弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 05月 30日 ( 4 )

企業法務ナビ,【イレッサ訴訟】原告敗訴は妥当だったのか?

企業法務ナビ,「【イレッサ訴訟】原告敗訴は妥当だったのか?」(2012年5月30日)は,次のとおり,「すれすれの敗訴」と評価しています,

「今月25日、大阪高裁は一審での判決を退け、国と会社の責任はないとした。高裁によれば、「添付文書の不備」はなく、「記載を読み取れなかった医師の問題」であるとした。(「」は筆者)この敗訴によって、国とア社から遺族二人への1760万円の賠償支払い判決は退けられた形になった。」

「添付文書の不備云々はすれすれの判断だ。原告は最高裁に持ち込む考えであり、裁判所側は高度な司法判断が問われる。800名以上の死者が出ている深刻な事件であり、歴史に残る裁判なのは間違いない。いずれにせよ、慎重を期した司法判断を望むところである。」
とまとめています.

谷直樹
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by medical-law | 2012-05-30 21:34 | 医療事故・医療裁判

薬害イレッサ,院内集会「薬害イレッサの全面解決を求めて~大阪高裁判決を受けて」

薬害イレッサ原告・弁護団は,2012年5月29日,院内集会「薬害イレッサの全面解決を求めて~大阪高裁判決を受けて」を開きました.
民主党の,川内博史議員,三宅雪子議員,初鹿明博議員,田代郁議員,橋本勉議員,みんなの党の川田龍平議員が出席したそうです.

キャリアブレイン「イレッサ訴訟「救済の投げ捨ては許せない」- 原告・弁護団が抗議集会」(2012年5月30日)は,次のとおり報じています.

「肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟の原告・弁護団は29日、国とアストラゼネカ社に損害賠償を求める原告の訴えを全面的に棄却した大阪高裁の判決に抗議する集会を衆院第二議員会館で開いた。冒頭、あいさつした西日本弁護団の中島晃団長は、「弱者保護、被害者救済という方向性を取ってきたことで、日本の裁判所は国民の信頼を得てきたが、判決はそうした考え方を投げ捨てた点で許せない。最高裁で勝利を勝ち取るため、最後まで全力を尽くす」と強調した。

 また、西日本弁護団の永井弘二事務局長は、「こういった判決を確定させてしまうと、わたしたちの国から薬害をなくすことはできない」と述べた。また、「裁判所の判断とは別に、行政は同じ被害を繰り返さないために、一体何をすればいいのか。被害が生じてしまった原因は何だったのかを明らかにして、改めて予防していかなければならない」と主張した。
 このほか、集会には国会議員も参加。みんなの党の川田龍平参院議員は、「(イレッサ訴訟は)この国の行政そのものを変えていかなくてはいけないという裁判。勝つためにも皆さんと頑張り続けたい」と参加者に呼び掛けた。

 同訴訟をめぐっては、昨年11月の東京高裁判決でも、国とアストラゼネカ社に賠償責任はないと判断。国とア社に対し、遺族2人に計1760万円の支払いを命じた一審判決を取り消し、原告の訴えを全面的に棄却した。東京高裁判決を受け、原告は既に上告しており、25日の大阪高裁判決を受けて、原告は来週中にも上告する予定だ。【津川一馬】」


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by medical-law | 2012-05-30 21:21 | 医療事故・医療裁判

アナフィラキシーショックによる死亡事案で,損害賠償請求訴訟を前橋地裁に提訴しました

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風邪と診断した患者に適応のない抗生剤を点滴し,アナフィラキシーショックによって死亡した事案で,2012年5月29日,前橋地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提訴しました.

朝日新聞「「点滴で夫死亡」医療法人を提訴 妻子,160万円賠償請求」(2012年5月30日)は,次のとおり報じています.

「県内の50代男性が死亡したのは,医師らが観察義務を怠るなどしたためだとして,妻子3人が29日,○○内科(高崎市××町)を運営する医療法人に対し,損害約8千万円のうち160万円の賠償を求める訴訟を前橋地裁に起こした。

訴状によると,男性にはじんましんやアレルギー性鼻炎があった。昨年1月,かぜで○○内科を受診し,抗生剤の点滴注射を受けた約5分後,「アナフィラキシーショック」と呼ばれる薬物過敏反応で苦しんでいるのを別室から戻った看護師が発見。医師の処置後も改善されずに救急車で転院し,2日後に死亡したと主張している。
原告側は「医師はアナフィラキシーショックの危険性がある抗生剤の点滴を指示するにあたり,看護師に少なくとも5分間は異変がないか観察するよう指示する義務があった」と主張。提訴後に会見した代理人の谷直樹,岡村香里の両弁護士は「5分以内に救急処置をとったかが予後を左右する」とした2004年の最高裁判決を根拠に挙げた。

これに対し,被告側代理人の坂本正樹弁護士は「医師や看護師は重篤なアナフィラキシーショックが起こると予見できたわけではない。また,発症後も適切な治療を行った」と反論している。」


記事中の「2004年の最高裁判決」とは,最高裁平成16年9月7日判決(判例時報1880号64頁)のことです.最高裁平成16年9月7日判決は,アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある薬剤を投与する場合には,点滴静注開始後5分間の観察義務を認めました.

