弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 12月 02日 ( 2 )

肝機能値異常後もユリノーム投与を続け薬害性肝障害から肝不全等で死亡した事案で医師が提訴される(報道)

毎日新聞「提訴:「不適切な投薬で死亡」 吉田の田崎クリニック、遺族が賠償求め /静岡」(2012年11月28日)は,次のとおり報じました.

 「11年に県中部に住む当時60代の男性が死亡したのは不適切な投薬を続けたためだとして、男性の遺族計4人が27日、吉田町の「田崎クリニック」に約7900万円の損害賠償を求める訴えを静岡地裁に起こした。

 訴状によると、男性は09年11月、尿酸値が高かったため同病院を受診し、その後、錠剤「ユリノーム」を処方された。この薬は肝障害や黄だんなどの副作用を起こす場合があり、製薬会社は、定期検査をし異常があればすぐに投与を中止するよう医師に求めている。10年4月には肝機能検査で異常値が出ていたにもかかわらず、同病院は11年2月までの約10カ月間投与を続けたとしている。男性は同月、島田市民病院で薬害性の肝障害と診断され入院。11年4月、肝不全などで死亡した。

 遺族の代理人、青山雅幸弁護士が提訴後に記者会見を開き、「これほど明白な過失も珍しい」と批判した。会見に同席した男性の長女は、「病院から説明がなく、気持ちにもやもやが残ったまま。過ちをきちんと見直してほしい」と話した。

 田崎クリニック側は、「すべて弁護士にお願いしており、お話しできない」としている。【平塚雄太】」


MSN産経「医師を7900万円損賠提訴 遺族「副作用薬処方続け死亡」 静岡」(2012年11月28日)は,次のとおり報じました.
 
「尿酸値の改善のために処方された薬で肝機能障害が起きたにもかかわらず、その後も処方されたために死亡したとして、県内に住む患者の遺族が27日、吉田町の開業医の男性医師を相手取り、損害賠償約7900万円を求める訴えを静岡地裁に起こした。

 訴えたのは、昨年2月に死亡した県中部の60代の男性の妻ら遺族4人。訴状によると、亡くなった男性は平成21年11月から23年2月まで吉田町の病院に通院し、尿酸値を下げるために「ユリノーム」錠などを処方された。ユリノームには肝機能悪化の副作用があり、男性も22年6月までに「γ-GTP」など肝機能を示す数値が悪化。

 それでも男性医師はユリノームの処方を続け、男性には23年2月に黄疸(おうだん)の症状が現れ、転院後の病院で肝不全などで死亡したとしている。

 原告代理人の青山雅幸弁護士によると、ユリノームについては、製薬会社が肝炎などの副作用の危険性を警告する緊急安全性情報を医療機関に出している。青山弁護士は「これだけ注意喚起している薬なのに平然と投与し続けたのは考えられない」と話している。

 病院の医師は「弁護士にすべて頼んで対応している」、被告代理人の祖父江史和弁護士は「コメントできない」としている。」


2009年11月からユリノーム錠を処方し,2010年4月には肝機能検査で異常値が出て(毎日新聞),同年6月までに「γ-GTP」など肝機能を示す数値が悪化していた(産経新聞)にもかかわらず,ユリノーム錠投与を中止せず,黄疸がでた2011年2月まで投与し続けた事案のようです.

ちなみに,ユリノーム錠(ベンズブロマロン)の添付文書の警告欄には,次のとおり記載されています.

「1. 劇症肝炎等の重篤な肝障害が主に投与開始6ヶ月以内に発現し、死亡等の重篤な転帰に至る例も報告されているので、投与開始後少なくとも6ヶ月間は必ず、定期的に肝機能検査を行う こと。また、患者の状態を十分観察し、肝機能検査値の異常、黄疸が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

2. 副作用として肝障害が発生する場合があることをあらかじめ患者に説明するとともに、食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、腹痛、下痢、発熱、尿濃染、眼球結膜黄染等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、直ちに受診するよう患者に注意を行うこと。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-12-02 10:30 | 医療事故・医療裁判

訃報:池永満先生

池永満先生が2012年12月1日午前2時21分逝去しました.

毎日新聞「訃報:池永満さん66歳=元福岡県弁護士会長」(2012年12月1日)は,次のとおり報じました. 

