弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 09月 26日 ( 2 )

肺がん検診79人のデータが消失し,医師の画像診断が行われないまま「異常なし」と判断(報道)

読売新聞「肺がん検診79人分データ消失…群馬」(2012年9月26日)は,次のとおり報じています.

「県健康づくり財団は25日、群馬県板倉町で昨年6、7月に実施した肺がん検診を受けた40~90歳(当時)の男女79人分のレントゲン画像データについて、財団のサーバーに記録する際に消失させていたことが判明したと発表した。

 原因は特定できていないが、操作ミスの可能性が濃厚という。79人は医師の画像診断が行われないまま、「異常なし」と判断されており、うち16人は今年度の検診を受けていない。同財団によると、昨年度の検診は、40歳以上の同町民3435人が受診。肺がん検診の画像データは、DVDに保存のうえ、財団のサーバーに移すことになっていた。

 この際、79人分がエラーを起こし、サーバーに記録できていなかったが、同財団では確認をしていなかった。DVDはその後、再利用したため、元データは残っていないという。

 画像診断で医師は、サーバーに登録した全データを判定し、異常所見があるケースだけ結果を入力していた。ただ、受診人数を確認する必要はなかったため、79人は全員異常がないことになってしまったという。

 79人のうち、63人は今年度も受診。いずれも肺がんの疑いはなかった。未受診者16人のうち、1人はこの間に死亡したが、死因はがんではなかったという。残る15人には謝罪のうえ、本人の希望により、再度、レントゲン撮影や診断を行う。

 先月になり、昨年度分と今年度分の検診データを比較しようとした際に、一部データがないことに気付き、発覚した。同財団では板倉町に経緯を説明し、栗原実町長に謝罪した。同財団は「2度とこのようなことがないよう、点検態勢を取りたい」としている。」


サーバーに一部が記録されないなどとは普通思わないでしょうが,何事も確認が必要です.

谷直樹

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by medical-law | 2012-09-26 20:52 | 医療事故・医療裁判

川崎市立川崎病院,未破裂脳動脈瘤のクリップ術で動脈ごと挟み脳梗塞(報道)

東京新聞「60代女性が半身まひに 川崎病院で医療ミス」(2012年9月26日)は,次のとおり報じています.

「川崎市立川崎病院(川崎区)で五月、脳動脈瘤(りゅう)の手術を受けた女性患者が、動脈を医療器具に挟まれるミスで脳梗塞を起こし、左半身にまひが残ったことが分かった。二十五日の市議会決算審査特別委員会で宮原春夫氏(共産)の質問に市はミスを認め、謝罪した。 (栗原淳)

 市病院局によると、患者は川崎区に住む六十代の女性。脳の血管の複数箇所が瘤(こぶ)のように膨らむ「多発性未破裂動脈瘤」と診断され、脳神経外科の専門医が五月十日、二カ所の瘤の根元を小さなクリップで挟んで血流を遮断し、破裂を防ぐ手術をした。

 術後二時間半を過ぎても目を開けなかったため、再び開頭したところ、二つのクリップの一つが動脈ごと挟んでいた。血液の流れが止まった女性は脳梗塞を発症。左半身のまひで六月中旬に東京都内のリハビリ専門の病院に転院し、現在も療養中という。

 委員会の答弁で、三浦政良病院局長は「心身ともに大きな負担を負わせることとなり、たいへん申し訳ない」と謝罪。宮原氏は「転院した患者に何の支援もしていない。市が経済的負担を軽減するのは当然だ」とただすと、三浦局長は「賠償額の確定を待たずに一部の支払いを速やかに行う」と対応の不備を認めた。

 川崎病院では同様の手術を年間十件以上行っている。執刀医は病院の医療安全委員会で「自分の注意不足」を原因に挙げたという。病院は再発防止策として、クリップ位置の確認を徹底し、術前に複数の医師が医療事故のリスクについて検討する場を設けることなどを挙げている。

 今回の医療ミスを公表しなかったことについて、病院局は「患者が治療中で、賠償額が確定しておらず、本人や家族の同意も得られなかったため」と説明している。」


神奈川新聞「川崎病院の動脈瘤手術中事故、川崎市が責任認め賠償へ」(2012年9月26日)は,次のとおり報じています.

