弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 01月 28日 ( 3 )

名古屋地裁平成24年1月27日判決,岡崎市民病院が子宮外妊娠の可能性・危険性を伝えず患者死亡で,請求認容

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◆ 事案

患者(当時36歳,女性)は,平成19年10月3日,妊娠検査薬で陽性反応が出たため妊娠を疑って,岡崎市民病院を受診し,検査を受けました.
診察した女性医師は,患者が腹痛を訴えず出血もなかったため,患者を帰宅させました.
患者が帰った後の同日夕には検査結果が出て,医師は子宮外妊娠の可能性に気づきましたが,別の患者の緊急手術を担当したため,患者に連絡しませんでした.

翌4日朝に,患者から腹痛を訴える電話がありましたが,病院側は子宮外妊娠の可能性を伝えずに,来院を促し,患者は午前11時に来院することになりました.

患者が午前11時に来院しないため,病院は何度も女性に電話しましたが通じませんでした.午後1時に女患者から病院に「腹痛で動けない」と電話があり,病院が救急車を呼びましたが,患者は自宅で意識を失っていました.

患者は,翌5日に出血性ショックで死亡しました.

◆ 判決

名古屋地裁平成24年1月27日判決は,平成19年10月4日朝に腹痛を訴える電話があった時点で,患者は危険な状態だった,と認定しました.

判決は,病院側には,平成19年10月4日朝に腹痛を訴える電話があった時点で,子宮外妊娠の可能性が高いことや危険性を具体的に伝え,できるだけ早く来院するよう勧める義務があった,適切に伝えていれば,迅速な手術と治療で救命できた可能性が高かった,病院側が子宮外妊娠の可能性を伝えなかったため処置が遅れて死亡した,と認定し,市と医師に対し患者の夫と子に合計約6700万円を支払うよう命じました.

朝日新聞「子宮外妊娠の女性死亡 愛知・岡崎市に賠償命令」(2012年1月28日)ご参照

中日新聞「妊婦死亡の医療ミスで賠償命じる 名古屋地裁」(2012年1月27日)ご参照

◆ 感想

子宮外妊娠(異所性妊娠)は,全妊娠の約1~2%に発生します.珍しいものではありません.私も子宮外妊娠の事故事案を担当しています.

子宮外妊娠により卵管破裂などが起きると,大量出血となり,非常に危険な状態になります.

子宮外妊娠の危険性を考慮し,夜に腹痛が生じる可能性も考え,3日の緊急手術の後でも,患者に電話1本いれておく医師も少なからずいると思います.
それをしないまても,翌朝,子宮外妊娠の可能性が高い患者から腹痛を訴える電話がかかってきたら,普通は説明するでしょう.
本件は,病院側に危険性・緊急性の認識が不足していたように思います.


【追記】

毎日新聞「岡崎市民病院訴訟:市控訴へ 過失認定に不服 /愛知」(2012年2月7日)は,次のとおり報じています.

「岡崎市民病院で診察を受けた子宮外妊娠の女性(当時36歳)の死亡を巡り、病院の過失を認め市に6700万円の支払いを命じた名古屋地裁判決について、同市の柴田紘一市長は6日の記者会見で、名古屋高裁に控訴する方針を明らかにした。

 柴田市長は「説明責任を果たしており、判決の内容に疑義がある」と説明した。

 地裁判決は「医師は速やかに再受診を促す義務があった」と指摘した。【中村宰和】」


【再追記】

WSJ「二審は遺族側逆転敗訴=子宮外妊娠の女性死亡—名古屋高裁」(2013年2月28日)は,次のとおり報じました.

「岡崎市民病院(愛知県岡崎市)で受診した女性=当時(36)=が子宮外妊娠で死亡したのは診断ミスなどが原因として、夫ら遺族3人が病院を運営する同市と担当医師(34)を相手に計7800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、名古屋高裁であった。加藤幸雄裁判長は、医師の過失を認めて計約6700万円の支払いを命じた一審名古屋地裁判決を取り消し、請求を棄却した。

 加藤裁判長は「妊娠週数が明らかではなく、医師が初診時の所見から子宮外妊娠と確定できなかったのはやむを得ない」と指摘。その上で説明義務違反があったとの遺族側主張に対し、「医師は子宮外妊娠の可能性や危険性などの必要な情報を提供しており、産婦人科医として尽くすべき注意義務を怠ったとは言えない」と結論付けた。 

[時事通信社]」



谷直樹
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by medical-law | 2012-01-28 08:06 | 医療事故・医療裁判

東京地裁平成24年1月26日判決,医療法人社団愛育会協和病院(当時)の転送遅れの事案で請求認容

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◆ 事案

患者(当時54歳,男性)は,平成19年11月,発熱などの症状を訴え,医療法人社団愛育会協和病院(現協和メディカルクリニック)を受診し,その後に容体が急変しました.
院長らは,呼吸困難となった男性に気管挿管を3度試みましたが失敗し,救急車を要請し,患者は都立墨東病院に転送され手術を受けましたが,患者は死亡しました.

◆ 判決

東京地裁(民事35部)は, 平成24年1月26日,転送の遅れを認め,医療法人社団愛育会に約4700万円の損害賠償を命じました.

毎日新聞「損賠訴訟:転院遅れで死亡、院長ら賠償命令--東京地裁」(2012年1月27日)ご参照

◆ 感想

自分が対処できるものか,転送を要するものか,の判断が大事です.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-28 02:29 | 医療事故・医療裁判

東京弁護士会,オリンパスの重大な人権侵害行為に警告

b0206085_9351453.jpg東京弁護士会は,2012年1月27日,オリンパス株式会社に対し,重大な人格権侵害行為を認定し,今後、申立人の要望をふまえて申立人を適切な部署に配置し,申立人の業務を適正に評価するよう是正するとともに,二度とこのような人権侵害行為に及ぶことのないよう,警告しました.

認定された人権侵害行為は以下のとおりです.

① 情報漏洩行為

平成19年6月27日,IMS事業部のA事業部長に対して,申立人が同年6月11日にコンプライアンス室に通報を行った事実を伝えたこと

② 不必要かつ不当な動機・目的に基づく配転命令

申立人を,平成19年10月1日付けで,IMS事業部IMS企画営業部部長付きに配置転換し,新事業創生探索活動に従事させたこと

③ 一連のパワーハラスメント

申立人が達成できない業務目標の設定,部外者との接触禁止,申立人との面談時における上司らによる不適切な言動,申立人の業務成果を正当に評価せずに著しく低い人事評価などを行ったこと

詳細は,人権救済申立事件東弁23人第318号ご参照

オリンパスが,違法な引き抜き行為を通報した従業員に対し行った上記の報復行為が,東京弁護士会により重大な人権侵害行為と認定されたのは,至極当然なことでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-28 01:09 | 弁護士会