弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 07月 13日 ( 2 )

日弁連,東京電力値上げ申請についての会長声明

東京電力は,家庭用電気料金の10.28%の値上げを申請しました.
その算定根拠が不合理であることは各方面から指摘されています.

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年7月12日,「東京電力値上げ申請についての会長声明」を発表し,次のとおり指摘しました.

「東京電力はホームページにおいて、経済産業省令「一般電気事業供給約款料金算定規則」に則って算定したものと反論している。

しかし、東京電力は、同社に大きな帰責がある原発事故に起因する賠償責任を負い、既に原子力損害賠償支援機構から、2.4兆円もの資金交付を受け、さらに1兆円の資本注入がされ、形式的に債務超過を免れているに過ぎない状況である。したがって、同社の従来株主も新株主である国も、消費者の負担増によって配当を受けることはもちろん、内部留保によって株価が上昇することを期待することはできないのであるから、東京電力においては、もともと配当と内部留保の原資として認められている自己資本報酬を原価算入する根拠を欠いているのである。

したがって、現在の東京電力において、平時の電力料金算定ルールである上記規則に基づいて、自己資本報酬を電気料金原価に算入することは正当化できないことはいうまでもなく、消費者委員会が強く疑問を呈しているのは当然である。

さらに、東京電力及び経済産業省は、実質的な事業報酬計上の必要性として、特別負担金の拠出を挙げている。すなわち、福島原発事故の損害賠償を国が資金交付という形で肩代わりした分を、事業報酬により得た利益で返還するという。
しかし、現実には、事業報酬に相当する金額を特別負担金として拠出するといった明確なルールは、どこにも存在しない。

仮に、自己資本報酬相当額の電気料金算入を認める場合には、少なくとも自己資本報酬相当額が、同社の利益に回らず、特別負担金の拠出に充てられることが明確に約束される必要があるが、この点について、消費者委員会が今後の課題として「事業報酬と資金調達コストの差分や経営努力の結果生じた原価と実績の差分については最優先で特別負担金の返済に充てられることを事前に確認し、また事後にも検証を行う」と指摘しているとおりである。

しかし、現時点では東京電力及び経済産業省はその明確化を拒んでいるのであるから、自己資本報酬の電力料金原価への算入を認めることはできないことも当然である。

最後に、他人資本報酬率についても、東京電力は、過去10年にわたり、現実に1.61%もの利息を支払った形跡がなく、さらに現状においては国の支援無くして東京電力が融資を受けることは不可能である。国の保証を前提にした利子率を前提とする1%強まで利率を圧縮すべきである。実質破たん企業である東京電力において、貸し手責任を免れた債権者の利息相当額の全額を消費者が負担する合理性は存在せず、国の保証によって利息を極小化できる以上、その範囲でしか電気料金への算入は認められない。

当連合会は、以上の理由により、今回の値上げ申請においては、事業報酬のうち2、000億円余りについては、明らかに電気料金原価への算入を認めるべきではなく、これを考慮すれば値上げ率を更に圧縮できると考える。よって、経済産業大臣に対し、消費者委員会及び上記当連合会の指摘を十分に踏まえた上で、判断を行うことを求める。」


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-07-13 17:53 | 弁護士会

福岡高裁平成24年7月12日判決,個人情報漏洩で病院の責任を認める(報道)

毎日新聞「患者情報漏えい:病院責任、2審は認定」(2012年07月13日)は,次のとおり報じています。

「難病の少女の病状を看護師から他人に漏らされて精神的苦痛を受けたとして、大分市の母親が同市内の整形外科病院の院長に、慰謝料など330万円の支払いを求めた訴訟で、福岡高裁(犬飼眞二裁判長)は12日、請求を棄却した1審・大分地裁判決を変更し、病院側に110万円の支払いを命じた。

 判決によると、母親は同市内で飲食店を経営。娘が難病のユーイング肉腫で病院に入院していた08年夏、店の男性客から突然「娘さん、あと半年の命なんやろ」と言われた。母親からの苦情を受け、病院側が調査した結果、この客は少女の担当看護師の夫で、看護師が病状を漏らしたことが分かった。少女は同年12月、19歳で亡くなった。

 大分地裁は、病院が個人情報の管理規程を作り、看護師に守秘義務に従うよう誓約書を提出させていたことから「病院に過失はない」と請求を退けたが、福岡高裁は「看護師が夫に患者の個人情報を漏らしていたのは今回だけではなく、病院側の指導や注意喚起が不十分だった」と判断した。【遠藤孝康】」


看護師は,患者情報の漏洩について不法行為責任(民法709条)を負い,病院は使用者としての責任(民法715条1項)が問題になります。

民法715条1項は,「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定めています。

(1)使用者(病院)が被用者(看護師)の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたか,(2)相当の注意をしても損害が生ずべき場合でであったか,が問題になります。これらの立証責任は使用者(病院)側にあります。
例えば,病院が,個人情報保護法に従って内規を設けていても,それだけでは,相当の注意をしたことにはなりません。
誓約書だけで監督について相当の注意をしたという大分地裁の判断は,使用者責任についての裁判判に照らし,相当ではありません。福岡高裁の判断が適切です。

なお,最高裁平成14年7月11日判決(宇治市住民基本台帳漏洩事件)は,宇治市が乳幼児検診システムの開発を民間業者に委託したところ,再々委託先のアルバイト従業員が住民21万人分の台帳をコピーして名簿業者に渡した事案で,住民一人あたり1万円の損害賠償が認めました。
ちなみに,弁護士,裁判官は,家庭内で仕事の話をしません。NHKのドラマで,裁判官が妻に事件の内容を話す場面がありましたが,現実にはあり得ません。
法律事務所の事務局は,守秘義務を厳正に守る人というのが,採用の絶対必要条件です.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-07-13 11:33 | 医療