「川崎市立川崎病院で今年5月、未破裂動脈瘤(りゅう)手術の際に医療事故が起きていたことが25日、明らかになった。市側は責任を認め、速やかに賠償金の一時払いを行うとしている。同日の市議会決算特別委員会で宮原春夫氏(共産)の質問に、三浦政良病院局長、秋月哲史病院事業管理者が答えた。

 同局の説明によると、同病院の医師が、60代の女性患者の頭部に発症した動脈瘤の根元をクリップで止める手術を行った際、分岐する血管を閉塞(へいそく)させたため梗塞となった。患者はまひなどの症状が生じ、現在はリハビリテーション専門病院で治療中という。

 三浦病院局長は「本市の責任は明らかであり、医療費について、賠償の一時払いを速やかに行っていく」と答弁。再発防止策として、今回のケースを医療安全管理上の重要事例として他の診療科の医師らにも報告。併せて、外科手術用顕微鏡システムの導入など、設備の改善を図っていくとした。

 また、秋月病院事業管理者は患者、家族に謝罪した上で、「今後、医療の質の向上と患者への心配りができる医療従事者の勤務環境づくりに向けて、幅広い視野に立ち、対応を検討していきたい」と述べた。」


毎日新聞「医療ミス:市立川崎病院、脳外科手術で障害残る 「症状定まらず」ミス未公表」(2012年9月26日)は,次のとおり報じています.

「市立川崎病院(川崎区)で今年5月、脳外科手術のミスにより女性患者(64)がまひや視野が狭くなるなど重い障害を負っていたことが25日、市議会決算審査特別委員会で明らかになった。市病院局は「障害の程度が定まらず、公表基準の重篤な障害に当たるか不明」として、これまで事故を公表していなかった。宮原春夫議員(共産)の質問に対し、同局が認めた。

 同局によると、女性は脳動脈瘤(りゅう)と診断され、5月10日に同病院で開頭手術を受けた。その際、血流を遮るために動脈瘤の部分をクリップで留めたが、誤って別の動脈も留めてしまった。手術後、女性が左足のしびれなどを訴えたため、再開頭をしたところミスが発覚した。執刀医による単純ミスという。

 女性は右脳の脳梗塞(こうそく)を発症し、左半身まひや視野が狭くなるなどの障害が出て、6月から東京都内のリハビリ専門病院に入院している。同局は再手術直後に女性の家族に謝罪した。だが、症状が定まっていないとして現在も金銭的な補償がされておらず、女性は7、8月の入院費用約42万円を自己負担している。」


医師には,未破裂脳動脈瘤の根元をクリップで挟むつもりで動脈ごと挟んでしまわないよう注意する義務があります.過去にも同種の事故が他院で起きています.例えば,京都地方裁判所平成12年9月8日判決(判例タイムズ1106号196頁),名古屋地方裁判所平成14年2月18日判決(判例時報1808号85頁),福岡地方裁判所大牟田支部平成14年4月9日判決(判例タイムズ1138号220頁)などもクリップ術の手技ミスを認定しています。執刀医の研鑽と外科手術用顕微鏡システムの導入など設備の改善に期待します.

【追記】

神奈川新聞「市立川崎病院の手術事故:市議会委で市が陳謝」(2012年11月8日)は,次のとおり報じました.

「川崎市立川崎病院で今年5月、未破裂動脈瘤(りゅう)手術の際に医療10+ 件事故が起きた問題で、市病院局は7日の市議会健康福祉委員会で、転院後の入院医療10+ 件費が一時的に患者の家族負担になっていたことや、同委員会への報告が遅れたことなどについて陳謝した。

 同局によると、60代の女性患者は6月下旬に都内のリハビリテーション病院に転院したが、8月分までの入院医療費計50万円は家族が負担。市は10月に入院医療10+ 件費について賠償金の一時払いを実施していた。今後、患者の状態が安定した段階で、後遺障害などを考慮して全体的な賠償額を算定し、話し合いを進めるとしている。

 患者は5月、頭部に発症した動脈瘤の根元をクリップで留める手術の際、分岐する動脈も併せてクリップで留めてしまったため脳梗塞を発症。左半身まひなどの後遺障害が残ったという。再発防止策として、近く外科手術用顕微鏡システムを導入する。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-09-26 08:28 | 医療事故・医療裁判