弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 03月 23日 ( 5 )

北海道新聞社説,「秘密保全法制 先送りではなく断念を」

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政府は,「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」の報告を受けて,秘密保全法の国会提出を企図していましたが,消費税法案の成立させるため,秘密保全法法案の今国会提出を見送りました.

なお,日弁連は,「秘密保全法制と情報公開について考える院内集会」を3月22日開催するなど,法案に反対してきました.

北海道新聞社説,「秘密保全法制 先送りではなく断念を」(3月23日)は,次のとおり,指摘しています.
 
「法整備のきっかけは2010年9月の中国漁船衝突事件で起きた映像流出だった。当時の仙谷由人官房長官が「(現行法は)罰則が軽く抑止力が十分でない」と厳罰化を打ち出し、有識者会議を発足させた。

 だが漁船衝突のビデオは流出以前から公開すべきだとの声があり、重大な秘密に当たるとの見方は小さかった。秘密保全法制を整えようとした動機がそもそも疑問を抱かせた。」

「特別秘密の範囲があいまいな上、厳罰化で公務員が萎縮し取材や報道が制約されることが懸念された。日本新聞協会や日本弁護士連合会などの反対に政府は耳を傾けるべきだ。
 しかも有識者会議は議事録を作成していないことが明らかになった。これで

は知る権利などに関し、どんな議論を交わしたのか分からない。

 議事要旨を作成する基となった事務方のメモも廃棄していたというからあきれるばかりだ。公文書管理法の精神さえ守れない政府に、秘密の管理をうんぬんする資格はない。

 政府は東京電力福島第1原発事故で炉心溶融(メルトダウン)や放射性物質の拡散情報の公開が後手に回った。東日本大震災の多くの対策会議で議事録を作成していなかった。
 沖縄返還をめぐる日米間の密約問題では、外務省内で引き継いできたはずの資料を秘密裏に廃棄していた可能性を裁判所が指摘した。

 国民が政権交代に期待したのは、政府の情報を可能な限りオープンにして政策判断に緊張感を抱かせることだった。民主党の役割は情報統制を進めることではない。」


谷直樹
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by medical-law | 2012-03-23 19:47 | 人権

日弁連,新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明

b0206085_18464121.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年3月22日,「新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明」を発表しました.

2012年3月2日の「新型インフルエンザ対策のための法制に関する会長声明」では,「当連合会は、新型インフルエンザ対策のための法制が、科学的な根拠が不十分なまま、各種人権に対する過剰な制約を伴うものとならないよう政府に求めるとともに、上記問題点を十分に検討することなく性急な立法を目指すことには反対する。」にとどまっていましたが,
今回の会長声明は,「本法案は、上記のとおり、科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も極めて曖昧なまま、各種人権に対する過剰な制限がなされるおそれを含むものである。よって、当連合会は、本法案に反対の意を表明する。」と,旗幟を鮮明にしました.

政府が科学的な検討等を怠り法案を衆議院に提出し,立法を急いでいる状況なので,反対を明確に表明せざるを得ない事態になっている,とみるべきでしょう.

とくに次の規定は,憲法違反の疑いがあると思います.

検疫のための病院・宿泊施設等の強制使用(29条5項)
臨時医療施設開設のための土地の強制使用(49条2項)
特定物資の収用・保管命令(55条2項及び3項)
医療関係者に対する医療等を行うべきことの指示(31条3項)
指定公共機関に対する総合調整に基づく措置の実施の指示(33条1項)
 ※ NHKだけではなく,民放の報道の自由を制限できる規定
多数の者が利用する施設の使用制限等の指示(45条3項)
 ※ 集会の自由を制限できる規定
緊急物資等の運送・配送の指示(54条3項)

谷直樹
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新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明」は,以下のとおりです.

「新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明政府は、2012年3月9日、新型インフルエンザ等対策特別措置法案(以下、「本法案」という。)を国会に提出した。

本法案には、検疫のための病院・宿泊施設等の強制使用(29条5項)、臨時医療施設開設のための土地の強制使用(49条2項)、特定物資の収用・保管命令(55条2項及び3項)、医療関係者に対する医療等を行うべきことの指示(31条3項)、指定公共機関に対する総合調整に基づく措置の実施の指示(33条1項)、多数の者が利用する施設の使用制限等の指示(45条3項)、緊急物資等の運送・配送の指示(54条3項)という強制力や強い拘束力を伴う広汎な人権制限が定められている。

このような人権制限は、その目的達成のために必要な最小限度にとどめられなければならないことはいうまでもないが、本法案においては、その必要性の科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も、極めて曖昧である。

すなわち、本法案の多くの人権制限の前提となる「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」の要件は、「新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態」とされ、具体的要件は政令に委任し、法律上は抽象的な定めがなされるにとどまっている。政府の新型インフルエンザ対策行動計画(2011年9月20日)によれば、新型インフルエンザの被害想定の上限値は、受診患者数2500万人、入院患者数200万人、死亡患者数64万人という極めて大規模なものとされ、このような被害想定が、『万が一に備える』との考え方により安易に用いられれば、本法案の上記要件を充足するものとたやすく判断されてしまうおそれがある。そもそも、この被害想定は、1918年(大正7年)に発生したスペインインフルエンザからの推計であるが、当時と現在の我が国の国民の健康状態、衛生状況及び医療環境の違いは歴然としており、こうした推計に基づく被害想定が科学的根拠を有するものといえるのか疑問である。