 「池永満さん66歳(いけなが・みつる=元福岡県弁護士会長)1日、肝臓がんのため死去。通夜は2日午後6時、葬儀は3日午後1時、福岡市東区馬出1の11の15のメモリードホール博多馬出。喪主は妻早苗(さなえ)さん。

 「原発なくそう!九州玄海訴訟」弁護団共同代表、NPO患者の権利オンブズマン理事長。行政訴訟や医療裁判に詳しく、中国人強制連行訴訟にも携わった。」



池永先生の業績はこれだけではありません.
弁護士法人奔流のサイトから,以下抜粋ご紹介いたします.

プロフィール

1946年
福岡県築上郡椎田町(現築上町)で生まれる。国鉄マンであった父親の転勤のため県内を転々とし、小森江東小学校(門司区)、小竹中学校(小竹町)、鞍手高等学校(直方市)を卒業して、九州大学法学部に進学。

1970年
九州大学法学部(政治専攻)卒業と同時に結婚して上京し、2年間参議院に勤務した後退職、帰福して司法試験受験勉強を始め、1974年合格、1975年第29期司法修習生となる。この間に2歳おきで長女と長男、次男(池永修弁護士)に恵まれる。

1977年
福岡県弁護士会に弁護士登録(北九州第一法律事務所)

1980年
福岡市に九州合同法律事務所を創立(所長弁護士)

2001年
九州合同から独立して法律事務所池永オフィスを創立(所長弁護士)

2004年
法律事務所池永オフィスを法人化し弁護士法人を創立(代表社員弁護士)、同年から3年間、福岡大学法科大学院教授(実務家専任教員)としてロースクール教育(新聞記事)に携わる。

2009年
福岡県弁護士会会長(2009年4月〜2010年3月、活動の詳細は弁護士会月報に綴った「会長日記」を参照ください。)

2010年
福岡県弁護士会常議員会議長(〜2011年3月まで)

2010年7月
主たる執務場所を弁護士法人奔流法律事務所直方オフィスに異動。

弁護士活動の概略

1.医療福祉分野・患者の権利促進に関する活動
弁護士登録と同時にカネミ油症事件弁護団に入って活動。その後、予防接種禍訴訟弁護団結成に参加。1980年医療問題研究会(現在の九州・山口医療問題研究会)の結成を呼びかけ初代事務局長、その後代表幹事を歴任。患者側代理人として医療過誤訴訟等に取り組む中1984年『患者の権利宣言案』の起草に参加、1991年患者の権利法をつくる会の結成(初代事務局長)、1997年98年の2年間エセックス大学人権センター特別研究員として妻とともに英国とオランダに滞在し、ヨーロッパにおける医療福祉分野における裁判外権利擁護システムを調査研究。1999年帰国後の6月、NPO法人患者の権利オンブズマンの創立に参加し初代理事長に就任。今日に至る。
この間の、2001年から2004年まで福岡県弁護士会精神保健委員会委員長、2005年から2008年まで福岡県医師会自浄作用活性化委員会外部委員、2007年から厚生労働省診療関連死調査分析モデル事業地域評価委委員等を務める。

2.建築・環境・行政分野の活動
弁護士登録後まもなくから北九州徳力区画整理訴訟、都市計画決定取消訴訟、博多湾埋め立て反対運動、福岡市千代町再開発訴訟や北九州市や福岡市における高層マンション建設に伴う日照権紛争などを住民側で数多く担当する中で、1985年、建築環境問題研究会の結成を呼びかけ初代代表世話人に就任、建築紛争や環境問題に1級建築士や不動産鑑定士、研究者等の専門家とともに取り組む体制を築く。2003年日弁連に行政訴訟改革検討委員会(現・行政訴訟センター)が発足し同委員会委員に委嘱され副委員長に就任。翌2004年福岡県弁護士会行政問題委員会が発足して初代委員長(〜2007年まで)。
この間、行政関係事件専門弁護士全国ネットワーク(略称「ぎょうべんネット」)結成に参画し、全国理事、九州ネットワーク幹事長に就任。今日にいたる。

