弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 04月 20日 ( 5 )

日弁連,大飯原子力発電所の運転再開に反対する会長声明

b0206085_622155.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年4月20日,大飯原子力発電所の運転再開に反対する会長声明を発表しました.

大飯原子力発電所3号機及び4号機についての運転再開は時期尚早であり、原子力発電所の安全規制の仕組みからみても手続的に正当なものといえない。よって、当連合会は、政府に対し、再稼働を妥当とする判断を直ちに撤回し、同原子力発電所の運転再開をしないよう強く求める,という内容です.

会長声明は,以下の問題点を指摘しています.


◆ 暫定的な安全性の基準について

「(1) 全電源を喪失しても事態の悪化を防ぐ安全対策ができていること」について

「(1)に関する緊急安全対策は、既存の電源とは別の電源を確保するというものにすぎず、これは、これまでの電源確保対策の延長線上の対策であって、福島原子力発電所事故直後の応急処置にすぎない。また、仮に電源が確保されても、配電盤や海水ポンプが破壊されれば冷却機能の確保は図れないことは、福島原子力発電所事故が示したとおりである。」

「(2) 東日本大震災並みに想定値を超えた地震・津波に襲われても、核燃料が損傷しないことを政府が確認していること」について

「(2)については、まず、「東日本大震災並みに想定値を超えた地震・津波」とは、果たしてどのような地震・津波を指すのか明らかでない。また、これについて、安全評価(ストレステスト)の一次評価をもって基準を満たしたとしているが、原子力安全委員長自身が、一次評価では安全性が保障されるわけではないと述べている。」

「(3) 電力会社が、さらに安全を向上させる対策をいつまでに実施するか計画を作っていること」について

「(3)については、実施済みであることを確認するのではなく、いつまでに実施するのか計画を示せば足りるとされており、これでは意味がない。福島原子力発電所事故においてその有用性が示された免震施設の建設や、フィルター付きベントの設置など、事故時の影響を低減する重要な対策は後回しにされている。計画を策定しても、現にその計画が実施されなければ安全性は向上しないことは明らかである。」


◆ 耐震設計審査指針などの見直しがなされていないこと

「福島原子力発電所事故は、事故が起きないようにするためには原子力発電所の耐震安全性の確保こそが重要であることを示したにもかかわらず、その耐震設計審査指針などの見直しは全く実現していない。」



◆ 専門家による検討・国民的議論を経ていないこと

「上記の新しい安全性の基準なるものは、経済産業省及び原子力安全・保安院が実質的に主導し、これに基づき首相及び関係三閣僚によって決定されたものである。公正な専門家による検討や国民的議論を経たものではなく、当然、原子力発電所周辺、さらに広域の地方自治体の合意と理解も得られていない。」



◆ 他の代替手段の検討がなされていないこと

「原子力発電所の再稼働が必要な理由、すなわち、原子力発電所を再稼働しなければならない電力需要上の必要性があるのか、利用可能な電源設備、夏の電力使用ピーク時の電力使用削減策など他の代替手段は全くないのかについての検討も真剣になされたとはいい難い。」

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-20 21:26 | 脱原発

大阪市立大学医学部付属病院,蘇生用バッグの組み立てミス,患者は低酸素脳症に

日刊スポーツ「医療ミスで女性意識不明 器具の弁逆に」(2012年4月20日)は次のとおり報じています.

大阪市立大は20日、医学部付属病院で、白血病で入院中の女性患者(45)の肺に酸素を送るための蘇生器具の使用を誤り、一時心肺停止し、低酸素脳症になる医療ミスがあったと発表した。意識不明の状態が続いており、回復しても脳に障害が残る可能性がある。

 市立大によると、女性は10日夜、自発呼吸ができない状態になり、午後9時45分ごろから約30分間、手動で肺に酸素を送り込む「蘇生用バッグ」を使用。だが、酸素を送り込む弁を誤った部分に取り付けていたため、十分に送れておらず、約15分間心肺が停止した。

 市立大によると、バッグは3月19日に別の患者に使用した後、3人の看護師が分解して洗浄。再度組み立てる際に誤り、酸素が送れるかどうかの確認をしていなかった。

 女性は2009年3月に白血病と診断。昨年11月に細胞を血液に移植する手術を受けたが、今年3月ごろから肺に水がたまるなど呼吸が困難な状態になっていた。

 病院は、19日に大阪府警阿倍野署に事故を届け出た。今後、外部の専門家による調査委員会を立ち上げて原因を調べる。(共同)」


大阪市立大学医学部附属病院における医療事故の発生について」ご参照


調査委員会による原因究明と再発防止策を期待いたします.
たしかに,バッグが正しく組み立てられていても,低酸素脳症になった可能性はありますから,因果関係は未だ不明ですが,重大な事故です.

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by medical-law | 2012-04-20 18:14 | 医療事故・医療裁判

静岡地裁沼津支部,裾野の男児O157訴訟和解報道を読んで

b0206085_5425614.jpg毎日新聞「裾野の男児O157損賠訴訟:発症で不適切処理」県など3者と和解成立 病院側600万円支払い /静岡」(2012年04月19日)は,次のとおり報じています.

