弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 07月 07日 ( 1 )

医事関係訴訟に関する統計,平成23年速報値

最高裁判所のサイトに,「医事関係訴訟に関する統計」が掲載されていますが,平成23年速報値をいれてアップデートされました.

1.医事関係訴訟事件の処理状況及び平均審理期間

平成23年の,医事関係訴訟事件の新受任件数は767件,終了事件数は801件でした.
平均審理期間は25.1月でした.

平成16年以降,医事関係訴訟は減少し続けています.
医事関係訴訟の減少から医事紛争自体が減少している,という推測もあるかもしれませんが,現実の医療事故の報告数はむしろ増加していますし,私は医療事故が減少しているという感覚はもてません.
平成16年以降審理期間は短くなり医事関係訴訟提訴のハードルが低くなっているはずですが,同時に,患者側勝利率が減少の傾向にあることから,医事関係訴訟が減少していると考えます.
患者側の裁判所への期待,信頼が減少していることを示唆する数字と受け止めるべきと考えます.

2.医事関係訴訟事件の終局区分別既済件数及びその割合

判決36.7%,和解50.7%,請求の放棄0.6%,訴えの取下げ3.9%,その他8.1%です.
平成22年と比べると和解がわずかに減少し,その分判決がわずかに増えました.
請求の放棄,訴えの取り下げは,おそらくは本人訴訟などででしょうが,無理して提訴しても医事関係訴訟は維持できないことを示唆しています.

3.地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率

平成22年の認容率(患者側勝訴率)は,20.2%でしたが,平成23年の認容率(患者側勝訴率)は,25.4.%まで回復しました.平成21年の25.3%とほぼ同じです.
なお,認容率(患者側勝訴率)は,判決の中での割合です.和解で終わるものが半数以上で,その和解のなかには,患者側の実質勝訴的な内容の和解もかなり含まれていますので,この数字が一人歩きして患者側の泣き寝入りを誘発することのないよう願います.
また,医事関係訴訟の認容率の低さからただちに裁判所のスタンスが一方に偏っているなどと申し上げることはできませんが,少なくとも判決の場合,裁判所が患者側に求める立証のハードルは高く,そのような高いハードルを課せられている患者側としては相応の覚悟が必要な状況が続いている,と思います.提訴前に立証の見込みを慎重に調べる「調査」が重要です.

4.医事関係訴訟事件の診療科目別既済件数

内科,外科,精神科(神経科),産婦人科,歯科が上位5位で,この3年順位も変わっていません.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-07 09:44 | 医療事故・医療裁判