弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 11月 01日 ( 5 )

「国連人権理事会における日本の普遍的定期的審査に関する日弁連コメント」

国際連合人権理事会の第2回普遍的定期的審査第14回作業部会において,2012年10月31日,日本の人権状況について審査が行われました.

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年11月1日,「国連人権理事会における日本の普遍的定期的審査に関する日弁連コメント」を発表しました.


「今回の審査で日本に対して実際に発言したのは、前回よりも多い79か国であった。

多くの点につき意見が寄せられたが、特に言及する国が多かった課題は、
女性に対する差別解消に関するさらなる取組、
死刑の執行停止及び廃止についての国民的議論の促進であった。

このほか、国内人権機関の設置の実現、
すべての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約の批准、
児童ポルノの規制や性的搾取の防止を含む子どもの権利保護の改善、
人身取引へのさらなる取組、
包括的な差別禁止法の制定、
「日本軍慰安婦」問題の解決等についても意見が表明された。

また、当連合会が以前から取り組んできた
代用監獄の廃止や勾留状況の改善についても、少なくとも6か国が言及した。

なお、福島の原発事故に伴う人権侵害については、1か国が特に子どもの健康状態に関する懸念を表明した。」


審査の結果は,2013年2月から3月に行われる国連人権理事会本会議において,日本に対する所見や勧告を含む結論として採択され,その際,日本政府から所見や勧告に対する意見が述べられることが予定されている,とのことです.

谷直樹

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by medical-law | 2012-11-01 22:29 | 弁護士会

第15 回「産科医療補償制度運営委員会」-第6 回制度見直しの検討-

CBニュース 「産科補償、小児専門施設の対象追加が論点に- 運営委では慎重論相次ぐ」 (2010年11月1日)は,次のとおり報じています.

 「産科医療補償制度」の見直しを検討している日本医療機能評価機構の運営委員会が1日に開かれ、産科がない小児専門医療機関を同制度の対象に追加することを同機構が論点に挙げた。こうした施設のNICU(新生児集中治療室)に救急搬送された後の経過について詳細な医学的分析をできるようにすることが狙いだが、委員からは、NICUでの医療に問題があるケースが少ないことや、マンパワーの問題から、慎重な検討を求める声が相次いだ。

この制度は、分娩に関連して発症した重度脳性まひ児に一定の条件下で補償することと、症例の原因分析を通じて重度脳性まひの再発を防止することが目的。
 同機構によると、これまでに補償対象になり、原因分析が行われた症例のうち約70%で、新生児仮死などによりNICUがあるほかの医療機関に救急搬送されていた。受け入れ先の医療機関は、ほとんどが周産期母子医療センターなど、この制度に加入する施設だが、産科がない小児専門医療機関に搬送されるケースもある。現状では、こうした施設の小児科医や新生児科医らにも情報提供を求めているものの、過度な負担を掛けないよう医学的評価の対象にはしておらず、妊娠中や分娩時に比べて新生児期の経過について詳細に分析することは難しい。

 この日の運営委で同機構は、「NICUにおける診療行為などについても医学的評価を行うことで、産科医療のみならず、周産期医療全体の質を高めることにつながると考えられる」として、小児専門医療機関も制度の対象に含めることを論点に挙げた。
 しかし、原因分析委員長の岡井崇委員(日本産科婦人科学会副理事長)は、「NICUでの医療に何か問題があった例はほとんどない」と指摘。さらに、「NICUでの医療をチェックしようとすると、新生児関連の委員を3倍くらいに増やさないといけない」と述べ、慎重な検討を求めた。ほかの委員からも、「NICUがあるような規模の大きい医療機関には自浄作用があるので、必要ないのではないか」などの慎重論が相次ぎ、NICU搬送後の医療行為に問題があるケースがどれほどあるか実態を把握した上で、改めて検討することになった。