この最高裁判決は,看護師が平成2年7月25日午後10時ペントシリン(合成ペニシリン製剤)とミノマイシン(テトラサイクリン系抗生物質製剤,ミノペン点滴静注用の一般名)の点滴静注を開始し,その直後の10時02分ころ病室から退出した事案です.

最高裁平成16年9月7日判決は,
「医学的知見によれば,薬剤が静注により投与された場合に起きるアナフィラキシーショックは,ほとんどの場合,投与後5分以内に発症するものとされており,その病変の進行が急速であることから,アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある薬剤を投与する場合には,投与後の経過観察を十分に行い,その初期症状をいち早く察知することが肝要であり,発現した場合には,薬剤の投与を直ちに中止するとともに,できるだけ早期に救急治療を行うことが重要であるとされている。」
「あらかじめ,担当の看護婦に対し,投与後の経過観察を十分に行うこと等の指示をするほか,発症後における迅速かつ的確な救急処置を執り得るような医療態勢に関する指示,連絡をしておくべき注意義務があり,Y2が,このような指示を何らしないで,本件各薬剤の投与を担当看護婦に指示したことにつき,上記注意義務を怠った過失があるというべきである。」
と判示し,破棄差し戻しとしました.

この最高裁判決から,医師には,看護師に風邪に適応がなくアナフィラキシーショックの危険性がある抗生剤の点滴静注を指示をするにあたり,点滴静注開始後少なくとも5分間は風邪の患者(蕁麻疹・アレルギー性鼻炎がある)のそばを離れず,異変がないか観察することを指示する義務がある,と考えます.
また,医師は,異変後に点滴ルートを抜去せずに(○○内科では点滴ルートが抜去されボスミン静注ができませんでした.),すみやかにボスミン静注を実施するなどアナフィラキシーショック発症後5分内に迅速かつ的確な救急処置を執る義務がある,と考えます.

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by medical-law | 2012-05-30 11:59 | 医療事故・医療裁判

薬害肝炎全国原告団/全国弁護団,「医薬品行政監視・評価第三者組織の設置に関するご報告および要請」

薬害肝炎全国原告団(代表山口美智子),薬害肝炎全国弁護団(代表鈴木利廣)は,2012年5月28日,「医薬品行政監視・評価第三者組織の設置に関するご報告および要請」を総理大臣,厚生労働大臣,各政党に提出しました。

共同通信「第三者組織「政府法案で」 肝炎訴訟原告が意見書」(2012年5月29日)は,次のとおり報じています.

「薬事行政を監視する第三者組織の設置法案を、民主党が議員立法で今国会に提出する方針を示したのを受け、薬害肝炎訴訟の全国原告・弁護団は28日、「国が薬害を繰り返してきた反省を踏まえ、議員立法ではなく、政府法案として提出することが大切だ」との意見書を、野田佳彦首相と小宮山洋子厚生労働相あてに提出した。

 第三者組織をめぐっては、厚労省の検討会が(1)委員は自ら審議事項を発議できる(2)厚労省に資料提出を求め、製薬会社や医療機関の外部情報も収集させる(3)厚労省に薬害防止措置を勧告する-などの権限を盛り込んだ提言と法案を示していた。

 意見書は民主党案では発議権や外部情報収集権などが明示されていないと指摘。「提言を骨抜きにする内容で、私たちが望む組織とかけ離れている」と批判している。」


「医薬品行政監視・評価第三者組織の設置に関するご報告および要請」は,次のとおり述べています.

「1 私たちの望む第三者組織
   私たちは,「最終提言」に示された,薬害再発防止のために活動する,独立性・専門性・機動性を備えた第三者組織を望んでいます。真に薬害を根絶するためには,第三者組織の形だけを作るのではなく,薬害再発防止に向けて役割を果たす,実効性のある組織とする必要があります。

 2 政府提出法案とすることの意義
   厚生労働省(旧厚生省を含む)は,薬害が発生する都度,被害者に謝罪し再発防止を誓ってきました。しかし,残念ながら薬害は繰り返し引き起こされてきました。
   抜本的にこの状況を変えるには,政府の過去の薬事行政に対する反省を踏まえ,厚生労働省が,自らの責任で,自らを監視・評価する第三者組織を設置(すなわち,政府提出法案により設置)することが大切です。そのことが,これまでの薬害発生・拡大に対する反省につながり,薬害再発防止を実効あらしめます。そうでない限り,私たち国民の信頼できる薬事行政にはなりません。
   歴代の厚生労働大臣も,これまで,国と私たちとの基本合意に基づく大臣協議において,今国会に第三者組織を設置するための法案を提出することを,約束してきました。

 3 議員立法案の問題点
   議員立法案は,私たちの望まない内容の法案です。後記表①~⑫のとおり,最終提言が具体的に明示した第三者組織を骨抜きにしています。薬害再発防止の目的もなければ,独立性・専門性・機動性にも問題があり,薬害再発防止に向けた役割を果たせるとは思えません。このような形ばかりの組織を作っても,行政の隠れ蓑になるだけで,薬害の再発防止はできません。
   議員立法案の定める組織は,私たちの望んでいる第三者組織ではありません。」


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谷直樹
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by medical-law | 2012-05-30 08:44 | 医療