肝・腎臓の不全と考えられる」とのことで,感染と死亡との因果関係は低いとしました.

3人目の男性は,院内感染が分かった3日後の9月16日にICUに入って感染しています.
診療に使った手袋を患者ごとに取り換えるなどしていたが、「患者と直接接触しない外部スタッフには徹底されていなかったことが考えられる」とのことです.
さらに,古い流し場など現在の病院は衛生面にも問題がある,と指摘する病院関係者もいるとのことです.

msn産経 「対策に甘さ? 老朽化指摘も 松戸市立病院の院内感染」(平成23年10月25日)ご参照

多剤耐性緑膿菌(MDRP)感染は,先日,新潟県立新発田病院でもありました.
多剤耐性緑膿菌に対する監視と対策の強化が必要です.
松戸市民病院は,建て替えか移転かでゆれていますが,衛生面はしっかりしてほしいです.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-26 16:06 | 医療事故・医療裁判

最高裁平成23年10月25日判決(混合診療禁止合憲)

b0206085_7315747.jpg

最高裁で,混合診療禁止合憲の判断がでて,よかったと思います.

日本は,すべての国民が公平・平等に良い医療を受ける環境を保障するために国民皆保険の制度を設けています.
混合診療を認めると,自由診療(ビジネス医療サービス)を広げる力が働き,保険医療が崩壊し,アメリカのように,経済的弱者は十分な医療を受けられないことになります.

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◆ 事案

上告人は,或る施設で,研究としてのLAK療法(患者の血液から分離したリンパ球を増殖・活性化し,患者の体内に戻すことによって,がん細胞を攻撃しようという治療法.活性化自己リンパ球移入療法と称される免疫療法の一種)を,無料で受けていました.

その後,研究としての所定の手続き・報告がなく,一部の患者から実費として金員を研究者個人の口座に振り込ませていたことが発覚し,研究としてのLAK療法は終了となりました.
治療としてのLAK療法は,その施設では混合診療にあたるので,受けられません.

特定承認保険医療機関である県内の大学病院を受診すれば,混合診療にあたらず,LAK療法を受けることができたのですが,上告人は,県内の大学病院を受診することなく,その施設でLAK療法を受ける権利を主張し,訴訟を起こしました.

◆ 判決

ひと言で言えば,1審判決は,観念的な論理で,違憲としました.
控訴審判決は,「保険外併用療養費制度」があることから,生存権侵害にあたらない,などとしました.
上告審は,混合診療を全額自己負担とする解釈は健康保険法全体の整合性の観点から相当とし,控訴審判決を支持しました.⇒判決全文はこちら

◆ 感想

或る程度の有効性と安全性が見込めると判断される医療については,特定承認保険医療機関の「保険外併用療養費制度」があります.これは,保険相当分を「特定療養費」として保険から給付する制度で,混合診療を限定的に認めたものです.

保険適用のない先端的医療は,認可を受けた特定承認保険医療機関で定められた手順で行うことで安全性が担保されます.また,その特定承認保険医療機関に症例が集積され,有効性等が判断されます.普及性,有効性,効率性,安全性,技術的成熟度の実績を見つつ,適切な時期に全面保険導入の可否を検討し,保険医療の枠内に取り込まれます.

本件は,上告人が特定承認保険医療機関である大学病院でLAK療法を受ければ足りたことで,生存権侵害にあたらないと思います.

混合診療禁止の原則を否定することが,一見,患者のためのように思われがちなのですが,全体的長期的にみると,それは,保険医療(公的医療サービス)から自由診療(ビジネス医療サービス)へのシフトを招きます.
すべての国民が公平・平等に良い医療を受ける環境を保障するための仕組みこそが,憲法の求めるところと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-26 01:31 | 医療事故・医療裁判