「裾野市で06年、幼稚園に通っていた当時3歳の男児が腸管出血性大腸菌O157を発症し、幼稚園を経営する学校法人、治療を受けた病院の医療法人と県の3者に計約9575万円の損害賠償を求めた訴訟は、地裁沼津支部で和解が成立していたことが分かった。

 和解は3月26日付。医療法人が600万円、学校法人が120万円を支払い、県は「迅速で効果的な子どもの感染症対策に取り組む」と表明する内容。県議会は18日の臨時会で、和解案を承認することを議決した。

 訴状によると、男児は06年6月、幼稚園で下痢を発症し早退。保健所はO157の発生の可能性を幼稚園に伝えたものの必要な対策を取らず、幼稚園は男児の保護者に速やかに連絡せず、病院はO157の疑いがありながら不適切な投薬を行い、重い後遺症が残ったとしていた。

 男児の母親(40)は「コメントを差し控えたい」と話した。【西嶋正信、野島康祐】」


「病院はO157の疑いがありながら不適切な投薬を行い、重い後遺症が残った」というまとめでは,注意義務違反の内容とと因果関係と具体的な障害がわかりません.
ただ,この600万円という和解金額から推測すると,治療に問題があるが,仮に適切な治療が行われたとしても結果回避の高度の蓋然性があったとは言えない事案かもしれません.

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by medical-law | 2012-04-20 05:48 | 医療事故・医療裁判

大分大学医学部附属病院の元講師と前医学部長が著者となっている学術論文に不正

b0206085_351498.jpg

大分放送「大分大学病院の元講師論文で画像の不正流用」(2012年4月19日)は,次のとおり報じています.

「大分大学は医学部附属病院の元講師の男性が学術論文の中で不正に写真を流用していたとする調査結果を発表しました。
論文に不正な写真を使用していたとされたのは大分大学医学部附属病院の元講師の男性です。
この元講師は2000年に前医学部長ら4人と共同で腎臓疾患に効果がある科学物質についての論文を発表し、医学博士を取得しました。
しかし論文に不正な写真が使われた疑いが指摘され、大分大学が調査委員会を設置して調べていました。
大分大学は19日調査結果を発表し、元講師が論文の中で、化学物質を投与したラットの腎臓の写真として、何も投与していないラットの写真を流用しねつ造していたと明らかにしました。
大分大学では元講師と前医学部長の処分を検討しています。」


ねつ造と言うからには,写真の不正利用は故意なのでしょう.
論文の価値にも影響するでしょう.元講師の研究者としての信用にも影響するでしょう.

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by medical-law | 2012-04-20 02:58 | 医療

青森市民病院のロタウイルス性胃腸炎による女児死亡訴訟和解報道を読んで

b0206085_312754.jpg毎日新聞「青森市民病院の女児死亡訴訟:市が和解金支払いで合意 /青森」(2012年4月19日)は,次のとおり報じています.

「07年に青森市民病院で当時1歳の女児が医療過誤で死亡したとして、両親が青森市に損害賠償を求めた青森地裁(浦野真美子裁判長)の訴訟で、市が原告側に和解金を支払うことで合意したことが18日分かった。

 原告側代理人によると、原告は同病院が適切な処置を行わなかったとして、約4500万円の損害賠償を請求していた。和解金は市議会の承認を経て7月ごろ支払われる予定。和解の合意は16日で、金額は明らかにされていない。

 訴状によると、女児は07年3月24日、青森市の母の実家で嘔吐(おうと)し、同病院で点滴を受けた。その後も嘔吐や下痢があり、25日に再受診したが、「嘔吐が止まれば下痢があっても来診する必要はない」と嘔吐止めを処方された。下痢は26日も続き、市内の別の病院で「大変危険な状態」と診断され、市民病院に救急搬送されたが、同日夜に多臓器不全で死亡したとしている。【宮城裕也】」


3月24日に,嘔吐による脱水に対し点滴で対処したのは,普通です.

3月25日の「嘔吐が止まれば下痢があっても来診する必要はない」と嘔吐止めを処方された,というのは,もう少し慎重な説明であるべきと思います.
吐くものがなければ嘔吐は一応治まりますが,下痢が続いて,元気がない,ぐったりしている,うとうとしている,などの状態であれば,緊急受診の必要があるでしょうから,慎重な説明をすべきでしょう.

提訴時の報道では,3月26日にも市民病院に行っているのですが,診てもらえず,個人病院を受診して,市民病院に救急搬送され,ロタウイルスによる重い脱水症状を合併したウイルス性胃腸炎と診断されています.
市民病院の医師は,「3月」「1歳の小児」「嘔吐」「下痢」から,ロタウイルス性胃腸炎の可能性も考えたでしょうし,脱水の危険もわかっているはずですから,3月26日には,患児を診るべきでしょう.

日本ではロタウイルス性胃腸炎で年間10~20人死亡していると推定されていますので,入院治療しても必ず救命できたとまでは言えませんが,本件は適切な医療を受けられていないことが明らかです.

谷直樹
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by medical-law | 2012-04-20 02:19 | 医療事故・医療裁判