弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 01月 14日 ( 2 )

昭和伊南総合病院,縫合不全,腹膜炎の対処の遅れで示談

b0206085_981150.jpg昨年12月のことですが,中日新聞「患者死亡で3000万円賠償 胃がん摘出 処置ミス 駒ケ根の昭和伊南総合病院」(2011年12月22日) は,次のとおり報じていました.
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「長野県駒ケ根市、飯島町、中川村、宮田村でつくる伊南行政組合が運営する昭和伊南総合病院(駒ケ根市)で2007年10月、胃がん摘出手術を受けた県内の60代男性患者が術後9日目に死亡した医療事故があり、組合議会は21日、遺族に対し示談金として3千万円の損害賠償を支払う議案を全会一致で可決した。

 病院によると、男性患者は同10月17日、腹腔(ふくくう)鏡手術で胃がんを摘出したが、手術から6日後に体調が急変。再手術の結果、摘出した部分の縫合が不完全だった上、腹膜炎の症状も見られ、男性は同26日、敗血症で死亡した。

 病院は、原因は分からないとしたものの「後になってみると、対処が若干遅れた感は否めない」と一部ミスを認め「再発防止に努めたい」とコメントした。執刀したのは、経験を積んだ外科医だったという。」


縫合不全,腹膜炎への対処が遅れたことを認め,示談したわけです.
古い裁判例には縫合不全ケースでも無責としたものがありますが,今は,縫合不全の発生責任(手技),術後の検査・経過観察の不十分さなどのいずれかで責任が認められます.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-14 10:05 | 医療事故・医療裁判

大学病院の医師が患者の勤務先の総合病院にHIV検査結果を漏示し,患者(看護師)が退職させられた事案,提訴

b0206085_9285862.jpg◆ 事案

msn産経「HIV感染、無断で勤務先に通知 看護師が病院提訴」(2012年1月13日)は,次のとおり報じています.

「訴状によると、看護師は福岡県内の総合病院に勤務していた昨年6月、目に異常を感じて複数の病院を受診。8月に同県内の大学病院でのHIV検査で陽性反応が出て、医師から「患者への感染リスクは小さく、上司に報告する必要もない」と言われた。ところが、原告側が両病院に情報開示を求めた資料によると、大学病院の別の医師が看護師に無断で、勤務先の病院の医師にメールで検査結果を知らせていた。

 看護師はその後、上司から「患者に感染させるリスクがあるので休んでほしい」と告げられ、休職後、11月末に退職した。」


◆ 提訴

この看護師は,2012年1月11日,両病院を経営する2法人を被告に慰謝料など計約1100万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁久留米支部に起こしました.
西日本新聞によれば「看護師の代理人の小林洋二弁護士は「診療内容は特に保護を要する個人情報なので、守秘義務違反に当たる。HIVを理由に休職を求めることは合理的な理由がなく違法だ」と主張。」しています.

◆ 感想

大学病院の医師の守秘義務違反は明らかです.

医師が業務上取り扱ったことで知った情報を漏示したのであれば,刑法第百三十四条「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」の秘密漏示罪にあたりますので,刑事責任も問題になります.

勤務先の総合病院の上司が,看護師に求職を求めたのは,「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」に反し,違法です.医療従事者であっても,HIV感染を理由に不利益に扱うことは許されません.

なお,原告代理人弁護士は,「小説医療裁判 ある野球少年の熱中症事件」(法学書院)の著者の小林洋二先生です.
石川順子先生と私が編集した「患者のための医療法律相談」(法学書院)にも執筆いただいております.


【追記】

毎日新聞「HIV:看護師と検査病院和解 勤務先に感染通告」(2013年4月19日)は,次のとおり報じました.

「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の検査をした大学病院が、陽性結果を無断で勤務先の病院に伝え退職を余儀なくされたとして、看護師が両病院を経営する2法人に慰謝料など計1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、看護師とHIV検査をした大学病院との和解が19日、福岡県内の地裁支部で成立した。実質、原告勝訴の内容。看護師と勤務先の病院との訴訟は継続している。

 原告側代理人によると、和解で大学病院側は「検査結果を紹介元(勤務先の病院)に提供するにあたり、原告の意思確認が不十分だったことを認め、真摯(しんし)に謝罪する」としたうえで、「診療情報を紹介元に提供する際は、患者本人の意思確認を徹底することを約束する」との再発防止策も盛り込んだ。大学病院は和解金100万円を原告側に支払う。

 訴状によると、看護師は総合病院に勤めていた11年8月、勤務先の紹介で受診した大学病院でHIV感染が判明。大学病院の担当医師からは「患者へ感染させるリスクは小さく、上司に報告する必要もない」と言われ出勤した。だが、勤務先の病院には大学病院から検査結果が伝わっており、勤務先の幹部から「感染のリスクがあるので休んでほしい」などと言われ休職。同年11月退職した。

 原告側代理人は「大学病院が再発防止についても言及したことを評価したい」と話している。

 一方、看護師が勤務していた病院側は「退職を強要したわけではない。患者への感染リスクはある」などとして、請求棄却を求めている。【金秀蓮】」


谷直樹
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by medical-law | 2012-01-14 01:29 | 医療事故・医療裁判