■裁判を受ける権利「制限難しい」で一致

 運営委ではまた、同制度で補償金を受け取った保護者の「裁判を受ける権利」(訴権)を制限することの是非について協議し、「難しい」との認識で一致した。

 これまでの運営委で、「訴権が制限されていないと、医療者と保護者の紛争防止にならない」との意見が出たことを踏まえて検討されたが、機構側は訴権の制限が難しい理由として、▽憲法に違反する▽この制度の補償額である3000万円を超える損害賠償額となる事例も考えられ、保護者の利益を損なう恐れがある▽この制度への補償申請が減れば、制度の目的である「紛争の防止・早期解決」の効果が薄れたり、脳性まひの実態把握ができなくなったりする―を挙げた。委員からも訴権の制限を求める意見は出なかった。【高崎慎也】」


産科医療保障において,NICUの診療行為を医学的に評価する必要性は低いと思いますが,小児科医側から産科の医療行為を評価する必要はあるでしょうから,委員に小児科医をふやしたほうがよいと思います.

資料はこちら

谷直樹

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by medical-law | 2012-11-01 22:18 | 医療事故・医療裁判

ラクイラ地震の有罪判決と科学者の責任

イタリア中部ラクイラの地方裁判所は,2012年10月22日,地震学者6人と政府委員1人に過失致死罪を適用し禁錮6年の刑を言い渡しました.
これは,地震予知に失敗したから,というわけではありません.地震が起きる前に,安全宣言を出したことが被疑事実なのです.

東京大学地震研究所助教の大木聖子氏は,現地に調査に行き収集した情報などに基づきブログWelcome to OKI's Website に次のとおり書いています.

「国家市民保護局の長官であるベルトラーゾ氏と州政府市民保護局長であるスターティ氏との電話やり取りです.証拠音声では,安全宣言を出すという結論ありきで大災害委員会を開催すること,巷で予知情報を出している”お騒がせ野郎”を黙らせて市民の不安を落ち着かせよう,といったやり取りがなされています.」

つまり,大災害委員会の科学者たちは,行政に利用され,はじめから安全宣言ありきの会議が開かれたのです.
もとろん,ラクイラが安全とは到底言えないはずで,ベルトラーゾ氏とスターティ氏の責任は大きいと思います.

ただ,科学者は,行政の責任者と同様には考えられません.
もちろん,科学者としては,長期における確率的な予測はできても,近い将来地震が起きない,安全である,などとは言えないはずです.各人の具体的な関与によって,非難も異なるでしょう.たしかにいわゆる御用学者の責任は問題になりうるでしょう.
しかし,それでも禁固6年というのはあまりにもバランスを失しています.

大木聖子氏は,次のとおり述べています.

「今のような委員会のあり方では,誰も委員をやらなくなります.会議の場での議論を十分に踏まえた記者会見がなされないこと,あるいは委員会開催前に行政担当者が軽率なコメントを平気ですることなどもすべて踏まえて委員の任務を全うするというのは,ばかげているにもほどがあります.特に,委員会メンバーでもなく,単に震源データを持ってきてくれと言われたから持って行っただけのINGVのSelvaggi博士が訴追されているのは恐ろしい状況です.たまたま呼ばれてその会議の席に座っていただけで禁錮6年になるという事実が世界の地震学者に与える衝撃は大きいでしょう.

こうして委員を引き受ける人が減っていくと,委員会の質が落ちます.あるいは,まじめに研究をして,国に提言をしているだけで,こんな刑事罰を受ける可能性のある分野だと知れば,優秀な人材は集まって来なくなるのではないでしょうか.こういった一連の出来事は,長い目で見れば,結果的に社会全体への悪影響になると思います.

それよりは地震学や医療,食の安全など,命にかかわる分野の研究者には,どういった情報発信があるべきなのかなどのトレーニングをする方がよほど建設的です.」


そのとおりと思います.

ところで,昨日2012年10月31日,厚生科学審議会予防接種部会の小委員会が開かれ,「ワクチンの危険性が高まったとはいえず,ただちに接種を中止する必要はない,との判断が示されました。
岐阜県の10歳男児が10月17日接種直後に急死した事例について,ワクチンとの関連性は低いとされました.
7月にも接種を受けた子どもが急性脳症を発症し約1週間後に死亡した事例について,ワクチンとの関連性を議論する材料が不足しているとのことです.
なお,新ワクチン導入後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の報告数は11例で131万回接種に1例の頻度とのことです.

