弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2011年 12月 29日 ( 1 )

春日居リハビリテーション病院,拘束して経鼻経管栄養注入中の窒息事故で提訴される

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読売新聞「68歳の入院患者死亡 遺族が医療法人提訴」(2011年12月29日)は,次のとおり報じています.

 「春日居リハビリテーション病院(笛吹市春日居町国府)に入院していた東京都東村山市の女性(当時68歳)が窒息死したのは、看護師が鼻から胃に栄養注入した後、目を離したことが原因だとして、女性の遺族が28日、同病院を運営する医療法人景雲会を相手取り、約160万円の賠償を求める訴えを、東京地裁立川支部に起こした。

 訴状によると、女性は昨年12月、くも膜下出血のリハビリのために入院していた同病院で、栄養注入を受けた。看護師が約20分間目を離したため、女性は嘔吐(おうと)し、吐き出したものが気管に詰まり窒息、蘇生も成功しなかった、としている。遺族には約4500万円の請求権があるとしており、その一部の約160万円を求めた。

 景雲会は「訴状が届いていないので、現状ではコメントできない」としている。



裁判では,このように,4500万の損害のうち,とりあえず160万円を請求する,ということもできます.

◆ 一部請求のメリット

裁判所に提出する訴状には,請求額に応じて印紙を貼ります.
たとえば,5000万円の請求ですと印紙代は17万円ですが,160万円の請求ですと1万3000円です.
つまり,損害賠償額の一部だけを請求すると,印紙代は請求額に連動して安くなります.

140万円までの請求は簡易裁判所,140万1円の請求からは地方裁判所の管轄になります.140万1円でも160万円でも印紙代は1万3000円と同じです.160万1円からは印紙代は1万4000円になります.ですから地裁に提訴するときは,160万円の一部請求がお薦めなのです.

◆ 一部請求で気をつけること

1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨明示して訴の提起があつた場合,訴え提起による消滅時効中断の効力は,その一部の範囲においてのみ生じ残部におよばない,とされています(最高裁昭和34年2月20日判決民集13巻2号209頁).
したがって,消滅時効(不法行為であれば3年,債務不履行であれば10年)の完成に留意し,時効完成前に請求を拡張する必要があります.

※ 契約関係のある者(医療機関の開設者)に対し,契約に基づく債務の不履行による損害賠償を求めるのは,債務不履行構成です.なお,契約関係のある者にも,不法行為を行った者(医師,看護師,技師など)の使用者として不法行為構成で請求できます.
契約関係にない医師個人,看護師個人などに請求するのは,不法行為構成となります.
医療過誤訴訟では,遅延利息,近親者慰謝料の点から,不法行為構成が一般的です.

◆ 一部請求と遅延利息

不法行為構成の場合,不法行為時から年5%の遅延利息が発生します.
債務不履行構成の場合,請求時から年5%の遅延利息が発生します.そこで,債務不履行構成では,160万に対しては提訴時から,残りは請求拡張時から,それぞれ年5%の遅延利息が発生することになります.
医療過誤訴訟では,不法行為構成が一般的で,不法行為構成ですと,一部請求でも遅延利息の点でのデメリットはありません..

◆ 請求拡張

ボーナスがはいったとき,あるいは証人尋問のあとなどに,追加の印紙を貼って,請求を拡張することができます.請求拡張は何回でもできます.
裁判上の和解が成立するときは,その和解金額まで請求を拡張します.
拡張しないで160万の勝訴判決をもらった場合,控訴して請求を拡張できます.

【追記】

毎日新聞「提訴:入院女性窒息死 東村山の遺族、山梨の病院提訴 /東京」(2011年12月29日都内版)は,次のとおり報じています.

「春日居リハビリテーション病院(山梨県笛吹市)に昨年入院していた東村山市の女性(当時68歳)に対し、経管栄養時の管理を怠り、女性を窒息死させたとして、遺族が28日、病院を運営する医療法人景雲会を相手取り、160万円の損害賠償を求めて地裁立川支部に提訴した。原告側は、実質損害額は4500万円に上るが、印紙代など訴訟費用を抑えて法廷の場で同法人の責任を明らかにしたいとして、賠償額を抑えて提訴した。

 訴状によると、女性は脳出血の後遺症で10年12月3日に同病院に入院。同23日午前5時半ごろ、女性に対し、看護師が経管栄養注入を開始し、午前5時50分ごろに病室を離れ、午前6時10分ごろに意識不明になった女性を発見した。病院側は酸素注入や心臓マッサージなどを行ったが午前9時半ごろに死亡が確認された。死因は女性の嘔吐(おうと)物が気管に詰まって窒息したためで、原告側は病院側が十分な管理を怠ったことが原因と訴えている。

 景雲会は「訴状が届いていないためコメントできない」としている。【中川聡子】」


毎日新聞「損賠提訴:入院女性窒息死で遺族が病院側提訴 東京地裁に /山梨」(2011年12月29日地方版)は,次のとおり報じています.

「笛吹市の春日居リハビリテーション病院に入院していた東京都東村山市の女性(当時68歳)への管理を怠り、窒息死させたとして、遺族が28日、病院を運営する医療法人景雲会を相手取り、160万円の損害賠償を求めて東京地裁立川支部に提訴した。

 訴状によると、女性は脳出血の後遺症で昨年12月3日に入院。看護師が同23日午前5時半ごろ、両手を拘束された女性に経管栄養注入を開始。同5時50分ごろに病室を離れ、同6時10分ごろに意識不明の女性を発見した。病院側は酸素注入などを行ったが同9時半ごろに死亡が確認された。嘔吐(おうと)物が気管に詰まった窒息死で、原告側は病院側が十分な管理を怠ったことが原因と訴えている。

 景雲会は「訴状が届いていないためコメントできない」としている。【中川聡子】」


拘束した状態で,経管栄養注入を行い,5時50分から6時10分まで見ていなかったわけです.

なお,現在は,サイバーナイフを導入し,「医療法人景雲会春日居サイバーナイフ・リハビリ病院」となっています.


谷直樹
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by medical-law | 2011-12-29 05:41 | 医療事故・医療裁判