弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 04月 19日 ( 4 )

ベリタス病院,予防接種で乳児2人に同針使用,河西市に報告せず

b0206085_3221461.jpg毎日新聞「医療ミス:予防接種で乳児2人に同針使用−−川西・ベリタス病院 /兵庫」(2012年4月19日)は,次のとおり報じています.

「川西市は18日、同市新田1のベリタス病院で今月5日、BCGの予防接種で同じ針を2人の乳児に使うミスがあったと発表した。乳児2人の血液検査の結果、ウイルスの感染はなかったという。

 市と病院によると、同日午後、40代の男性小児科医が生後3カ月の男児に注射後、専用の針を廃棄せず、約20分後に生後3カ月の女児にも同じ針を使ったという。同病院では注射した医師が針を廃棄するルールだったが、この小児科医は看護師が捨てると誤解していたという。

 市はベリタス病院に予防接種を委託。同病院は市にミスの報告をせず、保護者が16日、市に健康相談をしたことで発覚した。【高瀬浩平】」


病院は,この小児科医に,注射した医師が針を廃棄することを,きちんと伝えたのでしょうか.もし,きちんと伝えていないとしたら,小児科医よりむしろ病院のほうに責任原因があるように思います.

また,病院が,ミスを市に報告していないのは,再発防止の観点からも良くないと思います.

そういえば,アラームが鳴ったのに,夜勤の看護師3人がすぐに対応せず,患者は呼吸が停止して意識がなくなり死亡した事案で,神戸地裁平成23年9月27日判決は,アラームへの対応を優先すべきだった,と過失を認めましたが,それがこのベリタス病院でした.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-19 18:28 | 医療事故・医療裁判

山形地裁米沢支部で,カルテの保存期間を誤解し廃棄したと答弁した医療法人

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読売新聞「保存必要なカルテ廃棄 医療法人「勘違い」(2012年4月18日)は,次のとおり報じています.

「南陽市の70歳代の女性患者が、「自分の病気のカルテ(診療録)を見ることができない」として、同市で診療所を経営する医療法人を相手取って、カルテの開示と慰謝料など50万円の損害賠償を求めた民事訴訟の第1回口頭弁論が17日、山形地裁米沢支部(上原卓也裁判官)であり、被告側は争う姿勢を見せた。訴訟の中で、医療法人側が、本来は保存が必要なカルテを廃棄していたことが判明した。

 医師法は、患者の初診から診療が完了するまでのカルテについて医療機関が完了時から5年間保存するように定めているが、被告は直近5年間のカルテしか残していなかったという。このため、県置賜保健所から昨年2月に改善を求める行政指導を受けた。

 行政指導について、被告は答弁書で、「カルテの保存期間は、さかのぼって5年間であると勘違いしていた」と説明。同保健所などによると、この医療法人の管理者は昨年3月、「今後はカルテを5年以上保存する」という改善報告書を提出したという。

 訴状によると、原告は1995年10月が初診で、2009年1月まで被告の診療所で高血圧症の治療を受けたが、95年以降のカルテの開示請求に対し、05年以降の分しか開示されなかったという。このため、「医療記録を知る権利を侵害された」などと訴えている。

 一方、被告は「04年以前のものは廃棄処分した。存在する全てのカルテは開示しており、理不尽な開示拒否 一方、被告は「ではない」などと主張。被告側代理人の弁護士は取材に対し、「主張は答弁書の通り」とコメントした。」


上記記事は診療の完結から5年の根拠として医師法をあげていますが,療担規則第9条をあげるのが適切と思います.

保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年四月三十日厚生省令第十五号)第九条は「保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。」と定めています.

保険医療機関である被告がカルテの保存期間についての保険医療機関及び保険医療養担当規則第九条を誤解し,同規則に違反して,カルテを破棄したために,原告が医療記録を知る権利を侵害されたのですから,要件はすべて充たしており,被告は損害賠償責任を負うはずです.
04年以前のものは廃棄処分したという主張は,カルテ開示請求に対する抗弁になります(カ04年以前のカルテの開示は不可能ですから,開示義務はありません)が,損害賠償請求に対する抗弁にはなりません.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-19 04:21 | 医療事故・医療裁判

静岡県立病院機構静岡県立総合病院,1万6810人の患者の個人情報入りUSBメモリーを紛失

b0206085_3295943.jpg静岡県立病院機構静岡県立総合病院は,患者の病歴管理データ16,810件(患者ID、氏名、性別、年齢、病名、手術名、手術日、入院日、退院日、在院日数、主治医名)入りのUSBメモリーの紛失事故を公表しました.

