弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 06月 05日 ( 2 )

豊橋市民病院,愛知県弁護士会の医療ADRで手術ミス事案について和解(報道)

東海日日新聞「手術ミス約2000万円で和解」(2012年6月5日)は次のとおり報じています.

 「豊橋市は4日、市民病院(同市青竹町)で手の手術を受けた女性(50)の右手の指の一部に後遺症が出たのは手術ミスが原因だったとして、患者側に賠償金約2000万円を支払うことで和解したと発表した。

 同病院によると女性は、両手のひらの神経と靭(じん)帯が接触して指にしびれや痛みが出る症状を発症し、2010年1月に同病院整形外科を受診。手のひらを切開し神経を圧迫している靭帯を切除する手法で同年3月に左手、6月に右手の手術を受けた。

 その際、執刀した男性医師(当時29)が誤って右手の神経の一部を損傷。再手術で傷つけた部分をできるだけ縫合したが、親指と人差し指が曲がりにくくなる後遺症が残った。感覚が鈍り、ボタンをかけづらくなるなど日常生活にも支障を来し、障害者手帳を取得した。

 市は昨年夏、手術ミスで障害を負わせたことを認め、女性に謝罪。女性は同病院に損害賠償を求め、代理人の弁護士を通じて協議した。愛知県弁護士会の専門機関に仲裁を申し立てた結果、同病院が女性に賠償金1980万円を支払うことで和解が成立した。

 男性医師は当時、研修医2年間を含め同病院5年目で、同様の手術経験はあった。院内での調査に対し、男性医師は「靭帯を切る感覚はあったが、神経を傷つけたとの認識はなかった」と話しているという。
 同病院の取り決めでは、手術でペアを組む医師のうち1人は専門医の資格を持つことが定められているが、今回、男性医師ともう1人の医師はともに専門医資格を持っていなかった。

 医療事故を受け、同病院は再発防止のため、手術の際に必ず1人は専門医を入れるルールを徹底することを決めた。

 同病院の杉浦康夫事務局長は「医療安全は病院の責務。事故はあってはならないことで、患者さんに申し訳ない」と陳謝。その上で「改めて全職員で意識を新たにし、日々の医療に取り組んでいきたい」と述べた。(中嶋真吾)」


愛知県弁護士会の医療ADRで和解が成立したことは注目されます.

ただ,今の段階では,一般に,責任を認めている事案について,賠償額を決めるに際し,医療ADRが利用される傾向があるようにみうけられます.
この点,東京3弁護士会の医療ADRでは,必ずしもそうではなく,当事者間の話し合いによる医事紛争の解決をめざし,もっと広い利用がなされているように思います.東京3弁護士会の運用は,双方当事者が同席した話し合いが中心になります.

ともあれ,医療ADRは,あっせん人と双方当事者の話し合い解決へ向けた理解が必要ですが,医事紛争の解決方法として有用と思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-06-05 05:37 | 医療事故・医療裁判

長崎大学病院・名古屋市立大学病院・信州大学医学部附属病院・川内市医師会立市民病院で患者個人情報を紛失

◆ 長崎大学病院,また患者個人情報紛失,三菱重工業株式会社長崎造船所病院でも患者個人情報紛失

msn産経「長崎大病院でまた患者情報紛失 872人分」(2012年6月4日)は,次のとおり報じています.
 
「長崎大病院(長崎市)は4日、退職した40代の男性医師が、患者872人分の個人情報を記録したUSBメモリーを紛失したと発表した。漏えいや不正使用は確認されていない。

 病院によると、医師は研究のため、平成5年4月~21年1月に受診した患者の氏名や病名などをUSBメモリーに記録していた。4月15日に紛失に気づき、5月7日に病院に報告した。

 医師は11年から長崎大病院に勤務。20年6月に別の病院に移ったが、その後も研究のため患者のカルテなどを閲覧する権限を得ていた。

 長崎大病院では5月2日にも、40代の女性医師が患者103人分の個人情報の入った外付けハードディスクを紛失していたことが明らかになっていた。病院は「今後は退職した医師にも指導を重ね、再発防止を徹底したい」としている。」


朝日新聞「患者情報872人分持ち出し、紛失 長崎大病院の元医師」(2012年6月4日)によれば,「退職後も長崎大病院で研究を続けているため患者情報を閲覧する権限はあったが、許可なく持ち出すことは禁じられていた。」とのことです.

長崎新聞「患者情報入りのUSBを紛失」(2012年6月5日)は,次のとおり報じています.

「長崎大学病院(長崎市坂本1丁目、河野茂院長)に勤務していた40歳代の男性医師が、同病院などで受診した患者の個人情報計896人分が入ったUSBメモリーを紛失していたことが4日、分かった。現時点で情報漏えいによる被害は確認されていないという。

 紛失したのは、同大学病院の872人分(1993年4月~2009年1月)と三菱長崎病院(同市飽の浦町、長部雅之院長)の24人分の氏名や疾患名などを記録したUSBメモリー1個。

 同日会見した長崎大学病院によると、医師はUSBメモリーを実家の鍵と共に持ち歩いており、4月15日に実家に帰った際に紛失に気付いた。自宅マンションなどを捜したが見つからず、23日に警察や利用していた交通機関に届け出て、5月7日に同病院に紛失の事実を報告した。

