弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 06月 02日 ( 3 )

BMJ掲載論文,アクトスを2年以上服用すると,膀胱がんの発症リスクが倍に上昇する

b0206085_10295838.jpgロイター「カナダ研究者、武田「アクトス」のがん発症リスクに関する論文発表」(2012年 6月 1日)は,次のとおり報じています.

「英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル電子版は31日、ピオグリタゾンを含有する武田薬品工業(4502.T: 株価, ニュース, レポート)の糖尿病治療薬「アクトス」に関するカナダの研究者らによる論文を掲載した。
論文は、アクトスの服用によって膀胱(ぼうこう)がんが発症する絶対リスクはなお低いものの、アクトスを2年以上服用すると、がんの発症リスクが倍に上昇すると指摘している。

論文は、1988─2009年に新たに糖尿病治療を受けた英国の患者11万5000人余りの記録を分析し、リスクを数量化している。

分析では、2年もしくはそれ以上にわたってアクトスが投与された場合、複数年で10万人当たり88件、2万8000ミリグラム(mg)以上を服用した患者では137件の追加的症例が見られたことが分かった。

アクトスと膀胱がんの関連性に対する懸念は昨年、欧米の監督当局がリスクについて警告したことで注目を集め、同薬の売り上げに影響を与えた。

武田は論文について、2型糖尿病治療におけるピオグリタゾンを含有する製剤の有用性に自信を持っており、これまでと同様、ピオグリタゾンを含む全ての自社製品に関する安全性と忍容性の評価を継続するとともに、患者の安全性を最優先に考え、適切に対応していく、とのコメントを発表した。」


The use of pioglitazone and the risk of bladder cancer in people with type 2 diabetes: nested case-control study」のAbstractは,以下のとおりです.

Objective To determine if the use of pioglitazone is associated with an increased risk of incident bladder cancer in people with type 2 diabetes.

Design Retrospective cohort study using a nested case-control analysis.

Setting Over 600 general practices in the United Kingdom contributing to the general practice research database.

Participants The cohort consisted of people with type 2 diabetes who were newly treated with oral hypoglycaemic agents between 1 January 1988 and 31 December 2009. All incident cases of bladder cancer occurring during follow-up were identified and matched to up to 20 controls on year of birth, year of cohort entry, sex, and duration of follow-up. Exposure was defined as ever use of pioglitazone, along with measures of duration and cumulative dosage.

Main outcome measure Risk of incident bladder cancer associated with use of pioglitazone.

Results The cohort included 115 727 new users of oral hypoglycaemic agents, with 470 patients diagnosed as having bladder cancer during follow-up (rate 89.4 per 100 000 person years). The 376 cases of bladder cancer that were diagnosed beyond one year of follow-up were matched to 6699 controls. Overall, ever use of pioglitazone was associated with an increased rate of bladder cancer (rate ratio 1.83, 95% confidence interval 1.10 to 3.05). The rate increased as a function of duration of use, with the highest rate observed in patients exposed for more than 24 months (1.99, 1.14 to 3.45) and in those with a cumulative dosage greater than 28 000 mg (2.54, 1.05 to 6.14).

Conclusion The use of pioglitazone is associated with an increased risk of incident bladder cancer among people with type 2 diabetes.

なお,MTProは,「ピオグリタゾンによる膀胱がんリスク認められず 英・21万例のコホート研究」との見出しで,「2型糖尿病患者への長期投与により膀胱がんリスクが増加するとされたピオグリタゾン。しかし,同薬のベネフィットがリスクを上回る患者がいると判断した欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)は,昨年(2011年)7月に欧州での使用継続を決定した(関連記事)。その欧州から,約21万例の2型糖尿病患者を対象にした英コホート研究の成績が報告された(Br J Clin Pharmacol2012年5月11日オンライン版)。Ninewells病院・医科大学薬学部のLi Wei氏らによると,ピオグリタゾン投与患者と他の糖尿病治療薬投与患者の間に膀胱がん増加の有意な差は認められなかったという。」と伝えています.

Pioglitazone and bladder cancer: A propensity score matched cohort study.」のAbstractは,以下のとおりです.

AIM: To examine whether exposure to pioglitazone use is associated with increased incidence of bladder cancer in patients with type 2 diabetes mellitus.

