弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 04月 03日 ( 5 )

静岡済生会総合病院,妊娠高血圧症候群の妊産婦死亡事案で提訴される

b0206085_8495031.jpg日テレ「出産直後に死亡 医療過誤で病院を提訴」(2012年4月3日)は次のとおり報じています.

「出産直後に死亡したのは、適切な治療を行わなかったためとして死亡した女性の夫と娘が病院を相手取り9100万円あまりを求める訴訟を3日、静岡地裁に起こした。
訴えたのは、静岡市内の会社員大石芳裕さん(46)と3歳の娘の2人。
訴えなどによると、2008年、当時40歳だった芳裕さんの妻が静岡済生会総合病院で出産後に死亡したのは、血圧が高いにもかかわらず適切な処置を怠ったためとして病院を運営する社会福祉法人に9100万円あまりの損害賠償を求めている。
今回の提訴について社会福祉法人側は、「訴状を読んで対応を検討する」とコメントしている。」


「血圧が高いにもかかわらず適切な処置を怠った」ということからすると,本件は,おそらく,妊娠高血圧症候群(PIH)を発症した妊産婦の死亡事案でしょう.

妊娠高血圧症候群を発症した妊産婦死亡については,例えば,名古屋高裁平成23年2月14日判決は,地方独立行政法人岐阜県総合医療センターに妊娠高血圧症候群(PIH)で入院した31歳の妊婦が予定日より約2カ月早く帝王切開で男児を出産し,その2日後にけいれん発作を起こし死亡した事案で,約8400万円の賠償を命じています.

また,妊産婦死亡症例検討評価委員会の『母体安全への提言2010』は,妊産婦死亡の半数以上について回避可能性ありと報告しています.

本件訴訟の帰趨に注目したいと思います.

【追記】

毎日新聞「損賠訴訟:「出産後妻死亡は医療ミス」 静岡の遺族、済生会を提訴 /静岡」(2012年4月4日)は,次のとおり報じています.
 
「08年に妻(当時40歳)が出産後に死亡したのは静岡済生会総合病院(静岡市駿河区)の医療ミスだとして、同市に住む夫の会社員、大石芳裕さん(46)と長女(3)の2人が3日、同病院を運営する社会福祉法人「恩賜財団済生会」に慰謝料など約9100万円を求める訴えを静岡地裁に起こした。記者会見した芳裕さんは、「(妻は)何も処置されないまま亡くなった。病院からきちんとした説明もない」と話した。

 訴状によると、妻の精子(せいこ)さんは08年11月23日午後6時ごろ、同病院で長女を出産。出産前から最大で200近くに血圧が上昇し妊娠高血圧症候群の症状が出たが、病院は一度降圧剤を投与した以外は鎮痛剤を投与しただけで、適切な処置をしなかったとしている。精子さんは脳出血を起こし、翌24日午前8時に病室で死亡しているのが発見された。

 同病院は、「訴状が届いてから対応を検討したい」と話している。【平塚雄太】」


朝日新聞「遺族、賠償求め提訴/病院で出産後死亡」(2012年4月4日)は,次のとおり報じています.

「静岡市内の女性(当時40)が2008年、静岡済生会総合病院で出産した翌日に死亡したのは、同病院が妊娠高血圧症候群に対する適切な対処を怠ったためだとして、女性の遺族が3日、社会福祉法人恩賜財団済生会(東京都港区)を相手取り約9140万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こした。

 死亡したのは大石精子(せいこ)さん。提訴したのは夫の会社員、芳裕さん(46)と長女(3)。

 訴状によると、精子さんは2008年11月23日午後5時ごろ、入院。最高血圧が190に達したため、降圧剤を投与され、同5時53分ごろ、長女を出産した。翌24日未明から朝にかけて最高血圧は160~198で推移したが、病院は投薬などの対処をせず、24日午前8時ごろ、死亡が確認された。

 学会の管理ガイドラインでは、最高血圧が160以上の妊娠高血圧症候群は「重症」で、投薬が必要な状況とされているという。

 静岡市内で記者会見した芳裕さんは「妻が危険な状態だったのに、どうして病院側が何もしてくれなかったのか知りたい」などと提訴の理由を述べた。

 同病院は「訴状を読んで対応を検討したい」としている。」


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-03 23:30 | 医療事故・医療裁判

日本病院薬剤師会,院内製剤の指針作りへ

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日本病院薬剤師会は,名大病院の院内製剤の成分が過小だったミスを受けて,安全な院内製剤を実施するための指針を作ることを決めた,とのことです.

読売新聞「病院独自の非正規薬・院内製剤に安全指針 実態調査踏まえ作成」(2012年4月3日)は,次のとおり報じています.

「日本病院薬剤師会は3月末、院内製剤の実態調査と、院内での審査手続きや患者への説明、品質管理のあり方について、指針づくりに着手することを決めた。

 担当理事の土屋文人・国際医療福祉大教授は「院内製剤」は患者の利益につながっているだけに、きちんとしたルールを作りたい」と話している。」


院内製剤は,薬事法,医薬品副作用被害救済制度の対象外です.
院内製剤は,PL法の対象となります.

特定少数の患者の治療に必要な製剤は,不採算のため,製薬企業は製造販売しません.
市販製剤では入手不可能で,特定少数の患者の治療に限定して院内で調製される製剤 (院内特殊製剤)は,患者の治療のために必要です.
ただ,国が承認している医薬品ではないため,品質,安定性を確保し,さらに安全性と有効性をどのようにとらえるのかが問題になります.