 医師は99年5月から長崎大学病院に勤務。08年6月に退職したが、その後も研究のため同病院を訪れ、患者のカルテを見ることができた。一方、昨年秋ごろまで勤務していた三菱長崎病院では、パソコンを無断で持ち込み、患者のデータを入力していたという。両病院とも患者に対して文書などで説明し謝罪。三菱長崎病院も6月4日、ホームページで事実関係を公表した。

 長崎大学病院では昨年12月にも女性医師が患者の個人情報が入ったハードディスクを紛失している。安岡彰病院長特別補佐は「度重なる個人情報の紛失が発生したことを厳粛に受け止め、退職者などについても指導を強化する」と謝罪。三菱長崎病院の担当者は「私用パソコンの持ち込みやデータの院外への持ち出しなどについて確認を徹底する」としている。」


◆ 名古屋市立大学病院,患者個人情報紛失

読売新聞「名古屋市立大病院で患者情報入ったメモリー紛失」(2012年5月23日)は,次のとおり報じています.

 「名古屋市立大病院(名古屋市瑞穂区)は23日、内科の患者計582人分の名前や病名などが記録されたUSBメモリーを紛失したと発表した。

 同日までに、情報が悪用された形跡はないという。

 病院によると、メモリーには2011年度の内科の入院患者189人分の病名、入退院日など、外来患者393人分の病名、生年月日、内服薬の種類などが記録されていた。

 同年度に内科の病棟医長だった男性医師(44)が自宅などで作業をするため、メモリーを小銭入れに入れて持ち歩いていたが、今月21日に小銭入れからなくなっていることに気づいた。

 同病院では個人データを持ち出す際にはパスワードを設定することにしているが、医師は外来患者分にパスワードを設定していなかった。同病院は「該当の患者に電話と手紙で謝罪し、再発防止を図る」としている。」


◆ 信州大学医学部附属病院,患者個人情報紛失

毎日新聞「個人情報:患者8人の患部画像、顔写真入りSDカード紛失??信大病院 /長野」(2012年5月23日)は,次のとおり報じています.

松本市旭の信州大医学部付属病院は22日、皮膚科の患者8人の患部の画像データが入ったSDメモリーカード1枚を紛失したと発表した。カードには8人のうち3人の顔が写っていた。患者の氏名など個人情報は記録されていない。今のところ、悪用された情報はないという。

 病院によると、9日午後2時ごろ、院内の撮影室で、皮膚科の医師が患者の患部をデジタルカメラで撮影しようとしたところ、データが満杯になり、SDカードを交換。取り出したカードをそのまま室内のかごに放置し、同日午後4時ごろ、紛失に気が付いた。紛失したカードには患者8人の各5枚程度の患部の画像を保存していた。撮影室は施錠していなかった。

 病院は22日、患者に電話や文書で謝罪した上、松本署に遺失物届を出した。本郷一博・副病院長は記者会見で「セキュリティー機能があるカメラを使うなど再発防止策を検討したい」と陳謝した。【大島英吾】」

◆ 川内市医師会立市民病院,患者個人情報紛失

川内市医師会立市民病院の職員が,川薩地区脳卒中連携パスを使用している患者908名(院外の患者個人情報を含む)の氏名,性別,年齢,住所,電話番号,発症日,病名,転院日,転院先,担当者名(医師,看護師,MSW,薬剤師,栄養士,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士),患者の状態(治療内容,障害の程度など)などの個人情報をバックアップ用にUSBメモリに保存し,担当者の机の施錠されていない引き出しに保管していましたが,本年1月初旬に紛失しました.担当者は,3月初旬に担当部署長に報告し,4月18日に病院長に報告がありました.

川内市医師会立市民病院は,再発防止のために
「(1)個人情報保護に関する規定を見直し,患者様の個人情報をUSBメモリに保存することを禁止しました。
(2)上記に加え,さらにセキュリティを強化するため,院内のすべてのパソコンについて,登録されたUSBメモリ以外以外は一切使用できなくすい仕組みを導入することを決め,発注および導入準備中です。この仕組みはUSBメモリを開く際もパスワードを入力しなければ開くことができないもので,診療科あるいは部門の所属長のみ病院から貸与し,施錠できる場所に保管・管理するよう周知徹底いたします。
(3)当院に勤務する全職員には入職時に「個人情報保護に関する誓約書」を提出させていますが,今回の件を受け,改めて誓約書の提出を求めることをいたしました。」
とのことです。(「患者様の個人情報が記録されたUSBメモリの紛失について(お詫び)」ご参照)

◆ 有識者会議,医師には罰則を免除する方向で検討

2012年5月24日に社会保障分野サブワーキンググループ」と「医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」の合同の有識者会議に,厚労省は,個人情報漏えいについての罰則を現行の個人情報保護法などの規定より強化することを提案しました.医師には罰則を免除する方向で検討されています.

◆ 感想

医療法人社団善仁会小山記念病院の職員が,twitterに,患者として来院したプロサッカー選手のことを書き込んだように,故意の個人情報流出もありますが,過失による個人情報流出が大半ですから,個人に対する罰則強化より,USBメモリーにコピーする際,強制的に暗号化するシステムを導入するほうが有用と思います.

ちなみに,報道によると,昨年6月以降,個人電磁情報の紛失事故は,以下の施設で起きています.

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター
川内市医師会立市民病院

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院
長崎大学病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院
広島大学病院
福岡大学病院
長崎大学病院
三菱重工業株式会社長崎造船所病院

2012年5月
信州大学医学部附属病院
名古屋市立大学病院

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by medical-law | 2012-06-05 04:59 | 医療