METHODS: A cohort study was done in the General Practice Research Database (GPRD) between 2001 and 2010. 207,714 patients aged ≥40 years with type 2 diabetes were studied (23,548 exposed to pioglitazone and 184,166 exposed to other antidiabetic medications but not pioglitazone). The association between pioglitazone and risk of bladder cancer was assessed by a Cox regression model. A propensity score matched analysis was done in a group of patients without missing baseline characteristics data.

RESULTS: 66 and 803 new cases of bladder cancer occurred in the pioglitazone and other group respectively (rates of 80.2 (95%CI 60.8-99.5) and 81.8 (95%CI 76.2-87.5) per 100,000 person-years respectively). Pioglitazone did not increase the risk of bladder cancer significantly compared with other antidiabetic drugs treatment group, (adjusted hazard ratio (HR), 1.16, 95%CI 0.83-1.62). In a matched propensity score analysis in which both groups had similar baseline characteristics (17,249 patients in each group), the adjusted HR was 1.22 (95% CI 0.80-1.84).

CONCLUSIONS: The results suggest that pioglitazone may not be significantly associated with an increased risk of bladder cancer in patients with type 2 diabetes.

アクトスの膀胱がん発症リスクは,十分明確と思います.
問題は,アクトスの服用によって膀胱がんが発症する絶対リスクはなお低いものの,アクトスを2年以上服用するとがんの発症リスクが倍に上昇すること(危険性)をどのように評価するか,です.本来,患者の安全性を最優先に考えると長期使用を避けることにつながるでしょう.

また,アクトスで忘れてはならないのは,心毒性(心不全リスク)の問題です.心毒性(心不全リスク)を評価すれば,使用を控える方向になるのではないでしょうか.

谷直樹
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by medical-law | 2012-06-02 01:43 | 医療

宮崎大学医学部附属病院,「臨床倫理コンサルテーションチーム」を設置

NHKニュース「延命治療で助言へ医療倫理チーム」(2012年6月1日)は,次のとおり報じています.

「回復する見込みのない患者の延命治療について、宮崎大学医学部附属病院は、医療倫理の研究者による専門チームを設置し、1日から現場の医師に助言を行っていくことになりました。

回復する見込みのない患者の延命治療を巡っては、厚生労働省が治療を中止したり、変更したりする際には、患者本人の意思決定を基本にすることなどとした指針をまとめています。
しかし、指針では、終末期の定義やどのような容体の場合に治療を中止してよいかなど具体的に定めておらず、延命治療の中止の在り方が各地の病院で問題になっています。
こうしたなか、宮崎市の宮崎大学医学部附属病院は、延命治療の方針を検討し、現場の医師や看護師に助言を行う「臨床倫理コンサルテーションチーム」を1日付けで設置しました。
チームはこの病院にいる医療倫理が専門の教授3人以上で組織されていて、「救急患者の余命が1週間程度で家族からの申し出もあった場合に初めて治療の中止を検討する」といった独自の基準を作成し、法律上の問題もないか検討したうえで中止などの助言を行うということです。
医療倫理に詳しい日本生命倫理学会の大林雅之会長は「現場の医師たちが倫理的な問題を抱えたときに直ちにサポートする仕組みは日本の病院では非常に珍しい。こうした取り組みが広がることを期待したい」と話しています。」


これは,板井孝壱郎先生のお力でしょう.

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by medical-law | 2012-06-02 01:25 | 医療

神戸市立医療センター中央市民病院,隣の正常な歯を抜歯する

日刊スポーツ「親知らずと勘違い隣の奥歯抜く」(2012年6月1日)は,次のとおり報じています.

「神戸市民病院機構は1日、神戸市立医療センター中央市民病院で昨年6月、親知らずの治療に来た神戸市の10代後半の女性について、隣の正常な歯を抜歯する医療ミスがあったと発表した。

 同機構によると、親知らずは歯肉に完全に埋没し、エックス線撮影による十分な確認を怠った男性医師が左上顎の奥歯を親知らずと勘違いした。

 女性のかかりつけの歯科医が指摘して発覚。男性医師は昨年11月に口頭で厳重注意を受けた。

 再発防止策として病院は抜歯の際、2人以上の医師で部位について声を出して確認するとした。(共同)」


時々,このように,抜かなくてよい歯を抜かれたという相談があります.

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by medical-law | 2012-06-02 01:09 | 医療事故・医療裁判