また、新型インフルエンザ等緊急事態宣言に当たり定められる緊急事態措置の実施期間の上限を2年(32条2項)とし、更に1年の延長が可能としている(同条3項)ことは、その人権制限の内容に照らして、長きに過ぎる。宣言後に緊急事態措置を実施する必要がなくなったときには速やかに解除宣言をするとされているが(同条5項)、これらの判断を政府に委ねるのみでは全く不十分である。新型インフルエンザ等緊急事態宣言には国会の事後承認を要するものとするとともに、期間の上限はより短いものとし、国会の事前承認を延長の要件とすべきである。

さらに、個別の人権制限規定にも、多くの問題がある。

特に、多数の者が利用する施設の使用制限等(45条)は、集会の自由(憲法21条1項)を制限し得る規定であるが、その要件は、「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」(45条2項)という抽象的かつ曖昧なものであり、その対象も、「政令で定める多数の者が利用する施設」とされているのみで、極めて広範な施設に適用可能な規定となっている。

他方で、一時的な集会などを制限することが感染拡大の防止にどの程度効果があるのかについては十分な科学的根拠が示されておらず、効果が乏しいとの意見もあるところであり、制限の必要性にも疑問がある。そのため、感染拡大の防止という目的達成に必要な最小限度を超えて集会の自由が制限される危険性が高い。

また、指定公共機関に対する総合調整に基づく措置の実施の指示(33条1項)は、日本放送協会(NHK)が指定公共機関とされ(2条6号)、民間放送事業者も政令により指定公共機関とされ得る(同号)ことから、これら放送事業者の報道の自由(憲法21条1項)を制限し得る規定であるが、その要件である「第20条第1項の総合調整に基づく所要の措置が実施されない場合」にいう総合調整の内容は全く不明確であり、また、なし得る指示の内容についても、「必要な指示をすることができる」とされ、具体的な限定は全くなされていない。表現の自由に対する規制が可能な条文としては、曖昧に過ぎるといわざるを得ない。むしろ、本法案の適用により国民の人権が広範囲に制約されることに鑑みれば、法適用の根拠及び各措置の結果等については随時全面的に情報開示を行い、専門家らを含む第三者が広く検証できるようにすべきである。

当連合会は、去る3月2日の会長声明で、本法案に先立って公表された「新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台」に対し、2009年に発生したA型H1N1型インフルエンザに対し、その危険性が不明な時点で「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」上の「新型インフルエンザ等感染症」に該当するとし、その危険性が季節性インフルエンザと同程度であることが判明した後も適用を続けられたという経緯にも鑑み、新型インフルエンザ特措法についても、その拡大適用が懸念されることを指摘して、慎重な検討を求め、性急な立法を目指すことに反対を表明した。しかるに、本法案は、上記のとおり、科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も極めて曖昧なまま、各種人権に対する過剰な制限がなされるおそれを含むものである。

よって、当連合会は、本法案に反対の意を表明する。」



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by medical-law | 2012-03-23 19:14 | 医療

福岡地裁小倉支部平成24年3月22日判決,不適切な位置の固定具をすみやかに除去しなかった事案

◆ 事案

患者(68歳,女性)は,2005年6月,医療法人松寿会松永整形外科医院で,ヘルニア手術を受けた直後から,右足などにしびれや痛みを感じました.
判決は,「手術時に腰椎の固定具が不適切な位置に挿入されたことが原因で、神経が圧迫され、まひが生じた」と認定しています.
患者は,その後,別の病院で固定具を除去する再手術を受け痛みは取れましたが,右足に麻痺が残りました。

◆ 判決

判決は,腰椎の固定具が不適切な位置に挿入した医師について過失を否定しましたが,しびれや痛みが生じたあとの医院の対応について過失を認め,翌日に再手術をしていれば防止できたとして因果関係も認め,約1620万円の支払いを命じました.
ました.

日刊スポーツ「ヘルニア手術で麻痺 1600万賠償命令」(2012年3月22日)ご参照

◆ 感想

措置までの時間が遅ければ神経損傷がおきるので,このように固定器具を入れた後,しびれなどの神経症状を訴えたときの対応が問題になります.
普通は,右足などにしびれや痛みを感じ,看護師などに症状を訴えると,医師が診察し,再手術になるのですが,本件は手術直後から症状があったのにどうして再手術が行われなかったのでしょうか.
雑誌,裁判所サイトに判決が公表されれば,よく読んでみたいと思います.

【追記】

毎日新聞「損賠訴訟:岡垣の女性、手術後に障害 病院側の過失認定--地裁小倉 /福岡」(2012年3月23日)によれば,椎間板ヘルニアの手術を受けた直後から右足を曲げられない(右下垂足)状態となった,とのことです.また,判決は,「医師が手術中に適切な挿入位置なのか確認するのは不可能だが,術後の患者の筋力低下を受け,手術の翌日には器具を抜く手段を提案するべきだった」と指摘したとのことです.