科学者は,有効性と安全性について科学的に分かる範囲で情報提供を行うことはできます.
しかし,接種を中止する必要があるか否か,の判断は,科学者が行うべき判断ではないのではないか,と思います.
政策判断の隠れ蓑に科学と科学者が利用されることがあってはならない,と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-11-01 04:07

難病医療費助成,300余の難病に拡大へ

NHK「難病医療費助成 対象を大幅に拡大」(2012年10月31日)は,次のとおり報じています.

「患者が少なく治療法がない難病の患者への医療費助成について、厚生労働省の専門家会議は、助成の対象を症状が重い患者に限ったうえで、現在の56種類から300種類余りに大幅に拡大することで一致しました。

これは、30日に開かれた厚生労働省の専門家会議で決まったものです。
難病は数百種類ありますが、医療費の助成は、特に治療が難しい56種類の難病に限られていて、ほかの難病の患者からも支援を求める声が上がっています。
30日の会議では、助成対象の拡大について議論が行われ、▽患者の数が人口1000人当たり1人程度以下と少なく、▽医師が病名を診断するための基準が整っている難病を助成の対象にすべきだとして、この条件に当てはまる300種類余りの難病に大幅に拡大することで一致しました。そのうえで、症状が軽い人は対象から外し、専門医が重症と診断した人だけに限ることになりました。
専門家会議は、今後、医療体制の整備や就労支援などについても検討を進め、年内に支援策をまとめることにしています。これを受けて、厚生労働省は、早ければ来年の通常国会に新しい法案を提出し、法律が成立すれば、政令で助成が受けられる難病を指定することにしています。」


医療費助成対象の拡大は賛成です.ただ,広く薄く,にならないよう,充実した助成を期待いたします.

谷直樹

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by medical-law | 2012-11-01 02:39 | 医療

横浜地裁平成24年10月30日判決,児相が卵アレルギーの3歳児に竹輪を与え死亡の事案で賠償命令(報道)

読売新聞「児相で竹輪食べた保護男児死亡、市に賠償命令」(2012年10月31日)は,次のとおり報じました.

「横浜市の児童相談所で2006年7月、卵アレルギーの男児(当時3歳)が卵白を含んだ竹輪を食べた後に死亡したのは、誤った一時保護が原因だとして、両親が同市や、児童相談所に通告した独立行政法人国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)を相手取り、約9000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、横浜地裁であった。

 森義之裁判長は「誤って竹輪を与えた過失が認められる」として同市に計約5000万円の支払いを命じた。同センターへの請求は棄却した。

 判決によると、男児の食物アレルギーなどの治療をしていた同センターは06年6月、「両親が男児に必要な栄養を与えず、適切な治療を受けさせていない」と児童相談所に通告。男児は翌月3日から一時保護されたが、同27日朝、職員が誤って竹輪を食べさせ、同日午後に死亡した。

 男児の死因について、被告側は「司法解剖の結果は左心不全で、竹輪を与えたことと死亡に因果関係はない」と主張したが、判決は、呼吸困難などを引き起こすアレルギー症状「アナフィラキシーショック」が死因だったと判断。「男児には卵白に対して強いアレルギーがあり、竹輪を食べさせてはならない注意義務を怠った」と同市の過失を認めた。

 両親は、同センターによる通告や児童相談所の一時保護決定の違法性も主張したが、判決は「両親は必要な栄養を与えず、必要な治療も受けさせていなかった。通告は必要、合理的なもので一時保護決定も違法とは言えない」として認めなかった。

 判決を受け、男児の父親(51)は「市の責任は認められたが、一時保護の不当性などが認められなかったのは残念だ」と話した。また、同市は「判決内容を精査して対応を検討したい」とのコメントを出した。」


朝日新聞「保護の男児死亡 「食物アレルギー」判決」(2012年10月31日)は,次のとおり報じました.

