弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 01月 20日 ( 2 )

長崎大学病院も「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に違反

b0206085_1031086.jpg毎日新聞「再生医療:長崎大学病院の臨床研究、手続き不備で中止」(2012年1月19日)は,次のとおり報じています.

「長崎大学病院(長崎市)は19日、ヒト幹細胞を用いた再生医療の臨床研究を、厚生労働省の指針が定める国への意見照会をせずに実施していたと発表した。既に研究は中止している。

 病院によると、08年7月~11年7月、秋田定伯・形成外科講師や磯本一・光学医療診療部准教授のグループによる2研究で、患者の脂肪を収集し、幹細胞を含む脂肪細胞を抽出して体に戻す治療を、放射線障害などの患者17人に実施した。

 厚労省の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」では、研究施設の倫理委員会の他、国の審査も義務付けている。病院は「扱ったのはヒト分化細胞で幹細胞を豊富に含むものではなく、脂肪細胞を他の組織から分離する最小限の操作で指針の対象外と判断した」という。健康被害は確認されていない。

 11年7月、金沢大の研究で手続きの不備が明らかになり、長崎大学病院でも調べた結果、判明した。【蒲原明佳】」


患者の皮下脂肪から細胞を取り出し,幹細胞を濃縮した後、体に戻すという臨床研究は,ヒト幹細胞臨床研究の実施にあたりますから,研究機関の長は,まず倫理審査委員会の意見を聴き,次いで厚生労働大臣の意見を聴いて,当該臨床研究の実施等の許可又は不許可を決定するとともに,当該臨床研究に関する必要な事項を指示しなければなりません.

長崎大学病院のこの臨床研究については,院内の倫理委員会は承認していたはずですから,院内の倫理委員会に,「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」を正しく理解している人が誰1人いなかったということになります.それは,大きな問題です.

長崎新聞「国に照会せず再生医療の臨床研究 長崎大学病院」(2012年1月19日)によれば,「同病院は、院内の倫理委員会に適切な助言をする委員会を設置するなど再発防止策を実施。手続きをやり直し、研究を続ける方針を示した。」 とのことです.

昨年の金大の事件のとき,私は,ブログに「ヒト幹細胞の臨床研究以外にも,研究と倫理指針の問題はありますので,倫理指針を理解し尊重する体制を確立することが望まれると思います.それは,金大に限ったことではないと思います.」と書きましたが,金大と長崎大学病院に限った特別な話とは思えません.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-20 20:58 | 医療

弁護士による誇大広告の被害相次ぐ~大韓民国

b0206085_10175028.jpg弁護士による誇大広告の被害相次ぐ,というのは,弁護士人口約1万2000人の大韓民国の話です.

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朝鮮日報「弁護士による誇大広告の被害相次ぐ 市場飽和・競争激化が原因」(2012年1月19日)は,次のとおり報じています.

「昨年、経営に行き詰まり自己破産することになった女性(56)は、不動産専門の弁護士を探していた時、インターネットの広告である弁護士を見つけた。女性は「専門分野が七つもある弁護士ならどんな問題でも解決できるだろう」と思ったという。しかし、実際に会った弁護士は、女性の想像と全く違っていた。女性の説明すら理解できず、「まずはうちのスタッフに話してみてくれ」と言って席を外した。女性は「広告にはもっともらしいことを書いておきながら、実際は何も知らない『空っぽな』弁護士に相談料を21万ウォン(約1万4000円)も払い、無駄にした」と憤慨している。」

「大韓弁護士協会が2010年1月に導入した「弁護士専門分野登録制度」によると、弁護士は、刑事・民事・家事・不動産・金融・医療など49種類の専門分野のうち、最大2分野まで選び、登録することができるという。だが、常習的に誇大広告を繰り返す弁護士は、少なくとも3-4、多ければ10以上の分野を「専門」とうたっている。」


日本では,専門弁護士登録制度・認定制度のない現状で,弁護士が「専門」を称するのは望ましくないとされています.
日弁連では,この大韓民国の専門弁護士制度も参考に,専門弁護士制度の導入が検討されています.

私は,専門弁護士制度は,弁護士の仕事を増やすためではなく,市民の側の弁護士選択の視点から考えるべきと思います.

多くの分野で専門家である,というのは実際上無理ですから,専門弁護士というのは,専門が1つか2つでそれ以外のことには手を出さない弁護士であるべきでしょう.たとえば,私に離婚の相談をされても日頃取り扱っていない業務はできませんので,離婚事件を多く取り扱っている法律事務所を紹介しています.

東京地域の法律事務所には,取り扱い業務を絞り込んでいるところも結構あります.東京地域以外では,一般民事は何でも引きうけるという法律事務所が大半ですが,その中でも,専門的知識を要する種類の事件に積極的に取り組む法律事務所と,オールラウンドを指向する法律事務所があるでしょう.そのような法律事務所のカラーが正確に伝わり,市民の側の弁護士選択に役立つ仕組が望ましいと思います.

なお,記事は,「弁護士が誇大広告をするのは、競争が激しいからだ。」と述べています.
日本の弁護士人口は3万人を超えていますから,人口比にすると大韓民国と日本はほぼ同じ状況です.他山の石として受け止めたいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-20 07:54 | 弁護士会