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by medical-law | 2012-03-23 08:21 | 医療事故・医療裁判

日弁連,司法制度の根幹を揺るがす法務省新規採用者数大幅削減の見直しを求める会長声明

b0206085_19585816.jpgもともと仕事量のわりに人が足りない検察官や刑務官を削減したらどうなるかわかりそうなものですが,行政改革実行本部は容赦しません.
例年70~80人が採用されてきた検察官の新規採用が20数名程度,刑務官の新規採用も360人程度(職員数で約500名減)となりそうなのです.

そこで,日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年3月21日,「司法制度の根幹を揺るがす法務省新規採用者数大幅削減の見直しを求める会長声明」を発表しました.以下のとおりです.

「2012年3月6日の行政改革実行本部における副総理と総務大臣の発言によると、政府は社会保障・税一体改革における消費税引き上げに向けて、2013年度の公務員採用を大幅に抑制する方針とされている。

法務省では2009年度新規採用実績1973人に対して、2011年度は66パーセント(1304人)、2012年度は74.7パーセント(1475人)に抑制されてきた。

今回予定されている大幅抑制策によれば、例年70~80人が採用されてきた検察官が20数名程度となり、刑務官の新規採用も360人程度(職員数で約500名減となることが予測される。)になることが予測されている。

当連合会は、国家公務員の採用を短期間に極端に抑制することは、行政にかかわる人材の養成の面や行政サービス、なかんずく社会保障分野におけるサービスの低下を招くのではないかと懸念するところである。国家公務員数全体の抑制を図る政策全般の当否については一時措くとしても、少なくとも法務行政に関わる人員の極端な削減については、その影響を慎重に検討することが必要である。すなわち、法務省の行っている業務は人によらざるを得ず、刑事少年司法の捜査、公判・審判、矯正保護の過程を担っており、この観点から検討を加えることが求められる。

まず、検察官については、全国の検察庁で法曹資格を有する検察官が常勤していない検察庁支部は128か所(当連合会調べ。2010年8月末現在)に及んでおり、当連合会は検察官採用の大幅増員によって検察官ゼロ支部の解消を求めてきた。今回の検察官の採用の抑制は検察官の1000名程度の大幅な増員を求めた2001年6月の司法制度改革審議会意見書に明確に逆行するものであって断じて許されない。

また、刑務官の採用の抑制は、名古屋刑務所事件を契機として設置され、刑事施設における人権保障の充実と同時に大幅な刑務官増員を求めた2003年12月の行刑改革会議提言に明確に反している。

このような大幅な職員採用の抑制は公務員の年齢構成のアンバランスを生じ、世代間の専門的知見の継承にも支障を生じる可能性がある。検察官不足は警察の捜査に対するチェック体制に悪影響を及ぼし、違法捜査やえん罪などの人権侵害を生み出しかねない。

また、現状においても、刑務官不足は深刻であり、その労働条件は年休取得も困難であり、超過勤務と休日出勤が常態となっており、極めて過酷なものと言える。行刑改革で設置された市民による刑事施設視察委員会は、各地の施設の実情を踏まえ、その改善のため職員の増員を求める意見を繰り返し提出してきた。このような職員の劣悪な労働条件が施設内のストレスを高め、刑務官による被収容者への人権侵害や被収容者同士の保安事故などの増加の原因となりかねない。

仮に職員採用数の減少を求める必要性があるとしても、それぞれの職務の重要性と業務量・密度を考慮して慎重に進めなければ、国の司法制度の根幹に関わる業務に著しい弊害をもたらす現実的な危険性がある。当連合会は、政府に対し、法務省の新規採用者数大幅削減については、上記の観点から抜本的にこれを見直すよう強く求めるものである。

*参考
 刑務官の新規採用人数が360名程度になることが予測されているが、2010年度までの刑務官の新規採用人数は、次のとおりである。
 2006年度…934名
 2007年度…941名
 2008年度…1073名
 2009年度…1058名
 2010年度…1230名」


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by medical-law | 2012-03-23 00:34 | 弁護士会

民主党政権で被爆者認定却下増大,小宮山厚労相は見直しを指示

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医薬品行政の分野では,厚労行政が,裁判所の判断を軽視ないし無視したり,和解の約束を守らなかったりすることが続いていますが,原爆症認定についても,裁判所の判断を軽視ないし無視しています.

日本共産党の井上哲士議員は,3月21日,参院予算委員会で,民主党政権になってから原爆症の認定却下が急増していることをグラフで示し,被爆者救済の立場にたって認定制度を見直すよう求めた,とのことです.
小宮山厚労相は「おっしゃる趣旨で(見直しを)指示している。可能な限りのことをする」と述べた,とのことです.

しんぶん赤旗「被爆者認定見直しを 井上議員 民主党政権で却下増大」(2012年3月22日)ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-23 00:10 | 人権