「横浜市の児童相談所で2006年、両親による栄養ネグレクトなどの疑いで一時保護中の男児(3歳9カ月)が死亡した事故をめぐる裁判は、横浜地裁が死因を「アナフィラキシーショック」と認定して市の責任を認め、約5087万円の損害賠償を両親に支払うよう命じる判決を出した。男児は強度の卵アレルギー。それを把握していたはずの児童相談所のミスで事故は起きていた。

 児童相談所で、男児は卵を使った食品の摂取はすべて禁止されていた。事故の日も、ちくわに卵白が含まれていることから、男児にはちくわを抜いた食事が用意されていた。しかし、男児がおかわりをした際、職員が除いていたはずのちくわも過って与えた。

 両親は「息子のアレルギーの情報がしっかり現場の職員に伝わっていれば、事故は起きなかったのでは」と悔しさをにじませる。

 一時保護の現場では、食物アレルギーを持つ児童にどう配慮しているのか。

 市中央児童相談所の松永勉副所長によると、事故前から入所段階で全員の食物アレルギーの有無を調べ、反応のレベルや症状、事故が起きたらどうするかを職員で確認していた。だが、明文化はしていなかった。

 そんななか、児童福祉関係者に大きな衝撃を与えた男児の死亡事故が発生。その後はアレルギー対策のマニュアルを定め、チェックの徹底を図った。また、食事の際には、食物アレルギーの児童が一目で分かるようにトレーの色を変え、「卵、小麦禁」のようなシールも貼るようにした。各テーブルに1人職員が付き、食事の様子も細かく観察している。

 児童相談所の職員へのアレルギー研修を採り入れたのも事故後のことだ。講師の看護師が、アレルギーの基礎知識から事故が起きた場合の対処などを随時教えているという。

 だが、市の担当課職員は言う。「保育園でも食物アレルギーは親と連携し、間違いないように細心の注意を払っている問題。一時保護の際も神経を使っているが、保護者との接触が難しい分、情報把握の徹底が厳しいのが現状だ」
(植松佳香、斎藤博美)」



日本経済新聞「児相側に5千万円の賠償命令 食事アレルギーで男児死亡」(2012年10月31日) は,次のとおり報じました.

「横浜市の児童相談所に一時保護された3歳の男児にアレルギー物質を含む食事を与えて死亡させたなどとして、両親が国と市に約9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は30日、食事と死亡との因果関係を認め、市に約5千万円の支払いを命じた。

 森義之裁判長は判決理由で、死因は児相がアレルギーの卵を含んだちくわを与えたことによる急性アレルギー反応のアナフィラキシーショックと認定、「市が注意義務を怠った」と指摘した。

 一時保護は男児を診断した病院が「虐待の疑いがある」と通告したためで、両親は通告や一時保護決定も違法と主張したが、森裁判長は「病気の原因は原告らが与えていたたんぱく源の少ない食事内容にあった可能性が高く、通告や保護は合理的だ」として退けた。

 判決によると、男児は2006年5月、国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター、東京)で、手足の骨が変形する「くる病」と診断されて入院。病院は6月に「両親が適切な栄養を与えていない虐待の疑いがある」と児相に通告。一時保護した児相は7月、男児のアレルギーについて認識していながらアレルギー物質を含む食事を誤って与え、約7時間後に死亡させた。

 横浜市は「判決内容を精査して対応を検討する」とコメントを発表。男児の父親(51)は判決後「病院の通告と一時保護は不当で、その責任が認められなかったことは残念だ」と話した。〔共同〕」


損害賠償の要件は,(1)注意義務違反(過失),(2)損害,(3)注意義務違反(過失)と損害との因果関係の3点です.

裁判所は,損害から考えます.
損害発生していなければ,責任はありません.
損害が発生している場合は,次に,損害と因果関係のある注意義務違反はあるか,を問題にします.
損害と因果関係のある注意義務違反は,原告が主張している注意義務違反のうち,(原告の主張に順番の指定がなければ)時間的に結果発生にちかい時点から検討することが多いです.なぜなら,因果関係のない注意義務違反を認定しても責任は発生しませんし,時間的に結果発生にちかい時点の注意義務違反のほうが因果関係が認められやすいからです.
裁判所は,時間的に結果発生にちかい時点から検討し,因果関係のある注意義務違反を認定できたときは,責任が肯定できますので,それ以上の検討は行いません.