静岡県立病院機構静岡県立総合病院のサイトの「個人情報の紛失についてのご説明とお詫び」では,「平成24年4月11日(水)、職員がUSBメモリの紛失に気付き、病院、自宅、外出先などを探したが見つからなかったため、4月12日(木)に上司へ紛失の報告をした。その後、15日(日)まで所属課職員で執務室等を探したが見つからなかった。」というだけですが,報道は「病院側の説明では、事務担当職員が6日、入院患者の個人情報が記載された病歴管理台帳を私物のUSBメモリーに保存して自宅に持ち帰って作業。10日に病院の執務室で使用した後、11日になってUSBメモリーの紛失に気づいたという。」と伝えています(MSN産経「入院患者の個人情報、県立総合病院が紛失 静岡」(2012年4月19日)).

再発防止策について,同院のサイトでは「今後、このような事態を二度と起こさぬため、すべての職員に対して改めて個人情報保護の周知・教育を実施するとともに、情報管理の強化・徹底に努め再発防止に万全を期します。」と述べています.

個人情報保護の周知・教育だけでは,紛失事故は防止できません.
情報管理の強化が重要だと思います.
たとえば,愛媛大学医学部付属病院は,2012年2月より,USBデバイスをサーバーで一元管理して個別に認証し,かつUSBデバイスにコピーしたファイルを強制的に暗号化するソフトを導入しました.このような情報漏洩対策ソフトで患者の個人情報を管理する必要があると思います.

ちなみに,報道によると,昨年6月以降,個人電磁情報の紛失事故は,以下の施設で起きています.

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院


個人情報紛失事故は,全国どこの施設でも起きることです.情報漏洩対策ソフトで患者の個人情報を管理することをお奨めいたします.


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-19 02:59 | 医療

厚労省保険局,日本医療機能評価機構運営委員会での産科補償制度改定検討に反対,厚労省での改定検討を表明

b0206085_3543755.jpg2012年4月18日の社会保障審議会医療保険部会で,厚労省保険局は,日本医療機能評価機構運営委員会が産科医療保障制度の改善を検討していることに疑問を示し,保険者側の立場からの制度改定を(日本医療評価機構ではなく)厚労省で検討する考えを示しました。
産科医療保障の支払件数が当初推定より少ないので,掛け金を少なくしようという保険者側の圧力に,厚労省保険局が同調したようです.

しかし,現在,制度を動かしている日本医療機能評価機構の運営委員会を無視して保険者側の立場からの制度改定を進めることは問題です.脳性麻痺の診断を待っている患者もいますし,現行の補償範囲・補償金額の引き上げが望まれます.

キャリアブレイン「産科補償の新制度、厚労省でも検討へ- 掛け金の水準などテーマに」(2012年4月18日)は,次のとおり報じています.
 
「医療保険部会では保険者から、日本医療機能評価機構の運営委員会で新制度を検討することを問題視する声が上がった。小林剛委員(全国健康保険協会理事長)は、これまでに補償対象になった件数が当初の想定を大きく下回っていることに触れ、「支払準備金の余剰の状況によっては、掛け金の見直し、保険者への払い戻しを検討してほしい」との考えを改めて示した上で、「掛け金や補償対象など、制度の根幹にかかわる見直しについては、公的な場で議論する必要がある」と述べた。

 こうした意見を受け西辻課長は、「財源は保険財政なので、そこで議論するのはいかがなものかと思っている」と述べ、厚労省でも新制度について検討する場を設ける方針を示した。
 具体的な検討の場については、同制度の関係者を専門委員に任命して医療保険部会で議論するか、同制度の関係者や保険者などで構成する新たな会議を設置するかを医政局と相談するという。」

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-19 02:21 | 医療