弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 01月 23日 ( 2 )

横浜地裁平成24年1月19日判決,神奈川県立循環器呼吸器病センターの急性大動脈解離見落とし事故で請求認容

b0206085_912594.jpg◆ 事案

患者(男性,当時44歳)は,2007年11月24日朝,胸の痛みを訴え地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立循環器呼吸器病センターに救急搬送されました.
医師に狭心症の疑いと診断されて入院.CT検査は行われませんでした.
患者は,翌日朝,急性大動脈解離による心原性ショックで死亡しました.

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◆ 判決

横浜地裁民事4部は,2012年1月19日,同センターの開設者である地方独立行政法人神奈川県立病院機構に対し,約7240万円の損害賠償を命じました.

機構側は「痛みの内容は急性大動脈解離の症状に合致せず,CT検査は必要なかった」などと主張していましたが,判決は,「男性は狭心症の治療薬を服用しても痛みが消えないと訴えており,急性大動脈解離と思われる所見も現れていた」と指摘し,入院後に担当した医師について「CT検査を受けさせる義務を履行しなかった点で過失があり,過失がなければ救命は十分可能だった」と,医師の過失と患者の死亡との間に相当因果関係があることを認めました.

毎日新聞「損賠訴訟:救急搬送後死亡「過失なければ救命」地裁が県立病院機構に7240万円支払い命じる /神奈川」(2012年1月20日)ご参照

◆ 感想

急性大動脈解離は,放置すれば24時間以内に約半数が亡くなる疾患で,発症後の死亡率は1~2 %/時間と言われています.
急性期は疼痛が主症状であり,殆どの例で発症時に,胸部・背部の激痛を訴えます.胸の痛みを訴えて搬送された男性について,急性大動脈解離は鑑別すべき疾患の一つです.

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)」は,「救急の現場では,常に大動脈瘤・大動脈解離を念頭に置くことが必要である.さらに,もし瘤や解離との関連を疑ったら,いたずらに時間を浪費する事なく,超音波検査などの何らかの画像診断で速やかに診断をつけ,緊急手術も考慮することが必要である.」と指摘しています.

急性大動脈解離の臨床症状は多岐にわたり,痛みの内容で急性大動脈解離を除外することはできませんから,「痛みの内容は急性大動脈解離の症状に合致せず,CT検査は必要なかった」という機構の主張には無理があります.
本件は,控訴したとしても,おそらく高裁でも同様の判断になるのではないかと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-23 02:34 | 医療事故・医療裁判

市町村立病院の約半数が労働基準法違反の是正勧告を受けていました

b0206085_9215595.jpg中国新聞「市町村病院、半数に労基勧告」(2012年1月22日)は,次のとおり報じています.

「全国の200床以上の市町村立病院(政令指定都市を除く)255施設の少なくとも半数が、昨年3月末までの9年間に労働基準監督署から労働基準法違反の是正勧告を受けていたことが、広島国際大の江原朗教授(48)=医療政策=の調査で分かった。自治体による医師らの労務管理が十分に行き届いていない実態が浮かんだ。

 調査対象は、基幹的な市町村立病院で、事務組合立を含む。期間は、厚生労働省が医師の休日・夜間の救急外来を宿日直に当たらないと各自治体に通知した2002年3月から11年3月末まで。江原教授が各自治体に情報公開請求し、128施設(50%)の是正勧告書を入手した。勧告回数は延べ189回に上った。

 勧告された違反の内訳は、最多が「労働時間の超過」150回、「時間外や深夜の割増賃金の未払い」74回と続いた。同時に二つ以上の違反もあった。

 江原教授によると、多くの市町村では病院の管理運営を担う職員が、専門外の他部局から異動してくる事例がある。このため、医療現場での適切な労務管理ができていない可能性があるという。

 例えば、医師の休日・夜間の救急外来を宿日直として慣例的に扱い、夜勤とするより人件費を抑えていたケースがあるという。」


医師の休日・夜間の救急外来について,宿日直手当を払い,時間外割増賃金を支払わないのは明らかに違法です.
宿直時間でも,通常の勤務時間帯と同じような仕事をさせているなら,宿直手当ではなく,時間外割増賃金を支払わねばなりません.
管理職員が専門外の他部署から異動してくるからといっても,これは常識です.
労働者の権利を侵害するものです.
医療機関で公然と行われている違法行為を改める必要があります.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-23 01:15 | 医療