きちんとした指針が作られることを期待いたします.

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by medical-law | 2012-04-03 18:53 | 医療

公益社団法人日本口腔インプラント学会,インプラント治療のためのチェックリスト案を作成

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公益社団法人日本口腔インプラント学会学術委員会は,2012年3月30日,「インプラント治療のためのチェックリスト」案を作成しました.
案は,日本口腔インプラント学会のサイトでみることができます.
最終案は,9月の42回学術大会で公開する予定とのことです.

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by medical-law | 2012-04-03 16:48 | 医療

全身麻酔の際モニター機器を使用しなかった整形外科医院の医師,業務上過失致死容疑で書類送検される

b0206085_12523896.jpg福岡市博多区の伊藤整形外科医院の医師(45歳)は,2010年4月9日,鉄棒から落ちて右ひじを骨折した男児(当時4歳)の骨折部位を固定する手術のため全身麻酔を実施しました.
その際,モニター機器を使用していなかったので(手術の直前につけるつもりだったとのことです.),医師が男児の容体急変に気付くのが遅れました.男児は心肺停止となり,医師は蘇生を試みました(自ら対処できると思った,とのことです.).
みかねた家族が119番し,救急病院に搬送されたのは,医師が容体急変に気づいてから約50分後でした.
男児は,同年6月18日転送先の病院で多臓器不全のため死亡しました.

福岡県警は,この医師が,呼吸を確保するチューブを挿管する際,モニター機器を使用せず容体の悪化に気付くのが遅れたことを重視し,早急に救急病院に搬送するなど適切な措置をとる注意義務を怠ったため男児が死亡するに至ったと判断した,とみられています.

この医師は任意の聴取に対し「モニタリングしていれば早く気づいて手を打つことができた」と容疑を認めているとのことです.

読売新聞「麻酔後急変し4歳児死亡、男性医師を書類送検」(2012年4月3日)ご参照
msn産経「4歳男児死亡で医師を書類送検 モニタリング怠った疑い 全身麻酔直後に」(2012年4月3日)ご参照
毎日新聞「医療事故:福岡市の病院医師を書類送検」(2012年4月3日)ご参照


外科医1人で全身麻酔と手術を行うのは大変ですが,だからこそ必ずモニター機器を使用しなければいけないと思います.全身麻酔の際にモニター機器を使用しなかったことの過失は,「重大」と言えるのではないでしょうか.

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by medical-law | 2012-04-03 16:20 | 医療事故・医療裁判

補助金適正化法違反で服役した社会福祉法人理事長が,検察が関係者の証言を捏造したと,再審請求

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社会福祉法人の理事長が,法人を設立する際認可申請に必要な貯金残高証明書を偽造して県に提出したとして,2007年に懲役1年4月罰金50万円の刑に処せられましたが,検察が関係者の証言を捏造したもので,自分は無実であるとして,再審請求を行ったことが報じられています.

毎日新聞「再審請求:宮崎の福祉法人理事長 補助金不正受給で実刑」(2012年4月2日)は,次のとおり報じています.

宮崎県延岡市の福祉施設建設を巡り、県の補助金を不正に受け取ったとして補助金適正化法違反罪で実刑判決が確定、服役した同市の社会福祉法人「真隆会」理事長の医師、田中英隆さん(60)が2日、宮崎地裁に再審を請求した。弁護側は「検察が関係者の証言を捏造(ねつぞう)した。自白偏重の典型的な裁判だ」としている。

 判決によると、田中さんは98年に真隆会を設立する際、認可申請に必要な貯金残高証明書を偽造して県に提出。00年には福祉施設を建設する際、工事代金を水増しして県の補助金約1億6000万円を不正受給したとして宮崎地裁は05年に懲役1年4月、罰金50万円を言い渡した。07年2月に最高裁が上告を棄却し確定した。

 宮崎地裁での公判中、田中さんは「担当弁護士から『罪を認めないと釈放されない』と迫られた」として起訴内容を一転否認。以来、無罪を主張しており、弁護団は新たに当時の延岡市への提出書類など32点を新証拠として提出した。

 団長の秋山賢三弁護士は「当時の田中さんには十分な資力があり、証明書偽造の事実はない。工事代金の水増しも検察が関係者の証言を捏造した。自白偏重の典型的な裁判だ」と話した。

 宮崎地検は「再審請求の通知は受け取ったが、コメントはできない」と話している。【中村清雅】」


真隆会事件と言えば,前理事長が,2007年に,実刑が確定した創設者の元理事長に,国連に働きかけ無罪にするなどと述べ大金を振り込ませた疑いがある,と報道されていたことを思い出します.
創設者の元理事長=現理事長の無罪への思いは,強かったのでしょう.

秋山賢三先生は,元裁判官で,再審の重い扉を開けてきた弁護士ですから,本件も徹底的に調べて再審請求に持ち込んだものと思います.

最近,再審決定の報道が相次いでいますが,警察・検察の自白偏重のみならず,自白偏重(自白を翻しても,捜査段階の自白調書を根拠に有罪とする)の裁判所の姿勢にも問題があります.
また,担当弁護士から保釈のため罪を認めるように迫られたというのが事実であれば,その弁護士人弁護士の責任は重いものと言わざるを得ません.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-03 01:38 | 司法