弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 07月 27日 ( 4 )

日弁連,「裁判所法の一部を改正する法律案の成立に関する会長声明」

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年7月27日,「裁判所法の一部を改正する法律案の成立に関する会長声明」を発表しました.

本日、司法修習費用に関する裁判所法の一部を改正する法律案が、政府提案に対し、修正を加え、可決成立した。

本改正は、司法修習費用の貸与制を前提に経済的困窮者への返還猶予を認めるものであるが、国会審議において、

1 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律の一部を改正して、学識経験を有する者等により構成される合議制の組織の意見等を踏まえつつ、1年以内に法曹養成制度について検討を加えて一定の結論を得た上、速やかに必要な措置を行う、

2 法曹養成制度の検討においては、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえつつ、検討が行われるべきである、

との重要な修正が付加された。

当連合会は、法曹三者統一修習制度の下で厳しい修習専念義務を課される司法修習生の身分保障として長年維持されてきた給費制の存続を一貫して主張してきたところであり、今国会で、法曹養成制度の全般的な検討の間、給費制を暫定的に存続させる内容の公明党修正案が衆議院法務委員会で否決されたことは、遺憾である。

しかし、上記修正部分で、今後行われる法曹養成制度の検討において「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点」と「法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえ」ることが明記され、国会での質疑で将来の給費制復活も排除されていない旨の答弁がなされたことは、一定程度評価しうる。

また、法科大学院を中核とする法曹養成制度は、法科大学院入学者の急減、司法試験合格者の急増による司法修習終了者の「就職難」等、深刻な問題に直面しており、上記修正において法曹養成制度について合議制の組織で1年以内に検討を加えて一定の結論を得たうえ、速やかに必要な措置を行うとされたことは、時宜にかなったものである。

当連合会は、本年3月に「法曹人口政策に関する提言」を、本年7月に「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」を各々公表し、司法試験合格者数をまず1500人に減員し法曹人口増加のペースを急増から漸増に転換すること、法曹養成教育の質を維持・向上させるために法科大学院の統廃合と学生定員・入学者総数の大幅な削減を促進すること等の法曹養成制度全般に関する改善策を取りまとめたところである。

当連合会は、今回の裁判所法改正案の修正に尽力された関係各位に敬意を表するとともに、新しい合議制の組織が速やかに検討を開始し、現在深刻な問題に直面している法曹養成制度の具体的な改善方策を取りまとめ、実施されるよう期待するものである。」


公務員の人件費を削減しようとする時勢に,司法修習生を増やせば,どうなるかは自明です.
司法修習生を増員した結果,どのような事態が生じたかも明らかになっています.
法曹養成制度の具体的な改善方策は,法科大学院と司法試験受験資格を切り離すこと以外にありません.
その点を言わない(言えない?)この声明は,わかりにくいものになっていると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-27 20:58 | 弁護士会

宮崎日日新聞社説,「喫煙率削減目標 禁煙促し国民全体で共有を」

宮崎日日新聞社説「喫煙率削減目標 禁煙促し国民全体で共有を」(2012年7月27日)は,次のとおり述べています.

「たばこが原因で、毎年多くの日本人が亡くなると推定されている。政府は、成人男女の平均喫煙率を現在の約20%から2022年度までに12%へ削減する数値目標を初めて政府の対策に組み込んだ。閣議決定した今後5年間の新しい「がん対策推進基本計画」と、13~22年度の国民健康づくり計画「健康日本21」に明記した。

 喫煙率削減目標を政府が掲げることは、日本も批准している世界保健機関(WHO)たばこ規制枠組み条約に沿うもので、画期的といえる。

■多くの疾病の原因に■

 厚生労働省は1999年と2006年、07年に喫煙率の半減目標を決めようとした。しかし売り上げ減少を懸念するたばこ業界が強く反発、たばこ事業を所管する財務省や国会議員らの反対もあり、そのたびに断念に追い込まれたいきさつがある。

 厚労省の国民健康・栄養調査では、禁煙を希望する喫煙者は4割。「希望者全員を禁煙させる」として、現状から4割削減の数値目標が算定された。「喫煙者たちの希望」という根拠を示したことが反対論を和らげたといえる。

 新しいがん対策推進基本計画では、受動喫煙にも初めて数値目標を示した。たばこを吸わないのに月1回以上受動喫煙にさらされる人の割合を22年度までに、飲食店で現在の50%から15%に、行政や医療機関ではゼロを目ざす。

 家庭で毎日受動喫煙させられる人は、現在の11%から10年間で3%まで下げる。また受動喫煙のない職場を実現するとした。

 たばこはがんの原因ともなり、心筋梗塞など多くの疾病をもたらすといわれる。健康を害する受動喫煙の危険も、禁煙すれば確実になくなる。喫煙率削減は国民全体で共有したい。