本件では,報道によると,被告側は,「左心不全」が死因であって,竹輪を与えたことと死亡に因果関係はない,と主張したそうです.
判決は,卵白に対してアレルギーでアナフィラキシーショックを起こしたことが死因だったと判断しました.アナフィラキシーショックで呼吸困難となり心不全で亡くなるという機序からすると,「左心不全」を死因とする解剖結果は,アナフィラキシーショックによる死亡を否定するものではありません.
アナフィラキシーショックの原因は,卵白を含む竹輪を食べさせたこと,となりますが,そこで,竹輪を食べさせてはならないっという注意義務があるかが検討されます.児相の職員は,この3歳児の卵白アレルギーを認識し少なくとも認識すべきで,また竹輪に卵白が入っていることも認識し少なくとも認識すべきすから,この3歳児に竹輪を食べさせてはならない注意義務があります.
おかわりを担当した職員のこの点が伝わっていなかったとすれば,児相の体制に問題があり,児相自体の注意義務違反となります.

卵白に対してアレルギーでアナフィラキシーショックを起こしたことを死因と認定し,男児には強いアレルギーがあり竹輪を食べさせてはならない注意義務を怠ったとし,横浜市の責任を認めた本判決は適切です.

なお,成育の通報についての注意義務違反も検討し否定していますが,仮に注意義務違反を認めたとしても児相に死亡結果と因果関係のある注意義務違反が認められますので,,成育の注意義務違反と死亡結果との因果関係は認められませんので,成育は死亡についての責任は負わないことになります.

【追記】

その後も,平成24年12月20日,調布市の富士見台小学校で,担任の教師が,確認を怠り,チーズなどにアレルギーのある5年生の女子児童にチーズ入りのチヂを与え,児童は食べたあとに気分が悪くなり、およそ3時間後に死亡する,という事故が起きています.

NHK「女児死亡 アレルギーのチーズ入り誤って渡す」(2013年1月8日) は,次のとおり報じました.

「先月、東京・調布市の小学校で、チーズなどにアレルギーのある5年生の女子児童が給食を食べたあとに死亡した問題で、担任の男性教諭がおかわりを求めた女子児童にチーズの入った料理を誤って手渡していたことが分かりました。市の教育委員会は、女子児童の保護者に経緯を説明し、謝罪したということです。

先月20日、東京・調布市の富士見台小学校でチーズなどの乳製品にアレルギーのある5年生の女子児童が給食を食べたあとに気分が悪くなり、アレルギーによって引き起こされる「アナフィラキシーショック」の疑いで死亡しました。市の教育委員会は女子児童が死亡した経緯について調査を進め、8日に記者会見を開いて調査結果を明らかにしました。
それによりますと、その日の給食にはチヂミが出されていましたが、女子児童は、まずチーズの入っていない自分専用のチヂミを食べたあと、チヂミのおかわりを求めました。
その際に29歳の担任の男性教諭が、アレルギーのないほかの児童が食べるチーズの入ったチヂミを誤って手渡したということです。この小学校では、アレルギーのある児童が給食をおかわりする際、担任の教諭がアレルギーの食品があるかどうかを献立表でチェックする決まりになっていますが、担任の教諭はこの確認を怠っていたということです。
市の教育委員会や小学校は、女子児童の保護者に経緯を説明して謝罪したということで、調布市教育委員会の海東元治教育長は会見で、「女子児童のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に心よりおわびとお悔やみを申し上げます」と述べました。
市の教育委員会は、今月中にも医師や弁護士などで構成する検証委員会を設けて、再発防止策を検討することにしています。」


【再追記】

東京新聞「給食アレルギー調布の男児 「弁当持参」情報共有できず」(2013年1月23日)は,次のとおり報じました.