3.破産管財、企業再生、法律顧問業務分野の活動
弁護士登録まもなくから企業倒産処理を手がける機会に恵まれる中で、企業破産の申立代理人や破産管財人、和議申立代理人や和議事件の整理委員・管財人、民事再生法立法後においては再生債務者代理人、監督員等を継続的に担当しており、倒産処理という観点ではなく企業再生(従業員の生活再建を含む)という視点から債権者との協議を尽くしつつ迅速・的確な支援を行えるよう心がけて来た。
また、弁護士登録以降、会社関係にとどまらず、大学教職員組合、社団法人、生活協同組合、医療法人、社会福祉法人等、非営利或いは公益的活動を担当する法人の法律顧問弁護士として日常的な運営管理に関する法律的助言を行うとともに、発生した紛争が当該法人の理念に即して的確に解決されるよう支援して来た。

弁護士会役員歴

1.福岡県弁護士会では、常議員、人権擁護委員会、司法問題対策委員会、司法修習委員会、国際委員会、精神保健委員会(委員長)、行政問題委 員会(委員長)、法科大学院運営協力委員会(委員長)等で活動し、1994年度県弁副会長(全県区)、2009年度福岡県弁護士会会長を務めた。2010 年度、常議員会議長。

2.九州弁護士会連合会(九弁連)では、研修委員会のほか、人権擁護連絡協議会(委員長)においてハンセン病問題の調査を担当、常設後の 人権擁護委員会(初代委員長)で中国残留孤児問題に取り組んだ。2009年度九弁連副理事長。

3.日本弁護士連合会(日弁連)では、司法問題対策委員会、法曹 三者協議バックアップ委員会、法曹養成問題委員会、司法試験改革を法曹三者と大学関係者代表で協議した法曹養成制度等改革協議会(日弁連選出協議員)、国 際人権委員会、行政訴訟改革検討委員会(副委員長)、行政訴訟センター(副委員長)等で活動。2009年度日弁連常務理事。

教育・研究歴

大学関係では、産業医科大学、久留米大学医学部、鹿児島大学、九州大学法学研究院、佐賀医科大学看護学部、山口大学医学部、藤田保健衛生大学医学部 等で講師・客員教授等として「患者の権利論」を講義し、2004年4月から3年間福岡大学法科大学院で実務家専任教員として活動した(「民事紛争処理手続 論」「医療・福祉と患者の権利」「環境訴訟の実務」等を担当)。

この間の1997年98年の2年間、エセックス大学人権センター特別研究員として英国とオランダに滞在して、医療福祉分野における患者の権利と裁判外権利擁護システムを調査研究した。

現在の所属学会は、日本医事法学会、日本社会保障法学会、医療の質・安全学会、医療事故防止・患者安全推進学会(顧問)等。

参加してきた弁護団・研究会など

⑴医療問題研究会(現九州山口医療問題研究会、元代表幹事)
⑵建築環境問題研究会(初代幹事長)
⑶福岡千代町再開発訴訟(弁護団事務局長)
⑷学資保険訴訟
⑸中国人強制連行・強制労働事件(福岡訴訟弁護団幹事長)
⑹中国人残留孤児国賠訴訟(福岡弁護団副団長)
⑺行政関係事件専門弁護士ネットワーク(全国理事・九州幹事長)

思い出の医療過誤訴訟

⑴熱傷治療中の聴力喪失事件(K大学病院):最高裁勝訴確定
⑵胃カメラ検査中のアナフィラキシーショック死事件(T病院):福岡高裁勝訴確定
⑶麻疹罹患後の急性心筋炎死亡事件(I病院):最高裁勝訴確定

最近解決した医療過誤訴訟

⑴扁桃腺手術後の出血対応過誤による低酸素脳症発生事故:福岡地裁和解



池永満先生とは,患者の権利オンブズマンの太宰府での全国連合同合宿でお会いしたのが最後となりました.
池永満先生は,病院から1日だけかけつけてくださり,しっかりとお話され,私はインフォームドコンセントの意味を再認識することができました.

私は,1999年に九州大学講堂でのNPO法人患者の権利オンブズマンの創設集会に行った縁で,患者の権利オンブズマン東京の幹事長をさせていただいておりますが,池永満先生の呼びかけがなければ,そもそもこのような活動自体ありませんでした.池永満先生の患者の権利運動のうえでの推進力はとても大きなものがありました.それのみならず,私は,個人的にも池永満先生の熱い言葉に感銘を受け微力ながら活動を続けてきました.

謹んでご冥福をお祈りいたします.
飛行機がとれましたので,お通夜には列席させていただきます.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-02 01:50 | オンブズマン