■まずは分煙を徹底■

 1990年代から航空機や鉄道、タクシーなど公共交通機関、劇場や競技場が徐々に禁煙になってきた。成人男性の喫煙率は60年代の80%以上から減り続け、今では40%を切った。それでも働き盛りの男性喫煙率は先進国の中で高い水準だ。

 たばこをやめたい人には禁煙治療という方法もあり、2006年から保険診療で受けられるようになった。薬局で買えるパッチやガムの禁煙補助薬もある。歯科でも受診できるようにするなど治療を充実するのが望ましく、健康診断の際に、医師らが喫煙者に禁煙を働き掛けることも有効だろう。

 しかし、たばこはやめたくても簡単にはやめられない。ニコチンへの依存度が強いからだ。ただ、喫煙者は一服の効果を求めており、たばこを吸わない人が喫煙者をあからさまに差別するような社会であってはならない。

 まずは分煙を徹底することが大切。そして、たばこをやめたいと願う喫煙者が少しでも多く禁煙する。そうすることで喫煙率削減の目標に近づけたい。」

タバコを憎んで,喫煙者を憎まず.健康を蝕む喫煙を止めたい,と思っている4割の喫煙者に喫煙を止めるよう支援することが重要です.また,喫煙を止めたいとすら思わない人たちは,強い依存症状がある人たちです.この人たちにも,依存性を脱してもらわねばなりませんが,容易なことではありません.
少なくとも,当面,喫煙しない人たちが受動喫煙の被害をうけないよう,徹底した分煙は絶対不可欠でしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-27 20:46 | タバコ

日弁連,「国会及び政府の事故調査報告書についての会長声明」

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年7月27日,国会及び政府の事故調査報告書についての会長声明」を発表しました.

7月5日の「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(国会事故調)の報告書と,7月23日の「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(政府事故調)の最終報告書について,次のとおり述べています.

「二つの報告書が一致して認定している点は、東京電力と国による事前の津波対策とシビアアクシデント対策が不適切であり、本件事故が東京電力と国による人災であるという点である。二つの公的な事故調査報告書の結論がこの点で一致したことは、今後の事故を巡る法的な責任を考える上でも決定的に重要な事実である。とりわけ国会事故調の報告書は、東京電力について「規制された以上の安全対策を行わず、常により高い安全を目指す姿勢に欠け」、「原子力を扱う事業者としての資格があるのか」との疑問を呈し、規制機関に対しては、「規制当局が事業者の虜(とりこ)となり、規制の先送りや事業者の自主対応を許すことで、事業者の利益を図り、同時に自らは直接的責任を回避してきた」とし、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊が起きた」として、何度も事前に対策を講じる機会があったことに鑑み、「今回の事故は『自然災害』ではなくあきらかに『人災』である」と断定している。当連合会も、この認識を共有するものである。

次に、二つの報告書が結論において食い違いを見せている二つの点についてコメントする。第1点は事故原因に津波だけでなく地震が関連しているかどうかである。国会事故調報告書の基本的な考えは、事故の推移と直接関係する重要な機器・配管類のほとんどが、この先何年も実際に立ち入ってつぶさに調査、検証することのできない原子炉格納容器内部にあることから、原因の特定が困難であるとしつつ、事故の主因を津波のみに限定すべきでないとして、具体的な根拠を挙げ、「特に1号機の地震による損傷の可能性は否定できない」としている。これに対して、政府事故調は最終報告書において、1号機について「地震発生直後から津波到達までの間、その閉じ込め機能を損なうような損傷を生じた可能性は否定される」としたが、「注」の中で、「閉じ込め機能を喪失するような損傷に至らないような軽微な亀裂、ひび割れ等が生じた可能性まで否定するものではない」として、国会事故調の見解を否定するものではないことを示した。国会事故調は津波に原因を限局していた昨年12月の中間報告における政府事故調の立場について「既設炉への影響を最小化しようという考えが東電の経営を支配してきたのであって、ここでもまた同じ動機が存在しているようにも見える」と厳しく指摘していたところであり、政府事故調が軽微とはいえ損傷を否定しなかったことには重大な意味がある。