「牛乳アレルギーの小学五年女児(11)が昨年十二月に給食を食べて死亡した事故が起きた東京都調布市の小学校で、事故の三カ月前に別の児童が誤って給食を食べて救急搬送された原因は、卵アレルギーの児童が給食のオムレツの代わりのおかずを家から持参することを調理師側が情報共有できていなかったためだったことが分かった。

 調布市教委によると、昨年九月二十七日午後零時十五分~同五十五分の給食時間中、卵アレルギーがある小学一年の男児がオムレツを食べ、せき込むなど体調を崩した。保健室で養護教諭が付き添って休んだが回復せず、搬送先の病院で午後三時ごろに治療を受け、回復したという。命に別条はなかった。男児は医師からアレルギー症状を抑える自己注射薬「エピペン」の処方を受けていなかった。

 学校では、食物アレルギーがある男児の保護者と栄養士が事前に話し合い、症状を起こす食材を取り除いた給食(除去食)を作るか、代わりの弁当を家から持ってくるかを決め、栄養士が調理師に伝えている。

 取り除く食材などの情報は調理場内のホワイトボードに書いて共有するルールだが、おかずを持参することを調理師が書き漏らし、男児には他の児童と同じオムレツが配られた。

 男児は九月初めからの二学期に転校してきた。学校と保護者は給食の対応を話し合っていた。

 学校は事故後、食器の中身が見えるように、除去食にかぶせるふたをアルミホイルからラップに切り替えたほか、十月三十日に講師を招いて研修会を行った。約三カ月後、除去食ではないおかわりを食べた女児が、アナフィラキシーショックで死亡した。」


【追記】

日本経済新聞「東京高裁はアレルギー死認めず 男児の両親、「「「逆転敗訴」 (2013年9月27日)は,次のとおり報じました.

「3歳の男児を一時保護した児童相談所が、アレルギーの原因となる卵を含む食事を与えて男児を死亡させたとして、両親が横浜市などに計約9千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁であった。井上繁規裁判長は、市に約5千万円の支払いを命じた一審・横浜地裁判決を取り消し、請求を全面的に棄却した。

 井上裁判長は「アレルギー反応によるアナフィラキシーショックが死因とは認められず、突然死の可能性も否定できない」と判断した。

 判決によると、男児は2006年、東京都世田谷区の病院で、手足の骨が変形する「くる病」と診断されて入院した。病院は「両親が適切な栄養を与えない虐待の疑いがある」と児相に通告。一時保護した児相は男児に卵を含んだちくわを誤って食べさせ、食事から約7時間後に亡くなった。

 井上裁判長は「アナフィラキシーは食事から2時間以内に発症することが多いが、男児が食事して4~5時間、発症は認められなかった」と指摘。「虐待の事実はなく、通告や一時保護決定は違法だ」とする両親側の主張も退けた。〔共同〕」


【再追記】

神奈川新聞「児相の男児アレルギー死 両親敗訴が確定」(2015年3月28日)は,次のとおり報じました.

「最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は27日までに両親側の上告を退ける決定をし、原告敗訴が確定した。決定は25日付。」

アレルギー反応によるアナフィラキシーショックが死因であるという立証ができないと,この結論になります.
アレルギー反応によるアナフィラキシーショックが死因ではない,死因は心筋症による左心不全だったとすると,児相がアナフィラキシーショックをおこす危険のある食べ物を与えても,また病院に連れて行かず様子をみていても.責任はない,ということになります.
しかし,本当にアレルギー反応によるアナフィラキシーショックが死因ではなかったのでしょうか.
司法解剖の結果は,心筋症による左心不全ですが,アナフィラキシーショック→呼吸不全→心不全という機序も考えられます.
肥大型心筋症は,500人から1000人に1人と言われていますので,結構多い疾患です.何事もない人もすくなくありませんし,突然死は多くの場合運動中です.司法解剖の結果は①心筋症あり,②左心不全による死亡である,はそのとおりでしょうが,②の原因で①とまで言えるかは,疑問を感じます.

谷直樹

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by medical-law | 2012-11-01 02:14 | 司法