もう一つの点は「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)の情報公開の遅れをどのように評価するかについてである。本件事故では、原子炉が炉心溶融を起こしており、放射性物質が広範にまき散らされる危険性を持っているという基本的事実が秘密にされた。そして文部科学省などはSPEEDIにより、大気中の放射性物質の拡散予測を行っており、米軍には3日後に報告されていたが、これらは市民には速やかに公表されず、2011年3月23日に枝野官房長官が国会質問に答えて計算例を紹介し、原子力安全委員会も試算結果を公表した。この点について、国会事故調は原子炉の状況を予測する「緊急時対策支援システム」(ERSS)とSPEEDI は、「基本的に一定の計算モデルをもとに将来の事象の予測計算を行うシステムであり、特にERSS から放出源情報が得られない場合のSPEEDIの計算結果は、それ単独で避難区域の設定の根拠とすることができる正確性はなく、事象の進展が急速な本事故では、初動の避難指示に活用することは困難であった」としている。これに対して、政府事故調は放射性物質がサイトから北西方向に広がった2011年3月15日から16日にかけて計算結果が公表されていれば、住民は放射能濃度の濃い北西方向に逃げないで済み、被ばくは最小限に抑えられたと評価している。国会事故調の指摘するとおり、個別の地点での正確な被ばく量を積算できるだけのデータがもたらされなかったことは事実であるが、どの方角に逃げれば被ばくを低減できたかが問題となっていることからすれば、政府事故調の結論の方が放射性物質の降り注ぐ中を逃げまどった住民の疑問に正面から答えていると評価できる。

これら二つの報告書の公表に先立つ6月20日、原子力規制委員会設置法が成立し、既設炉に新たな審査基準を適用していくバックフィット制度が導入され、新たな基準に適合しなければ運転は認められないこととなった。国会事故調の調査を踏まえれば、新たに設置される原子力規制委員会において地震を含む事故原因に即した新たな安全審査基準を策定し、この基準に照らして安全性が確実に確保できるかどうかを真に独立した専門家の下で判断するという手続が最低限必要である。現在、大飯原発と志賀原発1、2号炉の敷地内に活断層が存在する疑いが指摘され、大飯原発3、4号機は既に政治判断によって運転が再開されているが、万が一にも深刻な事故を起こさせないという原発の安全審査の趣旨に照らせば、活断層調査は原子炉を停止させた上で実施することが正しい判断である。よって、政府はこの観点からも、大飯原発3、4号機の運転を停止し、原子力規制委員会が策定する新たな安全審査基準の下で審査を行うべきである。

最後に、国会事故調も政府事故調も事故原因の未解明な点についての調査の継続を求めている。国会事故調は、国会に原子力事業者及び行政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関として「原子力臨時調査委員会(仮称)」を設置することなどを提言し、政府事故調は、「人間の被害」の全容について、総合的な調査を行ってこれらを記録にまとめ、被害者の救済・支援復興事業が十分かどうかを検証することを求めている。このような作業に着手することを、当連合会は国会と政府に強く求めるものである。」


同感です.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-27 18:51 | 弁護士会

『たばこ病訴訟と裁判官の責任』

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伊佐山芳郎先生が,「日本の科学者47巻8号」に『たばこ病訴訟と裁判官の責任』を書いています.

伊佐山芳郎先生は,東京地方裁判所平成15年10月21日判決(浅香紀久夫,水野邦夫,内藤由佳)が国際的知見に明らかに反する判断を堂々と述べたのには驚かされた,と述べています.

横浜タバコ訴訟では,審理途中で裁判官が交代し,水野邦夫判事が裁判長となり,東京タバコ訴訟上告審の担当調査官であった宮坂昌利判事が右陪席となりました.
この横浜地方裁判所平成22年1月20日判決(水野邦夫,宮坂昌利,中島真希子)について,伊佐山芳郎先生は,司法が,日本たばこ産業と国のたばこ拡販政策の一翼を担う役割を果たし,問題の先送りをしただけの低レベルの判決であった,と総括しています.

さらに,判決を下した裁判官個人のレベルを超えて,司法のあり方自体が問われた裁判であった,とまとめています.

嫌煙権訴訟,東京タバコ訴訟,横浜タバコ訴訟に原告ら代理人として関与してきた弁護士伊佐山芳郎先生ならではの説得力ある論稿です.ご一読をお奨めいたします.

現在,浅香紀久夫判事はさいたま地方裁判所川越支部長兼さいたま家庭裁判所川越支部長に,水野邦夫判事は山形地方裁判所長兼山形家庭裁判所長に,宮坂昌利判事は東京地方裁判所民事23部総括判事に,内藤由佳判事補は退官し主婦に(幸せの感性を育てる「転ばぬ先のこそだて」の著者),中島真希子判事補は退官し弁護士(東京弁護士会・阿部記念法律事務所所属)に,それぞれなっています.このように,個々人をみれば,良識ある立派な方々ばかりなのですが,主観的には適切な事実認定を行い要件事実にそって判断し正しい判決を下したつもりが,客観的には疫学を無視し非科学的非常識な判決を下してしまったことにより,結果的に日本たばこ産業と国のたばこ拡販政策に荷担してしまったところに,この国の司法の問題があると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-27 09:27 | タバコ